去る4月10日、中共中央委員を解任されて名実ともに失脚した薄熙来。
彼の名前で検索すると、
週刊誌やネットニュースのやや不確かそうな記事から、新聞・通信社の報道、
果てはWSJやロイターの日本語記事まで、いまやいろいろ情報が引っ掛かる。
だが、結局のところ何がどうなっとるのやら、よくわからない人が多いのではないか。
(何を隠そう、この記事を書いてる俺自身がわかってないのだ)。
わからないなりに薄熙来についてまとめておこう。
この人物、もとは六四天安門事件当時に中共八代元老などと呼ばれた古参幹部のひとり・薄一波の息子。
80年代から遼寧省の地方幹部→2001年に遼寧省長と、
長年にわたり遼寧省(社会科で習うリヤオトン半島とかあのへん)に影響力を扶植してきた。
2004年に商務部長(日本でいう経産大臣)に就任。
大連時代にキヤノンやパナソニックなど日系企業の誘致に積極的だったことに加え、
2005年の反日デモ当時に、「反日やるより対日貿易を拡大させた方が」というスタンスを示したことで、
日本の財界関係には薄熙来ファンが多数生まれることとなる。
2007年、中共のトップ25人である中央政治局員に選出されるも、
なぜか内陸の直轄市・重慶市党委書記(日本でいう愛知県知事ぐらいの地位)に転出。
その後、重慶での政治ではマフィア壊滅を旗印に6000人近い人間を逮捕して、
重慶市元司法トップの文強を死刑にしたほか、市高官をぼこぼこと失脚させたり、
1960〜70年代の革命歌謡を市民に歌わせるキャンペーンをやたらに実施して人心を繋ぎとめたりと
昨年ごろまで、傍目には過激すぎると映る謎行動というかパフォーマンス政治を散々繰り返していた。
揚句に、今年になっていきなり失脚だ。
何がどうなっているのやら、
しかし、わからんはわからんなりに、
本件についてはプロアマ問わずいろんな人の話を伺う機会が多かったり、
ツイッターで香港だの謎の在外華人メディアだのの情報が流れてきたりで、
なんとなく(多少の予測は入っていても)ここまでは間違いないのかなあ、という
ものすごくベーシックな部分の理解はぼんやりと見えた気もせぬではない。
ひとまず、本件についての自分の役割は、何か画期的な新情報を飛ばすことではなく
わからんことをわかりやすく説明することだと割り切ることにした。
以下、うちの独自ソースの情報は何もないので、既に知っている人はスルーで大丈夫。
でも、知らない人はとりあえず読んでおくと便利かもしれない。
薄熙来事件がよくわからない人のためのまとめなのだ。
<1.登場人物>
―――――――――――――――――――――――
薄熙来
中共元老・薄一波の息子(ほか、経歴詳細は上にも書いた)。
2007年に、これまでの中華人民共和国本社営業本部長から重慶総支社長に左遷されている。
腐女子がカップリングを妄想しやすそうな垢抜けたルックスと、
中身はあんまりないけれど爽やかな弁舌、
ええとこのボンボンのくせに異常に旺盛な権力欲で知られる人物。
谷開来
薄熙来夫人。実は薄熙来はバツイチで2人目の結婚相手。
父親は谷景生といい、人民解放軍の少将で新疆ウイグル自治区政府の高官。
北京大学法律系を卒業した才女で、北京市内に法律事務所を構えていた。
谷開来は現在50代前半(写真はもうちょっと若い頃っぽい)だが、
80年代アイドルの勝ち組パターンのような結構きれいな年の取り方をしている、元.美人。
ただし後述するように、やってることは非常に汚い。
がっつり儲けてるとアンチエイジングにカネをかけられるのであろうか。
ニール・ヘイウッド
黄金時代のオリックスでホームランを25本くらい打ってそうな名前の、謎の英国人御用商人。
薄熙来・谷開来の経済面でのアドバイザーを務めていたとされるが、
昨年11月に重慶市内のホテルにて変死。
遺体発見直後は「飲み過ぎて死んだ」と発表されたが、実際は谷開来に毒殺されたとされる。
王立軍
薄熙来の遼寧省時代からの腹心。
モンゴル族(血筋的には蒙漢混血)であり、
人民解放軍→警官というハイパー脳筋キャリアを歩んできた肉食系男子。
薄熙来が重慶でマフィア退治をやる際に、わざわざ遼寧省から召喚されて、
重慶市の警察部門のトップに就任。薄熙来の手足として、汚い仕事を含めて働く。
今年2月、突如として四川省の米国大使館への謎の亡命未遂事件を起こし、
これが一連の薄熙来失脚劇の、対外的に確認可能な最初ののろしとなる。
ちなみに上記の写真は80年代に撮影されたものらしく、
現在の王はメガネをかけた非常にソフトな外見の人物だ(が、中身は人間凶器だと思う)。
薄瓜瓜
明らかなDQNネームをつけられている薄熙来と谷開来の息子。1987年生まれ。
薄の失脚までは英国にご留学なさっていた。
本ストーリーとは別に大して関係がないし言及しなくても構わない人物なのだが、
英国で月の家賃が24万円ぐらいのアパートに住んでいる上、
白人の姉ちゃんとの合コン写真が流出したり元カノが美人だったりして、
いろいろと人生舐めてる感があってむかつくので情報を晒すことにした。
現在は谷開来事件に関連し、中国当局により拘束中と伝えられる。ああ、めしがうまい。
::::::::::::::以下、脇役::::::::::::::::
胡錦濤
中華人民共和国国家主席。株式会社中華人民共和国社長。
とりあえず、なにはともあれ薄熙来が嫌い(だとされる)。
政治志向云々もあるが、それ以上に07年に死んだ薄の親父(薄一波)が、
恩人の胡耀邦を失脚させたり胡錦濤本人の出世を阻んだりとやりたい放題だったため、
胡錦濤が薄熙来に対して好意を持つ理由は、彼の表面的な経歴を見る限りではあまりないのだ。
江沢民
中華人民共和国前国家主席。株式会社中華人民共和国会長職(事実上)。
一時期は薄熙来の後ろ盾だったともいうが、実際はどうだろうか。
90年代初期、例によってDQNじいさんである薄一波が
江沢民の追い落としを図ったことがあり、その後に薄熙来本人が
「あの親父はアホです。江沢民さんすいません」と(本当にこう言って)詫びを入れたことで
江沢民はひとまず薄に目を掛けたものの、心の底から信用したわけでもない(だろうと思われる)。
事実、2007年に薄熙来が重慶に事実上左遷されているが、
江はこの異動にひとまず異論は唱えていない。
むしろ、キャラが濃すぎる薄熙来よりも無難な習近平を上にあげておく方がいいか、
という判断を下したらしく、江沢民にとっての薄熙来はあくまで二番手以下のカードだった模様。
そもそも、現在の江沢民は昨年夏に間違って死亡説が流れる(写真参照)くらいヨボヨボである。
限られた体力と精神力のリソース内でOB政治をやるにあたっては、
さして目を掛けてもいない薄熙来の面倒なぞ、あまり本気で見てはいられないのだ。
周永康
現.胡錦濤政権内部の守旧派の代表選手。
中国の警察や司法を握る、こちらも脳筋系の頑固なおっさん。党内序列9位なので結構エラい。
往年の社会主義イデオロギーにやや郷愁を抱くところもあり、
重慶赴任後の薄熙来の復古的政策にも一定の好意を抱いていたとされる。
政治的には江沢民や曽慶紅の世話になった経歴があって、中国の石油利権を握る。
顔がとても怖い。
汪洋
胡錦濤の子飼いの一人。
党内での地位的には薄熙来とほぼ同じくらいだが、けっこう苦労人であり頭も切れる人だという。
薄熙来の前任の重慶党委書記→現在は広東省党委書記。
重慶時代の部下が薄熙来に粛清されまくっており、胡錦濤以上に薄を嫌っているだろうと思われる。
今年秋からの習近平政権での常務委員(=中共のトップ9人)入りが有力視される。
ところでどうでもいいが、誰か中国共産党のフォトショップ職人に
頭髪部分の塗りの技術をちゃんと教えてあげるべきではなかろうか。
―――――――――――――――――――――――
さて、登場人物が整理できたところで、
失脚劇に至る以前の背景を説明したいが、文字数が長くなるので次の記事にて。
彼の名前で検索すると、
週刊誌やネットニュースのやや不確かそうな記事から、新聞・通信社の報道、
果てはWSJやロイターの日本語記事まで、いまやいろいろ情報が引っ掛かる。
だが、結局のところ何がどうなっとるのやら、よくわからない人が多いのではないか。
(何を隠そう、この記事を書いてる俺自身がわかってないのだ)。
わからないなりに薄熙来についてまとめておこう。
この人物、もとは六四天安門事件当時に中共八代元老などと呼ばれた古参幹部のひとり・薄一波の息子。
80年代から遼寧省の地方幹部→2001年に遼寧省長と、
長年にわたり遼寧省(社会科で習うリヤオトン半島とかあのへん)に影響力を扶植してきた。
2004年に商務部長(日本でいう経産大臣)に就任。
大連時代にキヤノンやパナソニックなど日系企業の誘致に積極的だったことに加え、
2005年の反日デモ当時に、「反日やるより対日貿易を拡大させた方が」というスタンスを示したことで、
日本の財界関係には薄熙来ファンが多数生まれることとなる。
2007年、中共のトップ25人である中央政治局員に選出されるも、
なぜか内陸の直轄市・重慶市党委書記(日本でいう愛知県知事ぐらいの地位)に転出。
その後、重慶での政治ではマフィア壊滅を旗印に6000人近い人間を逮捕して、
重慶市元司法トップの文強を死刑にしたほか、市高官をぼこぼこと失脚させたり、
1960〜70年代の革命歌謡を市民に歌わせるキャンペーンをやたらに実施して人心を繋ぎとめたりと
昨年ごろまで、傍目には過激すぎると映る謎行動というかパフォーマンス政治を散々繰り返していた。
揚句に、今年になっていきなり失脚だ。
何がどうなっているのやら、
しかし、わからんはわからんなりに、
本件についてはプロアマ問わずいろんな人の話を伺う機会が多かったり、
ツイッターで香港だの謎の在外華人メディアだのの情報が流れてきたりで、
なんとなく(多少の予測は入っていても)ここまでは間違いないのかなあ、という
ものすごくベーシックな部分の理解はぼんやりと見えた気もせぬではない。
ひとまず、本件についての自分の役割は、何か画期的な新情報を飛ばすことではなく
わからんことをわかりやすく説明することだと割り切ることにした。
以下、うちの独自ソースの情報は何もないので、既に知っている人はスルーで大丈夫。
でも、知らない人はとりあえず読んでおくと便利かもしれない。
薄熙来事件がよくわからない人のためのまとめなのだ。
<1.登場人物>
―――――――――――――――――――――――
薄熙来
中共元老・薄一波の息子(ほか、経歴詳細は上にも書いた)。
2007年に、これまでの中華人民共和国本社営業本部長から重慶総支社長に左遷されている。
腐女子がカップリングを妄想しやすそうな垢抜けたルックスと、
中身はあんまりないけれど爽やかな弁舌、
ええとこのボンボンのくせに異常に旺盛な権力欲で知られる人物。
谷開来
薄熙来夫人。実は薄熙来はバツイチで2人目の結婚相手。
父親は谷景生といい、人民解放軍の少将で新疆ウイグル自治区政府の高官。
北京大学法律系を卒業した才女で、北京市内に法律事務所を構えていた。
谷開来は現在50代前半(写真はもうちょっと若い頃っぽい)だが、
80年代アイドルの勝ち組パターンのような結構きれいな年の取り方をしている、元.美人。
ただし後述するように、やってることは非常に汚い。
がっつり儲けてるとアンチエイジングにカネをかけられるのであろうか。
ニール・ヘイウッド
黄金時代のオリックスでホームランを25本くらい打ってそうな名前の、謎の英国人御用商人。
薄熙来・谷開来の経済面でのアドバイザーを務めていたとされるが、
昨年11月に重慶市内のホテルにて変死。
遺体発見直後は「飲み過ぎて死んだ」と発表されたが、実際は谷開来に毒殺されたとされる。
王立軍
薄熙来の遼寧省時代からの腹心。
モンゴル族(血筋的には蒙漢混血)であり、
人民解放軍→警官というハイパー脳筋キャリアを歩んできた肉食系男子。
薄熙来が重慶でマフィア退治をやる際に、わざわざ遼寧省から召喚されて、
重慶市の警察部門のトップに就任。薄熙来の手足として、汚い仕事を含めて働く。
今年2月、突如として四川省の米国大使館への謎の亡命未遂事件を起こし、
これが一連の薄熙来失脚劇の、対外的に確認可能な最初ののろしとなる。
ちなみに上記の写真は80年代に撮影されたものらしく、
現在の王はメガネをかけた非常にソフトな外見の人物だ(が、中身は人間凶器だと思う)。
薄瓜瓜
明らかなDQNネームをつけられている薄熙来と谷開来の息子。1987年生まれ。
薄の失脚までは英国にご留学なさっていた。
本ストーリーとは別に大して関係がないし言及しなくても構わない人物なのだが、
英国で月の家賃が24万円ぐらいのアパートに住んでいる上、
白人の姉ちゃんとの合コン写真が流出したり元カノが美人だったりして、
いろいろと人生舐めてる感があってむかつくので情報を晒すことにした。
現在は谷開来事件に関連し、中国当局により拘束中と伝えられる。ああ、めしがうまい。
::::::::::::::以下、脇役::::::::::::::::
胡錦濤
中華人民共和国国家主席。株式会社中華人民共和国社長。
とりあえず、なにはともあれ薄熙来が嫌い(だとされる)。
政治志向云々もあるが、それ以上に07年に死んだ薄の親父(薄一波)が、
恩人の胡耀邦を失脚させたり胡錦濤本人の出世を阻んだりとやりたい放題だったため、
胡錦濤が薄熙来に対して好意を持つ理由は、彼の表面的な経歴を見る限りではあまりないのだ。
江沢民
中華人民共和国前国家主席。株式会社中華人民共和国会長職(事実上)。
一時期は薄熙来の後ろ盾だったともいうが、実際はどうだろうか。
90年代初期、例によってDQNじいさんである薄一波が
江沢民の追い落としを図ったことがあり、その後に薄熙来本人が
「あの親父はアホです。江沢民さんすいません」と(本当にこう言って)詫びを入れたことで
江沢民はひとまず薄に目を掛けたものの、心の底から信用したわけでもない(だろうと思われる)。
事実、2007年に薄熙来が重慶に事実上左遷されているが、
江はこの異動にひとまず異論は唱えていない。
むしろ、キャラが濃すぎる薄熙来よりも無難な習近平を上にあげておく方がいいか、
という判断を下したらしく、江沢民にとっての薄熙来はあくまで二番手以下のカードだった模様。
そもそも、現在の江沢民は昨年夏に間違って死亡説が流れる(写真参照)くらいヨボヨボである。
限られた体力と精神力のリソース内でOB政治をやるにあたっては、
さして目を掛けてもいない薄熙来の面倒なぞ、あまり本気で見てはいられないのだ。
周永康
現.胡錦濤政権内部の守旧派の代表選手。
中国の警察や司法を握る、こちらも脳筋系の頑固なおっさん。党内序列9位なので結構エラい。
往年の社会主義イデオロギーにやや郷愁を抱くところもあり、
重慶赴任後の薄熙来の復古的政策にも一定の好意を抱いていたとされる。
政治的には江沢民や曽慶紅の世話になった経歴があって、中国の石油利権を握る。
顔がとても怖い。
汪洋
胡錦濤の子飼いの一人。
党内での地位的には薄熙来とほぼ同じくらいだが、けっこう苦労人であり頭も切れる人だという。
薄熙来の前任の重慶党委書記→現在は広東省党委書記。
重慶時代の部下が薄熙来に粛清されまくっており、胡錦濤以上に薄を嫌っているだろうと思われる。
今年秋からの習近平政権での常務委員(=中共のトップ9人)入りが有力視される。
ところでどうでもいいが、誰か中国共産党のフォトショップ職人に
頭髪部分の塗りの技術をちゃんと教えてあげるべきではなかろうか。
―――――――――――――――――――――――
さて、登場人物が整理できたところで、
失脚劇に至る以前の背景を説明したいが、文字数が長くなるので次の記事にて。