先日、『独裁者の教養』の刊行前に
ツイッターでだらだら宣伝を流していたのをまとめてくれていた方がいらして、
そちらから「少数民族ネタでやってください!」とリクエストいただく。
最初はチベットだのウイグルだのを探していたものの、
一昔前と違って規制が厳しくてなかなか漢語の掲示板が引っかからないし、
たまに引っ掛かるものがあっても、記事にしたいほど面白い内容がない。
なので、「苗族(ミャオ族)」で検索してみたところ、
個人的に興味深い動画を見つけたのだ。
今回の場所は、
湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州鳳凰県禾庫鎮にある某小学校。
この場所は貴州省・重慶市(旧.四川省)・湖南省の三省境界地点に位置する
交通が至極不便な山岳地帯で、中華民国時代までは山賊の巣のような場所であったという。
けっこう前の記事に登場した、
大中華佛国とか中原皇清国とか、謎のインディーズ皇帝が活躍したのも、
きっとこんな感じの場所だったのであろう。
そんな湘西トゥチャ族ミャオ族自治州鳳凰県禾庫鎮で
中国で近年流行している「拍客(趣味の動画撮影)」で撮られた
2歳の弟を背負って学校に通う苗族の女の子の姿の動画が興味深い。
(趣味の撮影とはいえ、めちゃくちゃ動画のレベルが高い。
いまはその気になれば、こういうジャーナリズムが個人でできる時代でもあるのだ)
以下に、動画とそれへのコメントを紹介していこう。
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【ミャオ族の9歳の女の子が弟を背負って学校に】
原題「視頻: 【拍客】實拍苗族九?女生帶弟上課 哄弟弟嫻熟如媽媽」
youku「生活資訊」 2011/10/25
元動画はこちら↓
http://v.youku.com/v_show/id_XMzE1ODkyMjcy.html
チャイムの代わりに鉄棒をカンカン叩く。
教室の天井。
2歳の弟を連れて学校に通う、ミャオ族の麻珍妹ちゃん。
子どもをあやしながら授業。
背負ってあやしていたら寝てくれたので、授業に集中できる。
実は、麻ちゃんみたいな児童は、この学校では珍しくない。
学校の年季が入った黒板。
1 名無し人民@ようくー(zxzgm)
赤なんとか十字会とか、そういうのってどこいったん?
2 名無し人民@ようくー(「?相如」)
いや……、泣かないぞ。
3 名無し人民@ようくー(地方2色粉)
こういうのを見てて思うけど、
毎年の「中国のGDP額が!」とかいうアレって、何に使ってるんだろうな。
4 名無し人民@ようくー(蕭蕭好可愛哦)
自分が子どもの頃、
こうやって弟や妹を背負って学校に行く子を見たことがあって
考えさせられるところがあったんだけどさ。
あれから15年も経つってのに、
まだこういうことがあるんだな……。
5 名無し人民@ようくー(泉莫客)
あきらめなよ。
官僚のお父さんお母さんがいなかったのが悪いんだ。
6 名無し人民@ようくー(wsyboss00)
心が重い。
数十年前みたいな光景が現在でもなお残っている。
これって、社会の進歩なんだろうか、
それとも退歩なんだろうか。
7 名無し人民@ようくー(13366075185)
これが中国ってやつさ。
こういう子たちが「祖国の未来を担う」と……。
8 名無し人民@ようくー(leonjlm)
指導者たちの豪勢なメシ1回のカネで、
学校をひとつつくれるかもなあ……。
やれやれ。
9 名無し人民@ようくー(小彬斌杜)
うちの地元もこうだよ。
俺はがんばって、たくさんお金を稼ぐんだ。
誰かお金持ってる人間が、
こういう子たちを助けて学校を修理してあげてくれないかなあ。
10 名無し人民@ようくー(水旁青竹)※ミャオ族
かわいそうな子……。
俺たちミャオ族が現在これほど苦しんでいるのはなぜか、
知る人はきっと少ないのだろうな。
俺たちはずっとこうして落魄して、現在に至っているんだ。
祖先たちの栄光の歴史は埋もれてしまった。
もう返って来ない……。
11 名無し人民@ようくー(5K小飛)
こんな光景が現在もあるなんて信じられない。
うちの母さんは小学校のときに俺のおじさんやおばさんを抱えて、
面倒を見ながら学校に通っていたそうだけど。
あれからずいぶん経ったのに、まだ同じようなことが……。
「祖国は強大にして豊かである」じゃなかったっけか!?
12 名無し人民@ようくー(齊??)
いやいや、我が国は既に豊かだよ。アフリカに小学校を建ててあげるくらいだ。
ところで国内の子どもの現状を見ると……、
俺は何かに憤ってしょうがない。
参考:アフリカで小学校寄贈、北京では農民工の学校を強制閉鎖 (日経BP)
中国で“希望工程”と言えば、「貧困児童就学援助プロジェクト」を指し、募金によって貧困地域の学童教育を
支援する事業を意味し、この事業を通じて建てられた小学校は「希望小学校」と呼ばれる。これをアフリカで展開
しようというのが“中非希望工程“であり、今後10年以内に総額20億元(約250億円)を投じてアフリカの各国で
1000校の希望小学校を建設して寄贈するというものである。(引用終わり)
13 名無し人民@ようくー(memexinmeng)
なんと言うべきかなあ。
本当に尊い人間とは善良な人間のことだよな。
でも、いまどきの社会では金持ちだけが尊いんだ……。
14 名無し人民@ようくー(黄海暖流)
アフリカの援助やってる場合じゃねえだろ。
15 名無し人民@ようくー(嘿o烏鴉)
中国国家統計局発表。
吾々ノ収入ハ極メテ高ヒノデアル。
人民ハマコトニ幸福ナノデアル……。
16 名無し人民@ようくー(明ぬ明)
動画の最初に流れる鐘の音がすごく懐かしい。
17 名無し人民@ようくー(文嘉思)
子どもの頃、わたしもお姉ちゃんに背負われて何年か学校に行ったなあ……。
18 名無し人民@ようくー(秋妖無歡)
悲しすぎる!
うちの母もそうやって学校に通ったらしいけれど、
それって1950年代の話だよ……。
きついな。
19 名無し人民@ようくー(kkkk000011)
俺が小学校三年の時までは似たような状況だったな。
でも、あれって1990年代の初め頃の話で、
その後は改善したぞ。
20 名無し人民@ようくー(小女子笑笑)
貧富の差が激しすぎるよ。
国家が強大になったって、民が豊かになるとは限らないんだ。
21 名無し人民@ようくー(215740251)
俺の子どもの頃みたいだなあ。特に、あのスリッパ。
俺が中学に上がる頃になっても、この動画みたいな感じだったよ。
いま、もうじき大学を卒業するんだけどさ。
自分の子どもの頃を考えると、
こういう「苦しい」とされる環境って、別に苦しくもなんともなかったんだよな。
むしろ、現代の(都市部の)社会に対して、
どんどん信じる気持ちを失ってきている。
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どうやら動画への反応は2パターンにわかれるようで、
「こんなのかわいそう!」という、
ほっとけない世界の貧しさ的というか、自国批判的な意見がひとつ。
もうひとつは、そんな貧しさにどこかでノスタルジーを持つような意見だ。
(もっとも、元の書き込みを見ると両者の割合は7:3くらいである。
あと、「昔はこういう話もあったが、現在も変わらないのか!」と憤る意見も散見されるが、
そこでいわれる「昔」は1950年代だったり、1990年代だったりするのが面白い)
山奥で変わり者が勝手に皇帝を名乗ったり、
女の子が弟をあやしながらボロボロの学校に通わなきゃいけないけれど、
都市部の近代的懊悩などというものとは
さっぱり無縁な(と、ならざるを得ない)人々が暮らす「停滞した」旧中国と、
就職とか金儲けとか個人の権利とか自由とかいろんな抽象的な問題を考えざるを得ず、
貧しい農村にノスタルジーを覚える奴まで出てくる、「病んだ」現代中国。
こんにちの中国は、こういう面倒くさくて相反する要素が
いっこの国にどちらも同時に存在しているだけに、
いろいろ大変なのであろうと考える次第。
……ところで、俺も地元帰りたいなあ。
(年末に帰るけど)