Quantcast
Channel: 大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜
Viewing all articles
Browse latest Browse all 32

反日デモ参加中国人「修学旅行のバス状態でした」 現地からの反日デモ・レポート 後編

$
0
0
前半より引き続き)

ネット経由でいろいろと手元に入ってくる、反日デモの現地報告。
ついに真打ち登場で、中国において実際にデモに参加した中国人自身による
インサイダー・レポートを紹介したい。


これは、昨日になってツイッターを経由して、
瀋陽出身の中国人ウィキペディアンから報告をもらったもので、
柳条湖事件記念日の9月18日に、彼の知人(中国人)が
みずから反日デモに参加した際の当事者としての現地レポなのだという。

瀋陽再度爆發反日遊行 日本領館遭襲 (維基新聞) 


この報告者は、
ウィキニュースに投稿していること(=中国でウィキペディアン=そこそこ高学歴で頭いい)、
原文の筆致がかなり抑制・客観的で、中国政府に都合が悪そうなことや
現地警察の反応についてもかなり詳しく書いていることなどから、
おそらく反日を叫ぶためではなく「反日デモに混じって内部報告を上げること」を目的として、
デモに加わったように思える。


では、彼の報告を紹介しよう。
長いので以下に要約する。




<瀋陽9月18日反日デモ参加報告>
――――――――――――――――――――

<集合>
・記者(=報告の筆者)は9月18日9時半からのデモ実施を
 ネットで知り、集合場所の中山広場へ向かった。
・集合場所は警官とパトカーだらけである。
・私服警官が「政府は今回のデモを支持している」
 「ただし暴徒に利用されるのを防ぐため、
 参加者が自発的に組織を作るのは許可しない。警察の誘導に従って動くこと」
 を申し渡してくる。

・記者は警察と他のデモ参加者の誘導でバスに乗せられた。
・車上には制服姿の警官が数人おり、規定の登録用紙を配られて
 「名前」「ID番号」「電話番号」「QQ(チャット)の番号」「住所」「家族構成」
 などを記入させられた。

・バスに乗せられているデモ参加者は多種多様だった。
 無職者と思しき人間から、個人商店主、
 会社に休みをとってデモに来た社会人、組織的に参加している学生などだ。
・バス上では別のデモ参加者から(あらかじめ準備された)国旗と、国旗シールを配られた。
 シールは、例えばキヤノンのデジカメを持ってる人が、ロゴマークの上に貼ったりするためである。
 たぶん、デモ中に破壊されるのを防ぐためだろう。
・その後、バスは市内の八一劇場へ。決起集会である。

  ※注.八一劇場は、瀋陽市内にある人民解放軍瀋陽軍区・軍人クラブ内にある劇場だ。
      解放軍の建軍日である「八一」の名称とその立地からわかるように、モロに軍施設である。


<決起集会>
・この劇場では組織的なデモの動員大会がしばしば開かれる。
・集会中には「理性的な愛国を」、
 「国内外の記者がこれを見ている、破壊活動はするな」とお達し。
・「小日本は釣魚島から出ていけ」「日本製品ボイコット」などの
 スローガンが書かれた横断幕を、警察が示す。
 ほか、なんと毛沢東の肖像画までもが(おそらく警察により)提示された。
 絵の下には「偉大なる領袖にして導師たる毛主席」との言葉が書かれていた。

・劇場内において、全員で大声を張り上げてスローガンの練習。
・警察に「バスが来るから待ってるように」と指示され、
 待ってる間に国歌や愛国歌謡の『歌唱祖國』、
 『大刀向鬼子頭上砍去(日本人の首を切り落とせ)』などを合唱。
・会場内にはほかに共産党旗や、「海峡両岸で共同して釣魚島を守ろう」のプラカード。
 台湾人が会場にいるのかは不明。ただし青天白日旗はなかったw

・その後、バスに乗ることになる。
 人大杉であり「おまえらちゃんとバスに乗れ、順序守れ秩序守れ」と
 警察に怒られる。


<バスデモ>
・デモ隊を乗せたバスが走り出す。
 車内より国旗を振ってスローガンを叫ぶ。群衆からの注目度は高かった。
・取り巻く群衆の中には制服姿の警官がいた。おそらく私服警官も混じっている。
・交通警察の前を通った際、そこの警官がデモのバスに敬礼をしていた。
・交差点でバスがクラクションを鳴らすと、近くの市民の自動車がそれに唱和する。
 魯迅美術学院の近くを通った際には、学生たちが走り出てきてバスに声援を送る。
・車内のデモ隊は気持よく興奮し、スローガンを叫び続ける。

・その後、記者の前を走っていたデモ隊のバスが停車して人が降りていくが、
 自分たちのバスは停車せずに、むしろ日本領事館から遠くへと離れて走っていく。
・車内で警官が「政府の方でこういう段取りになってるから」
 「デモバスはそれぞれルート違うから」「最後は領事館行くから」と
 説明するも、車内のデモ隊は不満。

・バスが再度領事館に近寄り、再び停車せずに走りだすと
 「政府は俺らを弄んでいる、いいかげんにしろ。バス停めろや」
 とデモ隊激怒。
・警察、必死でなだめるも、バスの窓を開けて路上に飛び降りるやつまで出てきたことで、
 「もうええわ、降りろ」ということになり、
 そこからデモ隊を再度組織して、横断幕を掲げて領事館を目指すことになる。

  ※中国に慣れた人間だと、なにやら状況が想像できて結構興味深い。
    警察=DQN中学の修学旅行の引率の先生、みたいな感じである。

    なんとYoutubeに現場動画まで上がっている。2:11あたりからの「イヤホォォォォ」な感じがとてもアホっぽくて素敵。
    「理性的な愛国」とか、すでに現場到着前に崩壊してるんだが……。






<日本領事館前>
・デモ隊は国旗をはためかせてスローガンを叫び、毛主席の肖像画と横断幕をふりかざして領事館前へ。
・領事館に向かう途中で日本料理店の前を通りかかり、一部の参加者が店に石やインク瓶を投げつける。
・店内にいる人間に「売国奴(漢奸)!」と叫ぶ。
・さらに後からやってきた人々は、日本料理店を領事館と間違えて破壊にかかり、
 「これ違うから、領事館じゃなくて料理店だから、領事館もっと先だから」
 と他の参加者に止められる。
・ちなみに警察は傍観していて破壊行為を阻止せず。

・日本領事館に接近。参加者の数人が中国国旗上にスローガンを書いていたので、
 警察から「それは国旗法違反だからしまうように」と怒られる。
・領事館前にはすでに、大量の盾を持った防暴武装警察。
 領事館の壁はすでにインク投げられて汚れ、窓が割られていた。

・一部の人間は興奮してバーサク状態。
 石やインク瓶やガラス瓶を次々に投げ込み、群衆は拍手でエキサイト。
 警察はこれらの行為を止めず、ただしデモ隊が領事館の敷地内に入るのは阻止。
・「石投げるなら高く投げろ。武装警察に当たるから」と叫ぶデモ参加者の声。
・デモ終了後は、手配されたバスで帰る人あり、自分で解散する人あり。



――――――――――――――――――――




なんだか、ドジぶりやら頭の悪さやら民度の低さ(こう言わざるを得ない)やら、
修学旅行のバス状態で警察に対して切れるやら、
いろんな意味で非常に中国らしい話だと思えてならない。


ちなみに、9月18日の瀋陽については、ネットによる情報拡散も多少はあったようだが、やはり
政府が決める→ネットでも広がる→人が来る→政府が組織化する
という流れであるようだ。

なんだかんだいって、デモにはお上が絡んでいる。
ただし、来ている人間の全員が共産党員や軍人だったり、
洗脳されたりしているわけでもない。
(「バスからおろせー!」と、しょうもない理由で警察に文句つけるような人たちなのだ)。



 





……さて。
ところで「官製デモ」という言葉は、
近頃はなんだか当たり前にように日本のメディアで使われている。
で、中国で反日デモが起きるたびに「これは官製か自発的なデモか」みたいな議論がなされたりする。

だが、この「官製デモ」という言葉について、
実はあんまり定義されてなかったりするのも事実だろう。

デモ隊の全員が共産党員や共青団員や軍人で、政治委員の指示に従って一糸乱れずに動いているなら
これは間違いなく官製デモに違いないのだが、そういうものは最近はさほど多くはない。


特に瀋陽の9月18日の件については、Youtubeの動画を見てもわかるように、
どう見ても普段は路上で麻雀やったり電車内でヒマワリの種食ったりしている、
そこらのしょうもないおっさんや兄ちゃん姉ちゃんが、
参加者の多数を占めているようなのだ。

前記事の蘇州のデモに現れたヤクザ風の破壊団員たちも、
彼ら自身はふだん、「官」に直結する人間ではないのではないかと思われる。
また、平和堂が破壊された湖南省長沙のデモも、地元新聞社の株州日報の動員だったとされる。


しかしながら、「官製デモ」という言葉について、
それが軍か警察か共青団か、地元や企業内の小さな共産党支部かを問わず
「『「官』側が管理・指示しているデモ」と
そのぐらいの解釈で考えるならば、
前回と今回の記事で紹介した蘇州と瀋陽の件(そして、長沙の件も)は
いずれも官製デモに近いものだと見なしてそう外れてはいないはずだろう。


たとえ破壊行為をおこなっていてすら、
基本的には当局の(誰かの)コントロール範囲内にはある。

まったく日本人としては迷惑極まりない話だが、
反日デモとは、人民の民度と中国共産党の政治力の、
恐怖のヴァリアブルコンビネーションだと言えるのではないか。

  ※もっとも、それで調子こいて第三国にまで襲いかかっているのは、タガが外れすぎて民間が暴走したと考えた方がよさそうだが。



先週まで中国全土で怒り狂っているように見えたのに、
今週は過激なデモがほぼピタっとなくなってしまったのも、
“基本的には”反日デモが「官製」でコントロール下にあるから、と考えれば
やはり納得できるところではあるだろう。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 32

Trending Articles