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【いまそこにある不条理】福建省のホテル用心棒とタクシー運転手が修羅場すぎる

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このブログでは過去、たまーに中国南部のカオスな人民たちの社会を紹介してきた。
具体的にいえば、福建省や広東省。
自分自身が初めて行った中国の街が福建の廈門や泉州だったり、むかし広東に留学してたり、
学生時代に清代ごろの福建省の農村を卒論その他のテーマにしていたりで、
個人的にここらへんの地域には思い入れが強いのだ。


この近辺について、例えば18世紀の清代の史料にはこんな記述がある。

地方惡少遊手、覓食訛索詐騙、官法懲之不悛者、律稱地棍。(『閩雑記』)

此等之人性好佚遊、習成驕恣、不畏刑憲。(『福建通志』)

漳俗好闘。鵪鶉始于游手好閑之徒。繼而士大夫家子弟亦有為之者。(『雲霄廳志』)

かいつまんで言えば、
ここらへんの地元のDQNはカツアゲやら悪さばかりをしてフリーダムかつバイオレンス、
官憲がこらしめても反省しない、むしろ官憲にびびらない。
なかには士大夫の子弟(現在でいう党地方幹部の息子)でも非行にはしるやつらがいる。
暴力好きすぎてマジ無理。  ……ということらしい。


で、さらに困ったことに、こうした話は清朝の時代で終わってはいなかった。
まず、うちのブログの過去記事の一部を紹介しておこう。


広東省農民「オラの村が隣の村と戦争をはじめるらしいんだが…」

広東省農民「オラの村が隣の村との戦争で焼き打ちされたんだが…」 

福建省南部の街が限りなくメトロシティな件について


うーむ、いい感じにヤバい。
そんなたけしの挑戦状みたいな出来事が日々身近にある福建省で、
先日またもやカオスな事件が発生した。

政治の民主化とかネット世論の伸長とか住民の権利意識の高まりとか、
昨今の中国に関する流行の話題がアホらしく思えてくるような、
あまりにも斜め上の当事者報告とその反応をご覧ください。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【漳州の大富豪ホテルで、タクシー運転手とガードマンが流血バトル】
原題「漳州大富豪事件 漳州大富豪酒店發生的士司機與保安械鬥」
『漳州論壇』「漳州印象」板

1 名前:名無し人民@常識があぶない 2011-8-6 11:54:43
ショウ州大富豪ホテル事件:

昨夜8月5日深夜11時ごろ、
数人のタクシー運転手たちがショウ州大富豪ホテルの入り口で客待ちの列を作っていたところ、
客待ち費用の支払いを巡ってホテルのガードマンと肉体的衝突に至った。

まず、ガードマンたちがナタと鉄パイプを手にして
タクシー運転手3人の頭部と身体のあちこちに重傷を負わせたことで、
仲間を呼んだ運転手約100人とホテル側のガードマン及び従業員20人との乱闘が発生した。

殴り合いの過程でホテルのガラス門は破壊され、ガードマン数名が負傷。
通報を受けてパトカー数台と警官20人あまりが現場に駆けつけて秩序を回復しようとしたが、
タクシー運転手側の人数は次々と仲間を呼んで増え続け、
20数人の警察では殴り合い現場をまったく収集することができない。

1時間余りの後、2台の特別警察(機動隊)車両が特別警察の約40人を乗せて現場に到着。
市の公安局長、運輸管理局局長、10軒あまりのタクシー会社社長たちも次々と現場にやってきた。

だが、タクシー運転手の人数がどんどん増え続けたため、
ホテル側は最初に運転手を殴ったガードマンの引き渡しを拒否。
運転手たちの不満は極度に高まり、事態はさらに深刻なものとなった。

特別警察ですら現場を支えきれなくなりかけたため、
消防用の高圧放水車1台と強力なサーチライトも現場に到着。
このとき、すでに6日未明3時になっていた。

3時30分ごろ、軍分区武装警察の大トラック2台が70人近い武装警察を搭載して現場に到着し、
事態はようやく沈静化された。

事件後に救急車2台が負傷した運転手数名を病院に送り届け、
警察が運転手たちの要求を受け入れて
殴り合いのリーダーとなったガードマン4人を連行した。


俺はショウ州でタクシー運転手として働いているが、
この事件にはもう腹が立って仕方ねえ。
もともと大した稼ぎにもならねえから、ホテルの前で客待ちをしていたってのに
ホテルのガードマンどもは「保護費用」を要求しやがる!
カネを払わないなら失せろってよ、クソが!!

道路はおまえらのもんじゃねえ。
この手の強盗行為はまったく軽蔑するぜ……。

  

  

  

  


2 名前:名無し人民@常識があぶない
怒らずに真面目に仕事をして稼げよ……。
はした金で騒ぎを起こすのはバカだけだぞ。



3 名前:名無し人民@常識があぶない
おいおい、この警察たちは何を守っているんだ?
みんなしてホテルの前に立ってやがる。
ちくしょうめ。
警察がホテルのガードマンみたいじゃねえか。

しかも運転手側に言われてから、やっと犯人4人を捕まえただと?
このダボが。
こういう良心に欠けたアホどもは数年くらいブチ込んでおけばいいんだよ。
でも、どうせどっかのエラいさんが手を回して数日で出てきやがるんだ。ボケ。
この社会はよお、もうちょっと警察をクビにしちまうべきだな。

  ※非常に汚い書き込みだが、だいたい原文ママ。投稿者も地元のタクシー運転手なのかもしれない。
   最後の一行の原文「這社會應該多放倒幾個警察」。訳が間違っているかもしれないのでご指摘歓迎。



4 名前:名無し人民@常識があぶない
ガードマンだと?
黒社会のゴロツキじゃないか!
ナタを持って勤務しているガードマンがどこにいるんだ!



5 名前:名無し人民@常識があぶない
大富豪ホテル?
富豪じゃなくてヤクザ映画みたいだよな。



7 名前:名無し人民@常識があぶない
人間が大勢出すぎだろ。



10 名前:名無し人民@常識があぶない
通りすがりだが、現場写真が壮観すぎるな。



12 名前:名無し人民@常識があぶない
警察はカネ持ちの後ろ盾さ。
よい警察なんて、パンダの生息頭数よりも少ないぜ。



13 名前:名無し人民@常識があぶない
タクシー運転手も感心できないしガードマンもひどい。
だが、問題の本当の原因は調べてみないとわからないだろう。

みんな、客観的に問題を見た方がいいと思う。
事件の実態は片方(=タクシー側)の人間だけの推測にあるんじゃない。
片手じゃ拍手は叩けないのさ。



14 名前:名無し人民@常識があぶない
>>3
警察をクビにしてどうなるっていうんだよ。
社会の安全はやっぱり警察がいるから守られる。
警察さんだって、社会の人間にもうちょっと仕事を理解してほしいと思ってるんじゃないかな?



15 名前:名無し人民@常識があぶない
ガードマンがナタを持っていたとか、ウソを書くんじゃねえ!
この街のタクシー運転手どもには仕置きが必要だ。
今回痛い目を見せておかなければ、次はもっとひどいことになるのさ。

  ※ガードマン側の人間の書き込みと思われる。



16 名前:名無し人民@常識があぶない
いや、先に殴ったやつが悪いんじゃないかと思う。



17 名前:名無し人民@常識があぶない
壮観すぎて頭がクラクラしてきた。
最近、ガードマンはどんどんスゲえことになってるよな。



19 名前:名無し人民@常識があぶない
こうなったのには原因がある。
タクシーが道をふさいで客待ちするのも、やっぱりマナーが悪い。



23 名前:名無し人民@常識があぶない  2011-8-7 05:15:18
昨日の大富豪ホテルの光景はマジですごかったぜ。
江西人どもはすごいな。あっという間に仲間を呼んで100人も集めやがる……。
重慶の文強の黒社会よりもヤバいんじゃないか!?

このタクシー運転手ども、みんな揃って黒社会の構成員だろ。

  ※書き込みからすると、タクシー運転手たちは隣の江西省からの出稼ぎ者なのかもしれない。
   同郷人のネットワークや同業者ギルドがさながら秘密結社のようになり、ちょっとしたいさかいで爆発するのは、
   例えば今年6月の子広州暴動なんかでも見られた。中国ではよくあることである。

  ※ちなみに書き込みに登場する「文強」とは、薄熙來にあぼーんされた重慶の司法トップ。マフィアと繋がりがあったとされる。



24 名前:名無し人民@常識があぶない
数年前のタクシー運転手のストライキを思い出してみろよ。
ストに参加しない奴は制裁を受けた。
なにか秘密結社みたいな組織があって仕切ってるんだよ。

まともな都市であれば、
いざこざの殴り合いにこんなに大勢の人間が出てくることはない。

  ※タクシー運転手秘密結社説だが、実はこれは根拠がない話ではない。
   中国では古来、運送業者や水夫が秘密結社を結成するケースが多々あり、
   有名どころでは『蒼天の拳』に登場する大マフィアの「青幇」も、
   江南と北京を結ぶ大運河の水夫たちのギルドから発展して結成されたとされている。

   あと、重慶のヤクザのルーツのひとつである(と思われる)秘密結社の哥老会も、もとは長江の水運業者だったという。
   ちなみにこの哥老会は後に「紅幇」の母体のひとつになり、
   彼らをモデルにした紅華会なるマフィア組織が後に霞拳志郎に爆殺されるわけだが、それは結構どうでもいい。



30 名前:名無し人民@常識があぶない
いまホテルで働いてるガードマンはみんなヤクザだよ。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――





……さて。
ナタや鉄パイプで相手をタコ殴りにする、大富豪ホテルの用心棒。
ドラクエのマドハンドさながらに仲間を呼びまくる運転手たちの秘密結社。
そして童話の「大きなかぶ」のごとく、事態収拾のためにどんどん色んな人がやってくる当局のみなさん。


もはや何が何だかよくわからないが、
いち好事家としては、そんな福建省は非常に楽しい場所であると思う。




警官「おいオッサン、立ちションしてんじゃねえよボケ!」 → 殴ったら相手が軍人でした

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いきなり更新するが、今回取り上げるのはこんな事件だ。


中国で人民解放軍と警官隊が乱闘 数百人規模、交番も破壊 - MSN産経ニュース

中国広西チワン族自治区で15日夜、地元警察と人民解放軍の地元駐留部隊が酒の上のけんかを発端に
計数百人規模の乱闘騒ぎを起こし、数人が重傷を負うなど多数の負傷者が出た。香港紙、星島日報など
が17日、伝えた。
中国では当局の強制土地収用などに抗議する住民と警官隊が衝突するケースが多発しているが、警官と
軍との衝突が伝えられるのは珍しい。
同紙などによると、酒に酔った軍人が交番でトイレを借りようとして警官と口論になり、警官数十人が
軍人数人を2時間にわたって暴行。救出のため軍部隊から軍車両と数百人が派遣され、警官数百人と乱
闘になり、交番も破壊された。(共同)




酔っ払いが交番にトイレを借りに行ったと思ったら、
軍人と警官が数百人規模で激突していた。

何が何やらさっぱりわからない事件だが、
事件があった広西チワン族自治区の玉林市の地元掲示板を百度貼吧で検索してみたところ、
本当かウソかはわからないなりに、より詳しい情報が見つかった。


面白いので紹介してみることにしよう。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【玉林事件について】
原題「玉林事件」http://tieba.baidu.com/p/1249019275
『百度貼吧』「玉林」板

1 名前:名無し人民@デスマッチ 2011-10-17 19:55
10月15日の夜、広西チワン族自治区玉林にて軍隊と警官の深刻な衝突が発生。
夜9時、北辰×××(おそらく派出所)のある副所長が30人あまりの幹部と一般警官を連れて
人民解放軍玉林駐屯部隊の軍人数名を殴打し、軍人の身分証をすべてボロボロに引き裂き、
さらに×××(おそらく派出所)に引きずり込んで引き続き殴りつけて、軍人数名は意識不明の重体に陥った。
軍人が拷問をうけて2時間後、
人民解放軍が救援にやってきて、軍用車多数で北辰×××(おそらく派出所)を包囲した。

銃を持った兵士が門の前をふさぎ、
×××(おそらく派出所)に軍人の釈放と下手人の引き渡しを求めた。
数百人の××と××(不明。公安と武装警察か?)が現場に到着するも手を出せず、
玉林市の××(おそらく公安)局長、副市長、軍の師団長、軍の政治委員などが現場におもむき仲裁した。
軍人三名が重傷を負い、腰骨と肋骨を骨折。
現在は玉林市第一人民医院で治療を受けている。



2 名前:1
事件の原因について比較的正しく説明するならば、
軍人3人は転職したてか間もなく(軍人に)転職予定の人物で、
飲酒後に×××(おそらく派出所)のトイレを借りようとしたが果たせず。
おそらくいろいろ差し迫っていて、しかも酒を飲んで自制心がゆるんでいたこともあり、
××(おそらく公安)の敷地内で解決(=立ちション)した。

これを(派出所の)副局長に見られて、
その後に口論と身体暴力に至り、
軍人の負傷となった模様だ。

その後、軍人は携帯電話で戦友を呼び出し、
一方で××(おそらく公安)は××(警官?)を応援に呼び、
×××(おそらく派出所)の入り口で対峙した。
おそらく軍の側の銃には弾が入っておらず、
××(おそらく公安)の側も手榴弾のピンを引くことができなかった。 ※この表現、何かの比喩の可能性あり。

要するにこういうことだ。
玉林市の副市長某はすでにクビになったという。



3 名前:名無し人民@デスマッチ(江西省20歳♂)
おい、このスレは河蟹されるぞ。
>>1は無理しやがって……。何がお前をそこまでさせるんだ。

  ※河蟹…削除のこと。



4 名前:1
>>3
みんなのためにちょっとばかりニュースを提供したいだけさ。
和諧されるならされてしまえば結構だ。

  ※和諧…削除のこと。



5 名前:名無し人民@デスマッチ
>玉林市の副市長某はすでにクビ
胡なんとかさんもクビになればいい。
彼の責任が最も大きい。

  ※胡なんとかさん…おそらく胡錦濤



6 名前:名無し人民@デスマッチ
このスレは和諧されるぞー。
速攻でやられるぞー。



7 名前:名無し人民@デスマッチ(広西 玉林市 16歳♂)
で、真相はどうなってんだよ?



8 名前:名無し人民@デスマッチ
兵隊になるやつも民度が低過ぎるだろ……。
どこでも野外で大小便をやる男の人って(ry



9 名前:名無し人民@デスマッチ(河北省♂)
本当かうそかわからん話だから、
事実関係はやはりみんなの書き込みを見てみないと。



10 名前:名無し人民@デスマッチ
ああ、この世は闇だ。
人民は常に盲目状態に置かれる。
俺たちは真相を知りたい……。



12 名前:名無し人民@デスマッチ
>>10
だよな……。



16 名前:1
まず、聞いた話では今回の部隊は某某の主力部隊で、
陸軍甲種師団に所属していたそうだ。
官兵の民度についてはそんなに責めるべきものでもないだろう。

中国の国情を考えると、
礼儀正しい人を除いてはおそらく人民全体の50%くらいは
どこででも立ちションするだろ?
俺だってやったことがあるわけだが……。
飲んだ後は、自制心が低くなることも確かだ。

×××(おそらく派出所)の反応にしても、
彼らももともとはそんなに追及したくなかったと思うんだよ。
だが、例の副所長については、バックの親分たちに厳しい人間がいた。

 ※ここ、翻訳不正確。原文は「可能那副所長后面也是絶対不軟的」

部下の目の前で面子を失うわけにもいかないしね。
一方で軍人の側も階級は決して低くなかったはずだ(連隊長か、もっと高いかも?)。

みんな面子のために口論して手を出した。
ここで周囲の人間が大騒ぎするのはいけないかもしれない。
(略)



18 名前:名無し人民@デスマッチ(江西省♂)
ちくしょう。兵隊さんを殴るなんて。
死んじまえ!



21 名前:名無し人民@デスマッチ
現役兵士の俺が通りますよ。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――




相変わらずカオスには違いないが、
この投稿の内容が本当だとすれば、もうちょっと事件が見えてくる。


要するに、

1.軍人さん3人(もしかしたら非番で私服だったかも)が
 外で酒を飲んでいていい感じに酔っ払い、
 親方五星紅旗のよしみで交番でトイレを借りようとした。
   ↓
2.交番のお巡りはそこらのオッサンが便所を借りに来たと勘違いをして
 「おいこら」式に追い払った。
 (日本じゃありえない話だが、中国の現地警官は初期こち亀の両津みたいな奴だったのだ)
   ↓
3.軍人は酒の勢いもあって「自分はここで燃料を放出するであります」と、
 警察の敷地内で立ちション開始。
   ↓
4.警察の偉い人が激怒。
 普段から一般市民の不貞な輩にやっているのと同じように、
 問答無用で立ちション軍人を殴る。
   ↓
5.当然ながら、戦うことが仕事である軍人は全力で抵抗。
   ↓
6.思わぬ反撃に遭った警官は「やっちまえ」となり、
 普段から一般市民の不貞な輩にやっているのと同じように、問答無用でリンチ開始。
   ↓
7.軍人がマドハンドのように仲間を呼ぶ
   ↓
8.警官も合体スライムのように仲間を呼ぶ
   ↓
9.ポリスメンとコンバットメンのゆるやか戦闘ライフはじまる


こういう流れだったのであろう。

官憲が市民をブン殴るという、
中国ではよくあること的な行為を当然のごとくやってみたところ、
相手が運悪く軍人だったのだ。




なるほど。これで謎はすべて解けた!


……わけないですよね。やっぱり。


中国の映画監督「カダフィ死んで思ったんだけど、リビア人の演技力に感動したわ」

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リビアの独裁者・カダフィの死については、
いまさらニュースを引用して説明することもないだろう。

中国史に照らしていうなら、
李自成みたいな死に方だった」というよりほかない
独裁者の悲惨な最期であった。

ちなみに、カダフィの死は中国でも大々的に報じられている。


  



中国とリビアといえば、
往年の中国政府は同じ独裁政権のよしみでカダフィ政権と仲良しであり、
資源ビジネスでの中国企業の進出をはじめ、
武器売却の話もあったとかなかったとかの関係だったという。
だが、半年ほど前から事態の悪化を受けて
中国共産党はカダフィをばっさりとマイミクから外している。

 参考:中国の良き友人(中国という隣人)

もっとも、往年の中国がリビア前政権に肩入れしていたのもやはり確かなのであり、
トランプの大富豪ばりに文字通りの「革命」が起きてしまった現在、
中国はリビアの資源争奪戦において
逆に出遅れてしまうのかもしれない。

ここらへんの動向はやはり気になるところである。
  ※リビアの石油と天然ガス埋蔵量は世界有数です。



……だが、そんな世界の政治と経済の難しい話は、
とりあえず他の難しいブログに任せるとしよう。
ここで紹介してみるのは、カダフィの死に対する中国のネット民の反応である。
ミニブログ『新浪微博』において、
カダフィの話題で最も多くリプライを集めた発言(8000件以上のリプライがきていた)と、
そこで寄せられた意見の一部を見ていきたい。

元のツイートの寄稿者は、
『唐山大地震』などの作品で知られる映画監督の馮小剛である。
映画人らしい風刺に満ちた書き込みは、中国のネット民をいたく刺激したようだ。


では、ごらんください。





――――――――――――――――――――――
【カダフィの死】10月21日 17:04
「馮小剛」のツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1774978073/xtMwNnyER

@馮小剛
カダフィが死んだ。
多くのリビア人民が街に出て、その死を欣喜雀躍の様子で祝っている。

だが、半年前を思い出してみたい。
カダフィの在位中、
やはり多くのリビア人民が街に出てカダフィを讃えていたことを。

人民の演技力とは大したものだ。
毎回の演技を全身全霊を込めて演じており、
その様子にはいささかの破綻も見られない。

私はここに、リビア人民に対して本年度の最優秀集団演技賞を差し上げたい。



.@神仙and妖怪 (10月21日 17:31)
勝てば官軍なんですよ。



.@額是農民的児子 (10月21日 17:32)
ははは。
ならば、最優秀監督賞はどちらで?



.@張書源Calvin (10月21日 17:32)
人民というのはやるせないものだね……。
この時代ってのは、誰もがみな演じる側なのさ。



.@向日葵之革命小将 (10月21日 17:32)
的確な指摘かと。
みんな、俳優になる資質を持っている。

  ※これらは中国人のことを指していると思われる。



.@快楽的無為大哥 (10月21日 17:32)
勝てば官軍負ければ賊軍。
一代の梟雄の人生がこんなに悲惨な幕切れになるとは、感慨に堪えない。
アメ公どもの力はどんどん強まっていく。
全世界はみな同じようになるのさ、こんな悲劇が等しく訪れることにね!



.@An-outlier (10月21日 17:32)
何を言っているんだ!
清朝の時代の庶民だって、皇帝の誕生日を祝って、
見た目の上では心から大喜びしているように見えただろう?
だが、実際はどうだ??

ああいう体制の下では、みんな良心を眠らせなくてはならないんだ。
たとえば現在の我が国を見ろ。
共産党建党記念だかでみんなが革命歌を歌ってるわけだが、
そのうち何人が本気でやっていると思う?
本音を語れる人間が世間にどれほどいると思う?

「魯迅」って単語だって、いまに検閲対象になるかもしれないぜ??



.@yan論自由 (10月21日 17:32)
カダフィを持ち上げてた連中と反カダフィをやってる連中は
別々のグループじゃないのかな。



.@穆絮梓 (10月21日 17:32)
いや。
人民にしてみれば誰が政治を握っていたっていいのさ。
彼らが戦争を停止させて、平和な世の中を作ってくれるならね。

現在のリビアの歓喜の声は、
平和が来たことをよろこんでいるんじゃないのか?



.@七歩揺 (10月21日 17:32)
(リビアの)愚民どもめ。
トラ(=政治家)はどんなトラだって人間を食うのさ。
そんなに大喜びをしてどうするんだ?



.@雲川逸楓 (10月21日 17:32)
この手の大衆演技賞はもともとは中国の得意技だった。
文化大革命のあとは、
この栄冠は北朝鮮の小さな兄弟たちに移ったようだね。



.@粘土小飛侠 (10月21日 17:33)
それって、
うちの国のマスゴミが偏向報道してるから、
そんな風に見えるだけなんじゃないの?



.@勇敢的lily (10月21日 17:33)
俺たちが見られるあらゆるニュースは
中国中央電視台の見解でしかないしな。



.@芒果秦許峰 (10月21日 17:33)
大衆ってのは、
ただ大勢に従って動くだけなんだよ。



.@wdsky (10月21日 17:37)
人民なんてそんなもんだ。



.@河姆渡人188 (10月21日 17:37)
いや、以前のは強制的にやらされていたけれど、
現在のは自発的なものだろう?



.@魔戒戒魔 (10月21日 17:37)
最も素晴らしい演劇は民間にあったというわけか。



.@馬里奥40 想起唱?歌那会儿,莫笑他人痴。。。(10月21日 17:41)
いや。
「革命の歌を歌いましょう!」とかやってる俺らに、
連中を笑う資格ってなくね?



.@十月荊棘魚 (10月21日 17:42)
うちの国も一緒だよねww



.@到所乱滾的Qii (10月21日 17:45)
中国人の演技がいちばんパネえわwww



.@赤脚182 (10月21日 18:06)
人民はイヌさ。
権力を持つ者にただ着いていく。



.@Binghai_weibo (10月21日 19:50)
大衆演技賞は、ぜひ重慶のみなさんにさしあげてください!



.@太陽下的亀 (10月21日 19:50)
往年のリビアの人民がカダフィを支持していたのは、
本気でそうだったのだろう。
現在、カダフィが殺されて大喜びしているのも、
やはり本気でそうなのだろう。

カギは、カダフィがリビアの人民たちに疑問を与えてしまったことだ。
(リビアに限らず)政府がやるべきこととは、
自分たちのおこないについて
人民が信頼できるに値する理由を提示することなのだよ。

  ※民主党ェ……。



.@IT蓮接 (10月21日 19:50 海南省♀)
北京の人民も、
六四天安門事件の前後で
似たような手のひら返し劇を演じてましたよね。





――――――――――――――――――――――





ふーむ。なんというか。
カダフィの死について日本の新聞の社説やテレビのコメントなんかを見ていると、
「独裁が倒れた!」
「民主化だ。やったあ!」
「問題もあるだろうけど、世界がきっと応援してくれるよ(キラッ」
と、だいたい三行で内容を要約できそうな眠たい感想も多々見られるのだが、
リアル独裁社会に生きる中国人の立場からすると、
本件についてはもうちょっと複雑な思いがあるらしい。


往年、北京の市民は
張作霖の奉天軍閥がやってきたら表面上は歓迎して、
国民革命軍がきても日本軍がきても表面上は歓迎して、
人民解放軍がやってきてもやっぱり歓迎するという
歌舞伎町のキャバ嬢の接客みたいなことを
かれこれ50年くらいやってきた。
自国がそんな歴史を持つからこそ
映画監督の馮小剛はリビアの様子から連想するものがあり、
多くのネット民がそれに反応したということなのだろう。

(ちなみにそんな中国人のキャバ嬢モードは20世紀にはじまった話ではなく、
 これなんかを読むとわかるようにずいぶん昔から似たような感じである)



政情の悪化であっさりと「友人」を見捨ててしまう中国共産党も変わり身の達人だが、
リビアの民衆を見て「うちも似たようなもんだね」と語るネット民の目から見た、
中国の庶民の姿もやっぱり変わり身の達人。

……たしかに官民を問わず、
中国に最優秀演技賞はぴったりなのかもしれない。





  


雲南省のド田舎の写真を淡々とうpする

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本日10月26日刊行の『独裁者の教養』(星海社新書)。
宣伝はツイッターでやってしまったので、ここでは2月の現地取材中の写真を
(本に入れられなかった部分を含めて)淡々とうpして紹介していってみよう。

まともな日本人は滅多に行かないであろう雲南省最深部、実はこんな感じの場所なんです。









<1.孟連タイ族ラフ族ワ族自治県

 

雲南省の最西南端に位置する、多民族の自治県。
人口約12万人、住民の86%が少数民族。
今回の『独裁者の教養』の「ワ州密航記」で、ベースになっている街。


 
  謎のオート三輪。

 
  過重積載……。

 
  タイ族の寺院もある。

  
  朝市。死して骨を拾うものもなし。

 
  朝市2。売っているのは漢方薬だが、孟連は60年代までは山でアヘンを作っていたそうなので、
  一昔前まではこうやってアヘンや大麻も並んでいたはずである。

 
  バスを待つ地元のばあさん。

 
  バイクを乗り回すタイ仏教の小坊主。ここからミャンマー国境に向かうと増える。

 
  孟連県滞在の後半で宿泊した宿。教育に熱心な家庭で、息子を昆明の大学に通わせていた。
  宿の1階には、マルクス・エンゲルス・毛沢東・スターリン・レーニンと、
  「世界の偉人」のみなさんの肖像画が……。
  ちなみに宿の主人は、黒の中華服を着たダンディな親父だった。 

 
  郊外のある村で。30年くらいは着ていると思しき人民服姿でソバを食うじじい。



<2.孟阿口岸>

孟連県の最西部に位置する、ミャンマー(ワ州)との国境の村。
ぶっちゃけなにもない。

 
  川の向こうはアヘン王国。

 
  しつこいようだが、左手に見えます岸辺がアヘン王国。

 
  数年前に建立された、結構立派なタイ仏教の寺院がある。



<3.芒街村>

孟連の中心部から北へバイクで20分ほど走った場所にある村。
ラフ族が住む農村で、サトウキビの栽培で生計を立てているようだ。

 
  空が広い。

 
  水牛多し。

 
  牛。とにかく牛。あとマージャン。

 
  子どもがかわいい。

 
  ワ族やラフ族には一人っ子政策が適用されないせいか、
  村は子どもが多くて活気がある印象。春節前で帰省した人が多かったこともあるが。

 
  ある農家の家屋内部。まずまず豊か。

 
  水タバコを吸う地元のオッサン。雲南省ではこのパイプが妙に人気。

 
  ご飯ですよ……。(パラレル西遊記的な意味で)


<4.ワ州・パンサン市>



「ワ州」とは、ミャンマーのシャン州東部、中国との国境地帯に位置する、
半独立化した少数民族政権のこと。
支配者・鮑有祥による、中国のパクリみたいな独裁統治が敷かれている。
パンサンはその首府(≒首都)である。

 
 
  市場。革ジャン率高し。

 
  街。かなりボロいが、ワ州領内の都市を結ぶ長距離バスも走っている。

 
  街並み。中国雲南省の「地方の街」だと思えばそこそこ、
  でも、「首都」だと思えばかなりショボいという微妙な発展具合。

 
  中国雲南省のローカル家電チェーン店(デオデオとかジョーシンみたいなの)家具店が
  国境を越えてアヘン王国にも出店中。ほか、何社か中国資本の家電量販店もある。

 
  ワ州連合党「党中央」。たたずむ地元の姉ちゃんがいい味を出している。

 
  春節(中国正月)だったので、夜には市内の中央広場で、
  地元企業主催による高校の文化祭っぽいショーがおこなわれていた。
  集まった市民にはけっこうウケていた。良くも悪くも、娯楽は手作りで提供されるのだ。

 
  山の上には遊園地。

 
  パンサン市内唯一の書店にて。『NARUTO』の中国語版が!

 
  夕暮れアヘン王国。



<5.瀾滄ラフ族自治県ほか>

 

孟連県に隣接するラフ族の自治県。
『独裁者の教養』本編では地名だけが登場する謎の街だが、
実際はこんな場所だ。


 
  郊外の車窓から。基本的には牛。

 
  市街地中心部。孟連県よりはちょっとだけ都会です。

 
  雲南ソバの茶碗を片手に前進する白スーツの親父。謎。

 
  市場の裏手。かなりレトロな写真に見えるが、撮影は2011年2月。

 
  市場にて。

 
  お値段以上ニトリ……じゃなかった、家具チェーン「全友」の看板がこんなところにも。

 
  瀾滄県随一のおしゃれスポット。
  ぱくりファーストフード店の「マクタッキー」が堂々営業。
  マクタッキーは孟連県にもあるんだが、生意気にもぱくりの癖にチェーン展開してやがるw

 
  長距離バスで、雲南省南部で随一の大都会、シーサンパンナ(景洪)へ。

 
  景洪市内で発見した、眼球が脱落したド●えもん。
  tanasinを感じる。



――――――――――――――――――――――――




……とまあ、こんな感じで行ってきた雲南省の田舎とアヘン王国。
ずいぶん時間がかかってしまったけれど、お陰さまでなんとか本になりました。


独裁者の教養 (星海社新書)独裁王国潜入ルポ講談社



本日刊行。
独裁王国潜入部分は、なんかロマサガっぽいストーリーとなっております。

迷路人はアヘン王国で何を見たのか。
気になった方はお近くの書店にどうぞ! 




『KINBRICKS NOW』管理人(Chinanews)×迷路人対談 後編

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前篇に引き続き、
『KINBRICKS NOW』管理人(Chinanews)との対談。

それでは、後半にどうぞ。





――――――――――――――――――――――――

■どうしてこんな内容に?

C:
『独裁者の教養』の評伝の部分は、
リビアとかカンボジアとかシンガポールとか、各国の現代史がわかっていいよね。
ところで、ニヤゾフみたいにマイナーな人も収録しているけど、
ムッソリーニや金日成はないよね。コラムでは触れていたけど。なんで?

  *サパルムラト・ニヤゾフ……トルクメニスタン初代大統領。

安田:
単純に分量の問題がひとつ。
あと、本文でヒトラー・スターリン・毛沢東と古典的独裁者の「ビッグ3」を紹介してしまったので、
ムッソリーニを入れると古い話が多すぎると思ったんです。

ほか、金日成は若いころに何をやったのか正確な情報を見つけるのがおそろしく大変でボツ。
キューバのカストロはカダフィと微妙にキャラがかぶる気がして泣く泣くボツ。
ルーマニアのチャウシェスクは、共産圏の指導者が増えすぎるのでボツ。

ちなみに、本文で紹介しているトルクメニスタンのニヤゾフ大統領は
自分のなかではボツ候補だったんですが、
完成原稿を読んでくれた人はみんな「ニヤゾフの記事がおもしろい」って言う。
こちらは結果オーライかも(笑)。

C:
他に、本文に入れたかった独裁者はいる?

安田:
中華民国の蒋介石と韓国の朴正煕は入れたかった。
こういう、硬い系の軍人のオヤジって好きなんですよ(笑)。

特に蒋介石は参考資料の下読みまでやっていて、
本の分量をあと50ページ増やしていいのであれば入れていました。
いつか、台湾の本でも書くことがあれば反映したいけど、機会あるかなあ……?

C:
ぶっちゃけ1万数千字で、
独裁者の面白すぎる人生をまとめるのって、きつかったと思うんだけど。どうだった?
あと、独裁者の皆さんを公正に評論しているけど、好き嫌いとかある?お気に入りは?

安田:
大変だった。当初は副担当の平林に「各人物5000字くらいにまとめろ」と言われていて、
それを5000字にまとめようとしたら、各人物の評伝の文字数が1万数千字になった(笑)。

ちなみに独裁者の好き嫌いだけれど、
書いてるうちに「あー、こいつにも事情があったんだよね」となってしまって、
嫌いな人はいないです。

個人的なお気に入りは毛沢東とリー・クアンユー。
ある意味で、この2人は「デキる中国人」のネガだと思う。
ここに蒋介石総統も入れてあげたかったのだけど……。

 

■なぜ「ワ州」を選んだのか?

C:
ところで、なんで「ワ州」なんて無名の地域を取材対象に選んだの?
「潜入してくる」と言われた時、本気で心配したんだけど。

安田:
中国語が通じるから大丈夫だろうと思った。
仮にこれが北朝鮮やジンバブエだったら、トラブルが起きた時に解決できる言語がないもの。

本来、他の日本人にとっては中国語とワ語が公用語であるワ州だって、
ジンバブエと同じくらい「言葉が通じない場所」なんだけど、
俺は中国語はいちおう問題ないのだし。
自分がいちばん大きなアドバンテージを持って取材できるのがワ州だった。

C:
なるほど。

安田:
あと、詳しくは『独裁者の教養』の本文で触れているけれど、
ワ州って文化大革命当時の紅衛兵の残党と中国・ミャンマー国境の少数民族が作った
「中国のパクリ国家」なんですよ。
「主席」がいて、「党中央」があって「人民大会堂」がある。

中国ウォッチャーとしては政治体制をすごく理解しやすかったし、
「本家」の中国を知っているからこその面白味もあった。
だから、現場を見たいと思った。

C:
作中で「ありえねー!おまえ、ノンフィクションの神様がついてるんじゃないか!?」っていう
編集者の言葉があったけど、マジで出来すぎの展開もあったような気がするんだけど? 
どこまでが脚色でどこまでが本当?

安田:
本文中に写真がたくさん挿入されていることからもわかるように、
基本的な登場人物や出来事なんかはほぼ事実。
ワ州密航記の中盤で、本当に「ありえねー!」な事態が起こるのだけれど(笑)、
あれもノンフィクション。
完全にフィクションなのは、登場人物の名前や固有名詞を仮名にしたことぐらいかも。



■ワ州取材だけの本にしなかった理由

C:
ワ州密航記が全体の3分の1以上という結構なボリュームなんだけど、
これだけで一冊分を書けたんじゃない?

安田:
間違いなく書けた。でも、そうしたくなかった。

C:
どうして?

安田:
ワ州密航記は……、自分で言うのもなんだけど面白いし、サクサク読めると思う。
でも、これだけで本にしちゃうと「軽すぎる」と思うんですよ。

結果、読者の人たちはもちろん、出版社やテレビ局の視点で見ても、
安田峰俊はAVとかオタクの話題を喋らせて
使い捨てで消費される「中国ネットウォッチャー」から、
危険な場所に送り出して使い捨てで消費される
「中国現地突撃ライター」にクラスチェンジするだけ。
俺自身の立ち位置はちっとも上がらない。

ここはちゃんと、
「安田はその気になればちゃんと文献を渉猟して重い内容も書けます」
というアピールが必要だった。

C:
もっと息が長い仕事をするために?

安田:
うん。
でも、自分でこう言うのは欺瞞かもしれないけれど、
世の中のためにもちょっとは必要かもなーと。
いま、小説以外のジャンルで若い物書きってかなり少ないじゃないですか。
でも、いくら出版産業がドン詰まりでも、今後も一定の需要はあるはず。
なのにノンフィクションの書き手が誰もいない。

ここで、ごく少数の例外である俺まで、
二冊目のこの本みたいに、
なんとなく薄っぺらくて安っぽいことだけを書く仕事をやって一瞬で消費されちゃったら、
これから10年後とか20年後の人たちは何を読めばいいんですかと。
俺は数十年後もそんな人たちを読者に想定して本を出していたいから、
いまマジメなことも書いておこうと思った。
……って、あれ? やっぱり私欲です、すいません(笑)。

C:
いやいや(笑)。でも、マジメに書かれている評伝の部分もかなり面白いよ。
繰り返しになるけど、頭っから今までの安田さんとは
全然イメージ違うような本になっていると思う。
でも、特にラストはかなり攻めていると思うんだけど(笑)。なんでだろう?

安田:
なんでだろう(笑)? 
あの内容って、独裁者評伝のオーラスになっているカダフィの取材を始めるまで、
自分の頭のなかにまったくなかったんですよ。

カダフィの原稿を書く過程で、
日本で2011年2月に反カダフィ・デモを主催したスレイマン・アーデルさんという
当時23歳の若い在日リビア人に会ったんだけど、
それで「革命」って何だろうと考えはじめたのがきっかけになったかもしれない。

C:
いきなり思いついた割には、
ラストの部分で一気に伏線が回収されているみたいにも見えるけど。

安田:
ラスト部分を書く際に、俺はそもそもなんでワ州に行ったんだろうとか、
なんで独裁者の姿から「成功」を考えてみようと思ったんだとか、
「正義」とか「革命」って何だろうとか、
現時点での自分なりの答えが見えた気がして一気に書いちゃったんですよ。

打ち合わせ段階では、編集者の柿内さんからも平林からも
「それ、あんまし要らなくね?」とか言われたんですが、
「これは頼むから書かせろ」と言って。

C:
なるほど。実は最初に読んだ時、
ラストはちょっと「攻めすぎ」じゃないかとも思っていたんだよね。
繰り返し言ってきたけど、「詰め込みすぎなぐらい濃い本」なのに、
最後にまた新しい展開が入るわけだから。

安田:
そうかも(笑)。
ちなみに刊行前に『独裁者の教養』を読んだある人によると、
「ベテランの作家ならラストの部分は書かないで、
 伏線部分はそのまま、カダフィを最終章にしてキレイに終わらせる」らしい。
確かに、『中国人の本音』コンプレックスから自分の過去のイライラまで、
ラスト数ページでいきなり書いた。

なんというか、
シベリア超特急』のラストで水野晴郎がKYになって一人で喋りまくるみたいな、
そんな終わり方になったかもしれない(笑)。
もっとも、それも他の部分のマトモな記述があってこそのご愛嬌ということで。

C:
なるほどね(笑)。
いや実はさ、インタビュー前に読み返してみたら
ラストは「あり」なんじゃないのかなと印象が変わったんだよね。
今回の話を聞いて、「このラストじゃなきゃダメだ」ぐらいに確信が深まったけど(笑)。

『独裁者の教養』は「独裁者は若いころにどんな経験(=教養)を積んでいたのか」を伝え、
「独裁下で生きる人民の生活の体験記」であり、
そして安田峰俊の挑戦の書でもあるわけじゃない。

過去の自分や今の環境といった個人的な問題から、
日本社会という大きな問題にまで今の気持ちをがつんとぶつけた一冊。
安田さんの作家としての力量から人間性まで総動員したっていう意味で、
本当の意味で勝負作なんだってよく分かった。
今日はありがとうございました。

安田:
いえいえ。また飲みましょう(笑)。




独裁者の教養 (星海社新書)クリエーター情報なし講談社




――――――――――――――――――――――――






とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております――。





って、そうだ。もういっこ話があるのだ。
10月26日(って、今日じゃないかw)、『「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む』の百元籠羊さんと、
秋葉原の東京国際アニメ祭2011秋で一緒にしゃべります(16:30〜17:45)。

事前登録はもう終了しているようなのだけど、
当日に来て手続きすればいけるはず。
平日でアレなのだけれど、都内在住で午後に時間がある人は、ぜひどうぞ。




それでは、会える方は本日午後にまた。



『KINBRICKS NOW』管理人(Chinanews)×迷路人対談 前篇

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このブログを見ているくらいの人は、
おそらく多くがその名を知っているであろう、
アジア情報ニュースサイト『KINBRICKS NOW』。

独裁者の教養』刊行記念で、
あちらの管理人(もともと知り合い)のChinanews氏と対談してみた。

元記事はすでに『KINBRICKS NOW』に載っているのだけれど、
未読の方やコメ欄で意見を書いてみたい方用に、こちらにも転載してみたい。



2010年4月に出た、第一作目『中国人の本音』(講談社)。
メディア関係者やら出版関係者やら中国関係者やらの評判はそれなりによく、
事実、一冊の本としてなんとなくまとまってはいた。
それまでフリーターみたいなもんだった自分が、
とりあえず中国を仕事にしてご飯を食べられているのも、この本のおかげ。

だが、すでに何人かから似たような感想をもらっているのだけれど、
『大陸浪人のススメ』を昔から読んでいる人のなかには、
「なんかつまんねー」「ぶっちゃけ、ブログの方が面白いじゃん」
といった意見が少なからずあったことも事実なのだ。
(心当たりがある人は挙手)


で、これはもちろん自分でも薄々気付いてはいた。
そんなこんなでどうしたらいいかしらと試行錯誤してたら、
『中国人の本音』からずいぶん時間が経っていた。

で、今回の『独裁者の教養』。
上記の問題にピリオドを打つのが隠れた目的だったりしたのだけれど、
そんな話をChinanews とやってみた。
転載とはいえ、やっぱり自分の本拠地での報告義務はある。


というわけで、どうぞご覧ください。





――――――――――――――――――――――――
【29歳の「中国ネットウォッチャー」がなぜ独裁王国に潜入したのか?
 安田峰俊『独裁者の教養』出版記念インタビュー】
ttp://kinbricksnow.com/archives/51751258.html

■『独裁者の教養』ができるまで

Chinanews(以下、C):
今さらですが、インタビューをサイトに乗せる予定なので、今回の本の概要を教えて。
なんでまた、”中国ネットウォッチャー”の安田氏が「独裁者」なんて濃いテーマを選んだの?

安田:
本のコンセプトは「独裁者は若いころにどんな経験(=教養)を積んでいたのか」です。
独裁者って、そりゃあ傍目から見れば「悪いヤツ」に違いない。
でも、彼らって国家と人民を完璧に支配することに成功したわけで、
ある意味で「男の夢」を叶えた人たちじゃないですか。

そうなりたいとは絶対に思わないけれど、
人民が声をそろえて称賛してくれて、
自分の著作をみんなが読んでくれるなんて、ちょっと「羨ましいよね」と(笑)。

C:
確かに。日本全国の1億3000万人が感動の涙を滂沱と流しながら、
僕の『KINBRICKS NOW』を読んでくれたりしたら、ちょっと胸が熱くなりますね。
どんな世の中だよ! って感じだけど(笑)。

安田:
でしょ? 
そんな「男の夢」を叶えてしまった独裁者って、やはり物凄いヤツらであることは間違いない。
じゃあ、彼らは若いころにどんな下積み人生を送っていたのか――? 
そんな疑問を持ったのが、今回の本を書こうとしたきっかけなんです。

C:
そういうことなんだね。

安田:
結果、ヒトラーや毛沢東・カダフィあたりの有名どころから、
トルクメニスタンの「ニヤゾフ」っていうマニアックな人まで、
8人の独裁者たちの若き日をマジメに調べてみることにした。
でも、同時に「独裁者に支配される人たちは何を考えて彼らに従っているんだろう?」
という疑問が芽生えてきて――。

だからそれを検証するために、
リアルな独裁政権である謎のアヘン軍閥「ワ州」に密航潜入してみることにした。

  *ワ州……ミャンマー・シャン州東部の中国国境沿いに位置する、半独立化した独裁政権。
         共産ゲリラ崩れのワ州連合党の「主席」鮑有祥によって統治されている。
         公用語はワ語と中国語で、「国内」では中国の人民元が流通。
         有史以来、足を踏み入れた日本人はおそらく数十人以下だと思われる。写真は前回の記事も参照。

C:
なるほど、辻褄は合う……。
って、発想の過程はわかるけど、
その結果として何で「そうだ、アヘン軍閥行こう」って答えが出てくるの!
「そうだ、京都行こう」じゃないんだから(笑)。

安田:
うん(笑)。確かに「変」なんだけど、そんな変な発想が出てくる自分を大事にしたかった。
で、今後もそんな変なことを考えられる自分でいるためには、
実際に「変なこと」をやって結果を出すしかないと思った。

もちろん、単純にワ州にも行ってみたかった。
15年前に辺境ライターの高野秀行さんが『アヘン王国潜入記』を書かれて以来、
日本人がほとんど誰も足を踏み入れてない謎の独裁政権なんて、
一度自分の目で見てみたいと思うでしょ?

あと……、他にも理由はあるんだけれど、それはインタビューの最後に話しましょう。

  *高野秀行……辺境ライター。1995年にワ州に長期潜入し、現地の村人とともにアヘンを栽培。
             代表作に『アヘン王国潜入記』『西南シルクロードは密林に消える』など。



■異常に「攻めている」本を書いた理由

C:
それにしても、今までと随分毛色が違う本になったよね。
やっぱり、今年春の「ジャスミン革命」とかリビアの情勢がきっかけ?

安田:
それ、よく尋ねられるんだけど、実は全然違うんです。
実は企画そのものは去年(2010年)の秋からあって、
本文を書いてるうちに中東で革命が起きて、
著書刊行直前にカダフィが死んじゃった。ビビったのはむしろ俺だ(笑)。

もともと、そんな時勢の動きとは関係なしに
「10年後になっても色あせない本」を書くのが今回の目標でした。

C:
本の内容でいえば、
著者紹介と第1章(ワ州密航記パート1)から始まる
自分を出した構成にまずびっくりしたけど、
プラス、カダフィをはじめ独裁者たちのマジメな評伝。
伝記1冊でもおさまらないような濃いメンツをずらり8人並べて、結構みっちり書いている。

でもって、ラストに日本論を持ってくる。
「俺はこんなことも出来る!」っていう
持てる技術を全部突っ込んだという印象があった(笑)。

安田:
まったくその通りで、仕事としてのコスト概念を無視して作った部分がある。
けっこう大人気ない本かも(笑)。

ところで、刊行前に『ファウスト』の編集長の太田克史さんから
『独裁者の教養』の読後感想をいただいたんだけど、安田の特性が三つ感じられるらしい。
「闇・沢木耕太郎」みたいな冒険ライターの部分と、
そこそこアカデミックな「歴史学徒」の部分と、
なんというか「国士」とか「壮士」みたいな部分をそれぞれ感じるんですと(笑)。

  *太田克史……講談社の文芸誌『ファウスト』編集長。星海社副社長。
             2011年5月、第3回ファウスト賞応募者へのユニークな論評がネット上で話題になった。
             参考:第3回ファウスト賞の編集コメント辛辣すぎワロタwwwwww(ハム速、2011年5月6日)

             ちなみに思いっきり手前味噌なんだが、
             今回の本は上記スレで並み居るラノベ作家志望者をバサバサ斬っている太田さんに
             「『独裁者の教養』はおもしろかった。売れるかどうかは知んねーけどww」と言わせた本ではあるのだ。

C:
「闇・沢木」と「歴史学徒」と「国士・壮士」か(笑)。正しい指摘のような気がする。
それって、昔から『大陸浪人のススメ』を読んでる人ならしっくりくるよね。
でも、過去の著作の『中国人の本音』(講談社)から
安田さんを知った人には、すごく違和感がある姿じゃない?

安田:
だと思う。ちなみに『中国人の本音』って、
有名編集者の堀田純司さんが執筆段階で担当してくれたお蔭で、
すごくきれいな内容にまとまったし、中国情報としても良い本だったと思うんだけど、
「著者の意見」はあんまり無いんですよ。
紙の媒体で書くのが初めてのブロガーが、何をどう書けばいいのかわからないまま、
序論から結論まで堀田さんにおんぶされてゴールに連れて行ってもらった感がある。

もちろん、当時の自分の実力では
編集者に思い切り助けてもらわなきゃ1冊の本は書けなかった。
でも、完成した本からは著者自身の姿はあまり見えてこないし、
アクがなくてノッペラボーな印象もあったのも事実なんです。
ある意味で自動筆記状態でできた本というか。

  *堀田純司……作家。フリー編集者。2005年、93万部のベストセラーとなった『生協の白石さん』(講談社)を編集。
             安田峰俊の『中国人の本音』も、執筆段階での編集に携わった。
            作家としての近著は『僕とツンデレとハイデガー』(講談社)。

C:
ずいぶん辛辣な(笑)。でも、それはそれで話題になったじゃないですか?

安田:
だから、それに逆に縛られた感があったんです。

自分のブログでなら自由に好きなことを書いて毒も吐けるんだけど、
品行方正な『中国人の本音』の著者としては、
公の場ではさわやかに微笑みながら「日中の若者の相互理解を(はあと)」とか、
毒にも薬にもならんことを言わなきゃならんと。
話題になった本を書いたんだから、著者としてそれを裏切ってはならんのであると。

そんな制限をなぜか自発的に頭のなかに課していた。
でも、それってぶっちゃけ「超つまんねー」「めっちゃつまんねー」と(笑)。

C:
あー。わかるような。そこに
「ろくに取材もせずにネットの書き込みをパクっただけで本が書ける、
 中国ネットウォッチャー様(笑)って羨ましいよねwww」
みたいな同業者各位からの天の声がガンガンくるわけですね(笑)?

安田:
そう。あと、「君、ブログの文章の方が面白いよね?」とか。
カープの前田智徳じゃないけど「お前に言われんでもわかっとる!」と(笑)。
ただ、それでも「自分は『中国人の本音』での役割を守らなきゃいけないんだ」
とか思ってたわけです。

100%自分の力で作ったわけでもないような本に囚われすぎた。
で、「借り物の力なんか全部捨てちまえ!」と思い切るのに1年以上かかりました。

C:
今回の本で毛色が違ったのって、
「星海社新書」っていう新規レーベルの影響も大きいのかな?
「29歳。が語る 彼らが学んだ正義・思想・革命とは何か?」っていう帯も攻めてたけど。

安田:
レーベルの影響は大きい。
星海社って2010年秋にできたばっかりの講談社の100%子会社なんだけど、
よく言えばベンチャー気質で、悪く言えば変わり者の編集者の隔離施設みたいな場所。

担当編集者の柿内芳文さんが
「なんぼでも時間かけていい。なんぼでも骨は拾ってあげる。納得するまで自由に書いていい」
という非常に大らかな方針で(笑)。
だから、じっくりと自分のなかの『中国人の本音』の呪縛を破壊することができた。
帯の文章も、原稿を書き上げてからアイディアの部分は自分で出しました。

  *柿内芳文……編集者。光文社新書編集部での勤務を経て現在は星海社新書編集長。
             光文社時代には164万部を売り上げた『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』などヒット作のプロデュースに携わる。
              移籍先の星海社新書でも、編集した『武器としての決断思考』が現在15万部突破のヒット中。
              Twitterアカウント:@kakkyoshifumi

C:
安田峰俊はゆとり教育でもっと伸びる子だったと(笑)。

安田:
あと、副担当編集者だった平林緑萌が、
安田の大学1年当時からの同級生(立命館大学東洋史専攻)だったのも非常に大きい。

そもそも、学生時代から俺を知ってなきゃ、
薄っぺらい「中国ネットウォッチャー」なんていう肩書を持ってる安田の得意分野が、
歴史学だなんて誰も思わないはず。
この点で、平林は自分にとって、どんな名編集者よりもベストな編集者でした。



――――――――――――――――――――――――




後半に続く。





ベンガルとかバングラデシュの写真を淡々とうpする その1

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独裁者にも中国にもなんにも関係ないんだが、
前回「雲南省のド田舎の写真を淡々とうpする」をやったら
意外と好評だったため、掲示板翻訳はお休みして
もういちどうpシリーズをやってみたい。

ここでお庫出ししてみるのは、インド(コルカタ近辺)とバングラデシュ。
行ったのは2008年3月とちょっと前の話だが、
ここらへんの場所が数年でそう大きく変わることもあるまい。
では、ご覧ください。





――――――――――――――――――――――――

<1.コルカタ市街地>
西ベンガル州の州都にしてインド第三の大都市。
日本では「カルカッタ」の名で知られる。
ジョジョ第三部でJ.ガイルとホル・ホースが出てきた街でもある。
実はこんな場所だったのだ。


 
  ナコーダ・モスク前。このオヤジは煙草を吸うと鼻の頭に血管が浮き出る。

 
  『深夜特急』第3巻にも出てくる、サダル・ストリートの救世軍宿舎。
  ええ、泊まりましたとも。
  ドミトリーの隣のベッドが白人の姉ちゃんで、おっぱいが見られて嬉しかった記憶がある。

 
  公衆トイレ前。

 
  ふたたびナコーダ・モスク前。ムスリム商店。

 
  ポーズをとるおやじ。

 
  スタンド使い多し。
  戦ったらたぶん右のやつの方が強い。両手使えるから。


 
<2.コルカタ。ちょっと変わった場所>

 
  マザー・テレサの教会。

 
  歩くシスター。前に見える赤いのは……。

 
  インド共産党マルクス主義派の宣伝物でした。
  ベンガル地方は印共の勢力が強いらしい。
  印共は印共でいろんな派閥があるみたいだが、
  ここではウィキペディアの記事を貼っておくにとどめようか。

 
  インドに唯一という、コルカタのチャイナタウン。
  住んでいるのは客家が多く、英国植民地時代に広東から渡ってきたらしい。

 
  インドにいる関羽。

 
  チャイナタウン……とはいえ、街路にはインド人多し。
  野良犬もめちゃいる。
  写真はないが、華僑系学校も見つけた。

 
  写真が荒くてすまないが、地元の中国系住民。
  客家語で自己紹介すると喜ばれる。

  もともと、インド人は中国人がめちゃくちゃ嫌いであり、
  過去には華僑迫害の歴史もあったようなのだが、
  「インド? なかなか住みやすいよ」「息子は台湾の大学にやってる」
  と、現地の客家のおばはんと話しているとユルい答えが返ってくる。



<3.バングラデシュ国境(ベナポール)への道>



国境の街は、インド側がハリダスプール、バングラ側がベナポールという。
コルカタからは電車か長距離バスで向かう。
バンコクからアランヤプラテート経由でカンボジアに入国するのと、
いろいろ感覚が近いような気がした。

 
  中央奥の電車に乗ります。

 
  ベンガルの車窓から。
  インドも東部の方だと、自然の面ではちょっと東南アジアに近い気がする。
  最東部まで行けば、住民も含めてすっかり東南アジアらしいが。

 
  国境駅。

 
  降りた先がいきなりイミグレーションというわけではなく、
  サイクルリキシャーに乗って結構長く移動した記憶がある。

 
  ここでインド出国のハンコを押してもらう。

 
  この幼稚園の校門みたいなのの向こう(正確には鉄柵の向こう)がバングラデシュ。
  国境って何だろう。



<4.クシュティア>


  ↑このへん……。

インド国境からバスで数時間東に向かった先にある街。
ポッダ河(ガンジス河の下流)のほど近くにある。

 
  国境から走るバスの車窓から。
  なんとなく、自然風物とか建物がカンボジアに似てる気がするんだよな。

 
  夕方になってクシュティアに到着。

 
  翌日朝。ガンジスの支流のゴライ河を見に行くことにした。

 
  河に水を汲みに行くんだろうか。

 
  河畔に来た。
  ちなみにインドやバングラデシュの女性の服装は、
  未婚だとパンジャービードレス(ズボン履き)ですが既婚だとこうなります。


 
  ゴライ河!(干からびてます)


  かっけえ。

 
  人々の列はこんな感じで伸びていく。
  日本人の日常感覚だともはや理解しづらいのだが、
  ほんらい、鉄橋とかトンネルとか鉄道とかがあるという事実は実は非常に凄いことである。
  それらがないと人間の移動や物流がおそろしく滞ってしまい、
  「越すに越されぬ大井川」とか「箱根の山は天下の険」みたいに、
  山や河をひとつ越えるのが極めて大変だったりするのだ。

  ラオスやネパールの山奥に日本が掘ったトンネルが通ってたり、
  バングラデシュやカンボジアの大河に日本の橋が架かってたりするのは、
  実は地元の人にはかなり感謝されていたりする。



 
  ラロン・マジャル。
  ベンガルの著名な宗教詩人(バウル)だったラロン・シャハの墓。

  (俺はムスリムじゃないので間違った説明になっているかもしれないのを承知で言えば)
  偶像の崇拝を厳しく禁じた厳格な一神教・イスラームではあるが、
  地域のお地蔵さんや天神様みたいなムードで、
  亡くなった聖者の墓が地域信仰の場になることは決して少なくない。
  特にベンガルには、こういう聖者廟がとても多いようなのである。

 
  バウル。RPGっぽくジョブ設定すれば吟遊詩人。
  こういう人たちはリアルにいるのだ。
  しかも、観光用じゃなくもっぱら地域住民向けに歌ってるようなのが。

 
  クシュティアの市街地。
  市内の移動にバイクや自動車なんていらねえ、という男らしい街。

 
  バスに乗って北のボグラの街に向かう。
  車窓からガンジス河。





――――――――――――――――――――――――






……画像を貼り出したら楽しくなってきたので、後半に続く。
世界はとても広いのだ。





独裁者の教養 (星海社新書)安田峰俊講談社

↑というわけで、世界史の教科書を…。

ベンガルとかバングラデシュの写真を淡々とうpする その2

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前回に引き続き、独裁者とも中国ともあんまり関係ない淡々とうpシリーズ。
今回はまことにレアな、バングラデシュの世界文化遺産なんかが登場するのだ。
日時は2008年3月。


では、ご覧ください。





――――――――――――――――――――――――

<5.ボグラ>

 
  ↑このへん……。

バングラデシュ北部に位置する古都。
それなりに発展しており、きれいなホテルなんかもある。

もっとも、世界遺産の玄関口にある街の割には、
地元の人たちはあんまり外国人慣れしていない(というか、この国のみなさん全体がそう)。

 
  朝の街を散歩する。バングラデシュでも春はあけぼの。

 
  やうやう白くなりゆく……。

 
  西條秀樹がベンガルで妖怪化するとこうなる。

 
  スター多し。

 
  おしゃれなデザインのチャイ屋の隣で新聞を読む兵士。
  このあと、チャイ屋と兵士が俺に気付き、
  「うおおおお! ガイジンだあああ!!」と騒ぎだす。

 
  3分後。
  兵士が「おい、ガイジンだー!!」と通りがかりの人間を次から次へと召喚し、
  むりやり記念撮影をさせられる。
  世界で最も人口密度が高い国に住む、とても物見高い人たち。

 
  旧市街。奥にあるのはイスラームのモスクの尖塔。

 
  ヒンドゥー教徒もいる。
  バングラデシュ、人口の16%がヒンドゥーだ。

 
 
<6.モハスタン>

 
  ↑8〜10世紀ごろのインド三国志の様子。紫色の「PALAS」というのがパーラ朝である。

ボグラから自動車で50分ほど走った場所にある遺跡の村。
8世紀から12世紀にかけてベンガルとインド亜大陸北東部を支配した
パーラ朝の支配下にあり、当時は「プンドラナガラ」という名の中都市だったという。

この時期、インド全体においては仏教は衰退傾向にあったが、
北東部において強勢を誇ったパーラ朝は仏教を保護していたため、
歴史時代のインド仏教の最期の輝きとして、巨大遺跡が残ることになった。

だが、王朝の滅亡後、ベンガルはやがて13世紀〜14世紀にイスラーム化。
遺跡は近年まで歴史の闇に埋もれることとなる。


 
  現地に残るパーラ朝の城塞跡。
  城春にして草木深く……、なるまえに牛さんが草を食ってしまう。

 
  遺跡よりも農村ウォッチングが楽しい。
  ……いや、よく考えたら20年くらい前の
  滋賀県蒲生町も似たようなもんだった気がするけれど。

 
  バングラデシュのリア充とリア牛。

 
  こんな感じで砦が残る。 

 
  サイクルリキシャーで移動してたらこんな人たちに出会う。
  俺に気付いた右側のゴンザレス氏(仮名)が、
  例によって「うおおお! ガイジンきたあああ!」とエキサイトしはじめた。

 
  「ところで俺の小魚を見てくれ。こいつをどう思う?」と
  移動中の大八車の荷台で、突然その男は水瓶のフタを外し始めたのだ…!

  この後、大八車がバランスを崩して、小魚を農道に思い切りぶちまけてしまい、
  みんなで「あばばばばb」と言いながら車を停めて魚を拾うことになる。
  ここまでユルくたって、人間はその気になればけっこう幸せに生きられます。

 
  リクシャーの車上から撮った、地元の人たち。
  もうすぐ、モハスタンのハイライトであるバショルゴール仏教遺跡。

 
  バショルゴール遺跡。7世紀のラクシンダル・メドゥ寺院の跡。
  「これ見たわー。20年くらい前に奈良県に遠足で行って見たわー」とか言ってはいけない。

 
  「見たわー。やっぱ遠足だわー」。



<7.パハルプール>

 
  ↑めずらしくしっかりした地図がある。

8〜9世紀、パーラ朝の盛期に建立された大規模な僧院跡。
この僧院の建築様式は、ミャンマーのバガン遺跡群、インドネシアのロロジョングラン寺院
カンボジアのアンコールワットにも影響を与えたといい、
ヴィジュアル系バンドでいうとBOØWYとかX JAPANみたいな凄い場所だ。
興味がある人はウィキペディアとかユネスコのページも見てみよう。

 
  草むしりの少年がいたので撮る。

 
  やぎ。代打を終えてベンチに帰る。


  でけえ。


世界文化遺産登録は1985年。
近年(2000年代以降)に登録された世界遺産は、
五輪やW杯の開催地やノーベル平和賞なみに選定基準がうさんくさいものも結構あるんだが、
80年代に認定されている世界遺産はガチですごいのである。

 
  休み中。

 
  インド仏教末期の文化を反映するテラコッタ(壁面彫刻)。

 
  見学中。

 
  街へ戻るバス。強制座席破壊。

 
  ボグラの街に帰った。
  海外に行くと一日の密度が濃くていいのだけれど、
  いまはなかなか中国以外の国に行けないんだよなあ……。





――――――――――――――――――――――――






……というわけで相変わらず世界は広いのだ。
次回、ダッカを紹介して、バングラデシュのうpするシリーズはひとまずおしまいの予定。










独裁者の教養 (星海社新書)

安田峰俊

講談社



↑ところで奥様。世界史の教科書がいま熱いらしいですわよ?


ベンガルとかバングラデシュの写真を淡々とうpする 最終

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前々回前回のバングラデシュシリーズ最終。
前フリなしでいってみましょう。




――――――――――――――――――――――――

<8.ダッカ>



いうまでもなくバングラデシュの首都。
人口は1464万人で東京都よりも100万人多いうえ、
人口密度は約2万3000人/平方km(ちなみに東京都は約6000人/平方km)。
おそろしい人口過密状態だが、都市インフラはまだまだ微妙。
そんな街をご覧あれ。

 
 
  くだもの屋。

 
  うりがでかい。

 
  馬車現役。RPGの中ボスくらいで出てきて二回攻撃をやるタイプに違いない。

 
  ウォーリーを探せ。

 
  ダッカ旧市街。

 
  リアル井戸端会議。

 
  ドナドナ的な何かではなく、自転車スクールバス。そういうものがあるのだ。

 
  二人で声を合わせて「やったあフルハウスだ」とか言いそう。特に左の何か食ってるおやじ。

 
  バングラデシュでも携帯電話は普及する。

 
  カメレオンマン×1 あばれこまいぬ×5。

 
  ブリコンガ川沿いにある港に行く。

 
  バンダナファッションが似合う稀有な例。

 

<9.ショナルガオ>

ダッカの東南25キロの場所にある場所。
ショナルガオとは「黄金の都」という意味らしい。

17世紀初めにムガール帝国がベンガルの中心地をダッカに据えるまで、
この地方の旧都だった。
関東でいうと鎌倉とかそんな感じの場所。

 
  地元のバスに乗っていく。

 
  かつて領主の館だったという。

 
  もの売りの女の子。左後ろに人がいるのが惜しい。

 
  過去には裕福なヒンドゥー商人たちが住んでいた一角らしいが、
  1947年の印パ分離(当時のバングラデシュは東パキスタン)の際に、
  商人たちは東ベンガルのイスラム教国化を嫌って亡命。
  現在は廃墟になっている。

 
  廃墟マニア垂涎の物件が大量に。

 
  廃墟郊外は農村地帯。

 
  沐浴するベンガルのおばはん。あんまりうれしくない。

 
  ゴアルディ・モスジット。
  1519年に建てられたモスジット(モスク)で、ムガール帝国成立前の建築物の遺構。
  森に埋もれており、人影まばら。

 
  むしろ人間がいるとびびる。
  ここらへんでデジカメが壊れてしまい、画素が妙に粗くなる。



<おまけ.ダッカ市内>

 
  パキスタンからの独立を喜ぶバングラデシュ人民の図。
  右端で旗を持ってる兄ちゃんのやる気のなさが半端ない。
  あと、左端のパックマンみたいな顔の姉ちゃんはすでに人間ではない。

 
  ラーホバレゴールド。

 
  ダッカ駅。はやく逃げろ牛。 







――――――――――――――――――――――――






こんな感じで、しばらく紹介してみたバングラデシュ。
次回からは、中国の話に戻ります。
少数民族ネタをやりたいんだがな……。






独裁者の教養 (星海社新書)

安田峰俊

講談社





湖南省の山奥の小学校が『おしん』状態→中国ネット民「かわいそうだ」「いや、俺がガキの頃だって…」

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先日、『独裁者の教養』の刊行前に
ツイッターでだらだら宣伝を流していたのをまとめてくれていた方がいらして、
そちらから「少数民族ネタでやってください!」とリクエストいただく。

最初はチベットだのウイグルだのを探していたものの、
一昔前と違って規制が厳しくてなかなか漢語の掲示板が引っかからないし、
たまに引っ掛かるものがあっても、記事にしたいほど面白い内容がない。

なので、「苗族(ミャオ族)」で検索してみたところ、
個人的に興味深い動画を見つけたのだ。




今回の場所は、
湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州鳳凰県禾庫鎮にある某小学校。
この場所は貴州省・重慶市(旧.四川省)・湖南省の三省境界地点に位置する
交通が至極不便な山岳地帯で、中華民国時代までは山賊の巣のような場所であったという。

けっこう前の記事に登場した、
大中華佛国とか中原皇清国とか、謎のインディーズ皇帝が活躍したのも、
きっとこんな感じの場所だったのであろう。


  


そんな湘西トゥチャ族ミャオ族自治州鳳凰県禾庫鎮で
中国で近年流行している「拍客(趣味の動画撮影)」で撮られた
2歳の弟を背負って学校に通う苗族の女の子の姿の動画が興味深い。

(趣味の撮影とはいえ、めちゃくちゃ動画のレベルが高い。
 いまはその気になれば、こういうジャーナリズムが個人でできる時代でもあるのだ)

以下に、動画とそれへのコメントを紹介していこう。





――――――――――――――――――――――――
【ミャオ族の9歳の女の子が弟を背負って学校に】
原題「視頻: 【拍客】實拍苗族九?女生帶弟上課 哄弟弟嫻熟如媽媽」 
youku「生活資訊」 2011/10/25

元動画はこちら↓
http://v.youku.com/v_show/id_XMzE1ODkyMjcy.html

 
  チャイムの代わりに鉄棒をカンカン叩く。

 
  教室の天井。

 
  2歳の弟を連れて学校に通う、ミャオ族の麻珍妹ちゃん。

 
  子どもをあやしながら授業。

 
  背負ってあやしていたら寝てくれたので、授業に集中できる。

 
  実は、麻ちゃんみたいな児童は、この学校では珍しくない。

 
  学校の年季が入った黒板。



1 名無し人民@ようくー(zxzgm)
赤なんとか十字会とか、そういうのってどこいったん?



2 名無し人民@ようくー(「?相如」)
いや……、泣かないぞ。



3 名無し人民@ようくー(地方2色粉)
こういうのを見てて思うけど、
毎年の「中国のGDP額が!」とかいうアレって、何に使ってるんだろうな。



4 名無し人民@ようくー(蕭蕭好可愛哦)
自分が子どもの頃、
こうやって弟や妹を背負って学校に行く子を見たことがあって
考えさせられるところがあったんだけどさ。

あれから15年も経つってのに、
まだこういうことがあるんだな……。



5 名無し人民@ようくー(泉莫客)
あきらめなよ。
官僚のお父さんお母さんがいなかったのが悪いんだ。



6 名無し人民@ようくー(wsyboss00)
心が重い。
数十年前みたいな光景が現在でもなお残っている。
これって、社会の進歩なんだろうか、
それとも退歩なんだろうか。



7 名無し人民@ようくー(13366075185)
これが中国ってやつさ。
こういう子たちが「祖国の未来を担う」と……。



8 名無し人民@ようくー(leonjlm)
指導者たちの豪勢なメシ1回のカネで、
学校をひとつつくれるかもなあ……。
やれやれ。



9 名無し人民@ようくー(小彬斌杜)
うちの地元もこうだよ。
俺はがんばって、たくさんお金を稼ぐんだ。

誰かお金持ってる人間が、
こういう子たちを助けて学校を修理してあげてくれないかなあ。



10 名無し人民@ようくー(水旁青竹)※ミャオ族
かわいそうな子……。

俺たちミャオ族が現在これほど苦しんでいるのはなぜか、
知る人はきっと少ないのだろうな。
俺たちはずっとこうして落魄して、現在に至っているんだ。

祖先たちの栄光の歴史は埋もれてしまった。
もう返って来ない……。



11 名無し人民@ようくー(5K小飛)
こんな光景が現在もあるなんて信じられない。
うちの母さんは小学校のときに俺のおじさんやおばさんを抱えて、
面倒を見ながら学校に通っていたそうだけど。

あれからずいぶん経ったのに、まだ同じようなことが……。
「祖国は強大にして豊かである」じゃなかったっけか!?



12 名無し人民@ようくー(齊??)
いやいや、我が国は既に豊かだよ。アフリカに小学校を建ててあげるくらいだ。
ところで国内の子どもの現状を見ると……、
俺は何かに憤ってしょうがない。

  参考:アフリカで小学校寄贈、北京では農民工の学校を強制閉鎖 (日経BP)
      中国で“希望工程”と言えば、「貧困児童就学援助プロジェクト」を指し、募金によって貧困地域の学童教育を
     支援する事業を意味し、この事業を通じて建てられた小学校は「希望小学校」と呼ばれる。これをアフリカで展開
     しようというのが“中非希望工程“であり、今後10年以内に総額20億元(約250億円)を投じてアフリカの各国で
     1000校の希望小学校を建設して寄贈するというものである。(引用終わり)



13 名無し人民@ようくー(memexinmeng)
なんと言うべきかなあ。
本当に尊い人間とは善良な人間のことだよな。
でも、いまどきの社会では金持ちだけが尊いんだ……。



14 名無し人民@ようくー(黄海暖流)
アフリカの援助やってる場合じゃねえだろ。



15 名無し人民@ようくー(嘿o烏鴉)
中国国家統計局発表。

吾々ノ収入ハ極メテ高ヒノデアル。
人民ハマコトニ幸福ナノデアル……。



16 名無し人民@ようくー(明ぬ明)
動画の最初に流れる鐘の音がすごく懐かしい。



17 名無し人民@ようくー(文嘉思)
子どもの頃、わたしもお姉ちゃんに背負われて何年か学校に行ったなあ……。



18 名無し人民@ようくー(秋妖無歡)
悲しすぎる!
うちの母もそうやって学校に通ったらしいけれど、
それって1950年代の話だよ……。

きついな。



19 名無し人民@ようくー(kkkk000011)
俺が小学校三年の時までは似たような状況だったな。
でも、あれって1990年代の初め頃の話で、
その後は改善したぞ。



20 名無し人民@ようくー(小女子笑笑)
貧富の差が激しすぎるよ。
国家が強大になったって、民が豊かになるとは限らないんだ。



21 名無し人民@ようくー(215740251)
俺の子どもの頃みたいだなあ。特に、あのスリッパ。
俺が中学に上がる頃になっても、この動画みたいな感じだったよ。

いま、もうじき大学を卒業するんだけどさ。
自分の子どもの頃を考えると、
こういう「苦しい」とされる環境って、別に苦しくもなんともなかったんだよな。
むしろ、現代の(都市部の)社会に対して、
どんどん信じる気持ちを失ってきている。





――――――――――――――――――――――――





どうやら動画への反応は2パターンにわかれるようで、
「こんなのかわいそう!」という、
ほっとけない世界の貧しさ的というか、自国批判的な意見がひとつ。
もうひとつは、そんな貧しさにどこかでノスタルジーを持つような意見だ。

(もっとも、元の書き込みを見ると両者の割合は7:3くらいである。
 あと、「昔はこういう話もあったが、現在も変わらないのか!」と憤る意見も散見されるが、
 そこでいわれる「昔」は1950年代だったり、1990年代だったりするのが面白い)



山奥で変わり者が勝手に皇帝を名乗ったり、
女の子が弟をあやしながらボロボロの学校に通わなきゃいけないけれど、
都市部の近代的懊悩などというものとは
さっぱり無縁な(と、ならざるを得ない)人々が暮らす「停滞した」旧中国と、
就職とか金儲けとか個人の権利とか自由とかいろんな抽象的な問題を考えざるを得ず、
貧しい農村にノスタルジーを覚える奴まで出てくる、「病んだ」現代中国。


こんにちの中国は、こういう面倒くさくて相反する要素が
いっこの国にどちらも同時に存在しているだけに、
いろいろ大変なのであろうと考える次第。




……ところで、俺も地元帰りたいなあ。
(年末に帰るけど)


「新浪微博が実名制になるんだってねえ……」→ユーザーの反応

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長らく更新が空いてしまったのは、
例によってサボっているからでもあるのだけれど、用事で3週間も中国へ行っていたからでもある。
雲南・広東(深セン)・マカオ・上海・北京と巡って、
「中国でかすぎありえねえワロタw」という取材になった。

  


ところで、今回の中国滞在でものすごく困ったのがネットだ。
どうやら今年の夏ごろまでよりも規制が更に厳しくなっているらしく、
Gmailの接続速度がえらい遅いし、Googleで検索自体がおこなえないこともしばしば。
(いっぽう、あまりの遅さにむかついて百度や優酷その他の中国サイトにつなぐと、
 あまりにもあっさりと繋がって拍子抜けしたりするw)


……まあ、とはいえこれは当たり前っちゃあ当たり前のことなのだ。
日本ですらこれだけ「ネットは中国に自由と民主主義をもたらす!」とか
色々その手の言説が本屋にズラズラと並ぶ状況になってしまった現在、
中国共産党様がネットへの管理統制に本腰を入れるのは当然ではある。

もっとも一方で、実は中国の一般的なネットユーザーは、
ツイッターやフェイスブックはもちろん、意外とGmailやアマゾンなんかも使っておらず
かわりに中国国内のサービスを使っているため、
この規制にそれほど大きな不便を感じていない人もそれなりに多くいたりするのも事実だ。

 ツイッター   ⇒ 新浪微博、騰訊微博
 フェイスブック ⇒ 人人網、QQ空間
 ようつべ    ⇒ 優酷、土豆ほか
 Gmail     ⇒ なんぼでもかわりのメールサービスがある
 Google    ⇒ 百度、捜狗
 アマゾン    ⇒ 当当網、タオバオ
 

中国のネット人口は5億人。
といっても、これは日本のネット人口「9900万人」と同じく、
グ●ーとかモ●ゲーの釣りゲームに10万円課金しちゃうアホな中学生とか、
携帯でワ●ワクメールしか使ってないヒャッハーなDQNとか、
孫に一週間に一回だけメールを打つのが楽しみのお婆ちゃんとか、
「店のHP作りました!」とマイドキュメントの場所名を壁に貼っちゃう食堂の店主とか、
そんな感じの(世間の圧倒的多数を占める)膨大なライトユーザーたちを包括した数字であって、
Googleやツイッターが使えなくて本気で困って悲しむような人たちは
ネット人口全体の(おそらく)2〜3割程度かそれ以下でしかない。

一昔前の日本で、少なからぬ人が
Gooとかニフティとかの検索やメールサービスを使っていて、
それはそれで不便を感じていなかったのを思い出してほしい。
現在の中国における「Googleが無い世界で不便を感じない人々」の存在というのも
それなりには想像できるのではあるまいか。

ライトユーザーというのは、
便利な国外サービスよりもわかりやすい国内サービスを使いがちであり、
国外のサービスが使えなくなっても意外と困らないものなのだ。

(余談だが、俺のオカンはいまだにGooで検索しているw)



……だが、だ。
どうやらGoogleやツイッターなどの国外サイトだけではなく、
ライトな人を引き寄せて現在はわが世の春を謳歌している中国国産ウェブサービスの世界にも、
当局の規制の波が押し寄せつつあるらしい。

それが「ミニブログ(微博)実名必須制」である。

中国・北京市、中国版ツイッター「微博」で実名登録を義務化(サーチナ)

  中国・北京市政府は16日、“中国版ツイッター”と呼ばれる短文投稿サイト「微博」(ミニブログ)で実名登録を義務化
すると正式に発表した。即日施行され、ユーザーは3カ月以内に本当の個人情報で登録しなければ「つぶやく」ことができな
くなるという。中国各メディアが同日伝えた。
  北京市政府は16日、「微博の発展管理規定」を公布、即日施行した。「規定」によると、個人もしくは団体ユーザーは住
民登録や法人登録といった本当の身分情報でなければ「微博」アカウント登録ができない。つまり北京市が管轄する新浪ネッ
トや捜狐ネットでは実名登録が必須になる。
  「規定」によると、ユーザーは公布から3カ月以内に北京市インターネット情報内容主管部門に関連手続を申請しなけれ
ばならない。違反者は処罰されるとしている。報道によると、実名登録しなければ発言サービスが利用できなくなる。ただし
閲覧サービスのみ利用する場合は、現在のところ制限はないという。
  中国インターネット情報センター(CNNIC)によると、中国のインターネットユーザーは6月末時点で4億8500万人、
「微博」ユーザーは約2億人。「微博」は急速に普及し、7月に起きた高速鉄道事故のように、ユーザーが事件事故の現場から
情報を発信するなどの“活躍”も多い。
  北京市インターネット情報内容主管部門は、「微博の発展とともにデマや虚偽情報、ネットを利用した詐欺も現れ、公共
の利益を損なっている」とし、「規定」制定の理由を「インターネットの健全な発展を保障するため」だと説明している。
  実名制導入について、中国ネット上ではさっそく物議をかもしている。「発言に責任を持つようになる」と評価する意見
もあるいっぽう、事実上当局による管理強化と受け止め、「ユーザーに孫悟空の緊箍(きんこ)をはめるようなもの」との批
判も出ている。
  また、新浪など「微博」運営企業の業績に大きく影響し株価は下落すると見られている。(編集担当:阪本佳代)



こちらの問題について、
以下に「新浪微博」の利用者たちの反応を見てみることにしよう。






――――――――――――――――――――――――――
【微博の実名制、はじまる】12月16日 15:30
「南都週刊」公式アカウントのツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1641532820/xChsdaXxL

@南都週刊 
【北京市、微博実名制をはじめて推進】
北京市人民政府新聞弁公室・北京市公安局・北京市通信監理局・北京市互聯網信息弁公室は、
本日付で≪北京市微博発展管理若干規定≫を発表。
あらゆる組織と個人が微博のアカウントを作成する際には、
身元を証明しておこなわねばならず、
身元の証明ができない者は、閲覧のみが許可され発言は許されないこと、
各微博サイトは今後三カ月以内にユーザーに対する規定を完成させることを規定した。
http://t.cn/SciyVb



@安徽chaolei (12月16日 17:52)
これはまた、すさまじい影響が出そうだなあ……。



@譚昊TanHao (12月16日 19:02)
これまで、微博は自由な言論の場になれるんじゃないかって願っていた。
そして、微博は長らく圧迫に晒されすぎてきた
中国人の小さな息抜きの窓となっていた。
でも、もしもこの小さな窓ですらも閉じられてしまうとするならば……。
巨大な反発が、予想だにしないような勢いで噴き上がるかもしれない。



@myakb (12月16日 19:08)
(今回の指示を出した)後ろにいる人たちも実名制にしてくれ。



@莫邪xyj (12月16日 19:18)
予測はしていたことだが、ついに始まったな……。



@宦九歌兒 (12月16日 19:27)
やったぜ! これでもう遊ばなくなるよ!

  ※確かに、ソーシャルサービスが無くなった方が仕事の単純な効率は上がるよなw



@FHM占春苗 (12月16日 19:43)
ははは。政策というのは素早く決まるものだねえ。



@shu棠君 (12月16日 19:45)
言論の自由には、
もちろん匿名で言論を発表する自由だって含まれるはずだ。

  ※「実名アカウント以外はブロックします!」とか言ってる、
   ちょっと気持ち悪いツイッターユーザーたちにぜひ聞かせたい言葉w



@無關註無粉絲無微博 (12月16日 19:52)
(偽アカウントを売る)ダフ屋がいい仕事になるだけじゃねえか。
(中国の体制は)まさにこのように各方面でダフ屋に福利厚生を施してあげる体制だよね。

  ※中国はデフォルト設定では行政その他のサービスがよろしくないが、
   ワイロその他人脈背景によって、生活上の問題が日本以上に便利に解決されることもあるのが中国というもの。
   ちなみに今回俺が中国でやった取材でも、「この地域では”殺し”以外は何をやってもフリー」という、
   ものすごすぎる背景を持っている人に会っている。



@小浚子Fucky (12月16日 19:52)
この規定は北京市民に対してのものか、全国の人民に対してのものかどっちだ?
もしも全国の人民に対して課すものだったら、全人代(=中国の国会)はどこに行ったんだ?
全人代の常務委員会はどこへ?
こういうのって、ひとまずは名目上であっても全国組織で決定されるべきものでは?

  ※ここが今回、中国当局のズルいところかもしれない。
   中国だってひとまずは法治国家を自称しているため、こういうことは本来、
   やはり形式的とはいえ国会で法律として決まった上で全国に施行されるべき。
   もしくは(これはすでに民主的なプロセスではないが)少なくとも国家機関が「通達」を送ることで
   民間にそれを順守させるという手順を、最低限踏むべきではあった。

   だが、言論弾圧法案なり通達なりを、国が責任を負う形で議論したり決めたりすると、
   アメリカ様やEU様がお怒りになって面倒くさいし、声の大きいネット民も騒ぐしで面倒だ。
   別にその気になれば中央から通達出したったっていいんだが、より面倒くさくない手法の方がいい。
   そこで、新浪微博の本社が置かれている北京市で、「街の条例」として制定することにしたのだろう。
   本社の運営規定として「実名必須」となれば、ネット実名制は事実上は実現できてしまうからだ。

   ちなみに(意図的になされたものかは別として)似たような事例は日本にもないわけではない。
   日本の出版社の9割が集中してコミケも開催される東京都で「ロリエロ漫画禁止条例」を制定すれば、
   日本国内で流通する漫画の表現を事実上は大きく規制できてしまう……、という困った話は、
   読者各位もどこかで聞いたことがあるのではないだろうか?
    参考:「非実在青少年」(同人用語の基礎知識)http://www.paradisearmy.com/doujin/pasok_hizitsuzai.htm



@Joe胡振邦(12月16日 19:53)
>@軍械所樂隊 絶対に反対だ。非常に憤慨している。
>@劉立新-公民 言論の自由こそ栄誉、ネット実名制の強制は恥だ。
民主主義への距離がまた一歩遠のいたか……。



@小魚愛宸 (12月16日 20:18)
いつも弱者にばっかり刀を振るいやがって……。



@-笨peng蟹- (12月16日 20:33)
官僚の財産は一人として公開されないのに、
ネットの発言は実名必須だとか、なんとも不思議な国もあったもんだ。



@EmbraceTheDarkness (12月16日 21:05)
党の皆さんは俺たちに、
街に出てデモをやってくれって言ってるんだよ。
ネットでガーガー喚くだけなのはやめようぜ、オイ。






――――――――――――――――――――――――――





ふむふむ。
やはり微博上においては不平不満を訴える声が非常に多く出ているのか。


……ところで話が変わって先日。
北京で別件の取材をしていて、
偶然に現在40歳の頭脳労働者(記者とかそこら辺の仕事のサラリーマンだと思われたし)と
一緒にごはんを食べる機会があった。

  


祖母が満洲族だったという彼は生粋の北京っ子であり、
北京の胡同の風情や、肉を食いまくる北方中国人の習慣の素晴らしさを力説していた。

正直、彼とは意気投合した。
ガツガツと飯を食ってビールとタバコをバカバカ開けながら
話をしているうちに、彼はこんなことを語りはじめた。


――――――――――――――――――

北:あのさ、1989年の六四天安門事件な。
  俺は当時は18歳で大学に上がる前だったが、いやー、街に出てガンガンにデモをやったもんだ。
  こうしないと中国は生まれ変わることができない、
  そのためには俺たちが共産党を倒さなきゃ、ってね。

俺:あー、そういうご世代なんですね。なぜ当時はそう考えたんですか?

北:まさにそんな時代だったのさ。
  文革が終わってまだ10年ちょっとくらいで、庶民の生活は貧しい。
  だが、改革開放で官僚やら太子党やらだけが大金持ちになって贅沢をしている。
  社会への不満は現在よりもずっと大きかった。俺たちは貧乏だったからね。

俺:なるほど。

北:あと、時代が時代だよね。当時のソ連や東欧に元気がないのは、俺たちにだってわかった。
  やっぱり社会主義は間違いで、人間を貧乏にするだけなんだ。
  逆にアメリカの価値観は何でも正しいはずなんだ。
  民主主義になれば俺たちも豊かになれるんだぞ、と。
  はは、単純でかわいいもんだろ? あの頃は若かったよなあ。

俺:当時の記録映像を見たことがありますが、やっぱりそんな印象でした。

北:ああ。それで人民解放軍の兵士に散々ぶん殴られてね。 
  6月4日の清場(=天安門事件)があった後には、俺も他の市民もみんな怒っていて、
  大通りを走る解放軍の戦車に石をぶつけていた。
  でも、あの時に石を投げていた連中、前の方にいたやつらは捕まってどこかに連れて行かれたな。
  いまだにわからないんだけれど、あいつらどこに行ったんだろうなあ……。

俺:……。

北:もうね、共産党が憎くて仕方なかったよ。
  庶民に不公平で貧乏な暮らしを強いてきて、それに文句を言ったら「戦車」だ。
  なんて非道い連中なんだってね。
  ……でもな、最近はそうも言えなくなってきた。

俺:言論の引きしめですか?

北:違う、逆だよ。
  中国に民主主義や言論の自由は相変わらずさっぱり無いのだけれど、
  経済改革に成功したことで、俺たちは豊かになれてしまったんだ。
  そりゃあ貧富の格差は非常に大きいし、社会問題は多いけれど、
  天安門の時よりも社会が格段に良くなっていることも確かではある。
  民主主義じゃないのに、俺たちは豊かになれてしまった。

俺:北京の街を見ていると説得力がありますね。10年前と比べるとすごい変化だ。

北:そうさ。民主主義体制の下で現在のような経済建設ができたか? 
  都市を発展させられたか? 14億人にとりあえずメシを食わせる政治を実現できたか? 
  それができた日本や台湾は幸せだよ。
  でも中国大陸において、そんなことはやっぱり無理だったと思うんだ。
  そして、中国共産党は経済発展を成し遂げて「功績を作ってしまった」。
  その功績もまた決して小さくないんだよ。

俺:自分たちの生活を良くするために、民主主義は絶対の条件ではなかった。

北:……ああ。
  自分の世代も、もちろん現在の中国の20代や10代も、
  そんな中国を本気で変えたいとは思っていないはずさ。
  いまの若者はネット上ではいろいろ言っているけれど、実際にデモはしない。
  だって、そこまで追い詰められてはいないじゃないか。
  天安門の頃は、もっと本気で社会がどうしようもなくて、貧しかったんだ。

俺:いま、再びああいう運動をやれるとしたら?

北:俺は勘弁だなあ。
  現在の中国で『民主』や『リベラル』を気取っている著名人の多くは、
  虚栄心やカネや世間体から、ポーズとしてやっていると感じるよ。
  俺だって、そりゃあ昔は戦車に石を投げていた人間さ。
  でもね、家のローンとか老後の蓄えとか子どもの教育とか現実的な問題を考えたら、
  現在の体制の崩壊なんて本気で望めるわけがない。

俺:少なくとも、いまの中国はそういう「現実的な」問題を考えられるくらいには
  都市市民が豊かになっていて、それなりの日常が存在する……。

北:ああ。それは若い連中だって同じだと思うなあ。
  彼らは、今の中国で大学に入れて、ネットができる子たちなんだから。
  それに、俺たちの時代と違って彼らは一人っ子だ。
  俺たちは兄弟が誰か死んでも親を養えたけれど、一人っ子は簡単に死ねない。
  われわれ中国人の孝道の問題からして、親に迷惑はかけられないだろう。

俺:説得力ありますね。
  
北:まあそういうもんなんだよ。もう一本、燕京ビールを注文したから付き合いたまえ。


――――――――――――――――――




北京の夜は氷点下だが、熱い話をしてくれた人であった。

……そこで元の話題に戻るのだが。
はてさて、新浪微博の実名化に怒りの声を上げるネットユーザーたちは、
何らかの行動を起こせるのだろうか。

せいぜい、北京市当局を萌えキャラにしたり、
どこかに「微博の墓」とかを作ってみんなで献花したりしながら、
諸外国からクレームが入るのを待つというあたりの、
良くも悪くもいつものパターンなヌルい抗議がなされて、
あとは何となく有耶無耶になっていくような気がしてならないのだがなあ……。

実名制。
前々から当局がやりたがっていたことではあるし、なかなかこの流れは覆らないような気もするのだ。






  

    ↑次の本出ました。

宣伝と告知(業務連絡) 12月23日はお暇ですか?

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今回は広告と告知。(翻訳の新記事が読みたい人は、当記事ではなくこちらを読んで)。
まず、10月の『独裁者の教養』に続いて、去る12月15日付けで次の本が出ました。

     
中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない(文藝春秋) 安田峰俊


担当編集者は、以前に『諸君!』の編集長を務めておられたベテランのS氏。
実は本の企画が2010年6月ごろから通っていたにも関わらず、
そうだ、アヘン軍閥行こう。とかバカなことばっかりやっていて延び延びになっていたのだ。

で、「フッ。私をここまで待たせてもいい書き手の方は桜●よ●こさんと安田君くらいだねえ。
世の中には偉い作家さんがいっぱいいるねえ……」
と赤ワインを片手に言われて怖かったので、7月から10月前半にかけて2カ月半で一気に書いた。
だけれど、執筆期間の短さに比して、正直言って結構満足できる内容でもあるのだ。

今回のベースになっているのは、
1.「最近、中国のネット事情とかアニメで日中交流とか、メディアで持て囃されすぎじゃね?」
2.「『中国人の本音』を、現在の自分の見解に沿って結論まで書き直したらどうなるか」。
このふたつになっている。



まず「1.」について。各位いかが思われるだろうか。

自分自身が長年そういうブログを運営していてアレなんだが、
最近、本屋やらネット記事やら、新聞やらテレビやらにおける
「中国ネット世論」と「アニメ文化交流」って
ちょっとばかり持て囃されすぎじゃね? (本来、そこまで信頼できなくね?)と思うのだ。

特に中国ネット世論への注目については、今年夏の高速鉄道衝突事故からが顕著だ。
最近の中国ニュースで、むちゃくちゃしょうもない事件(例.CCTVでやらせ発覚とかw)に対してすら
「中国ネット世論の反応が……」「ネット上では政府批判が沸騰」みたいな言葉が記事の末尾を飾るのは、
もはや毎度おなじみのことになりつつある。

過去、2008〜2009年ごろ、うちとか『ansan'sの楽しい中国新聞』あたりが
向こうの掲示板をチミチミ訳して紹介していた頃に、コメント欄に
「日本の国内メディアが注目しようとしない中国の事情がわかって助かります」的な意見が
けっこう見られたのを思い出すと、なんだか隔世の感がある。


……だが、どうも違和感を覚えるのも事実じゃないだろうか。

「中国ネット世論」や「日本アニメで日中相互理解」を重視していく、という昨今の現象。
従来からネットなりアニメなりを高く評価してきた人たちが、
その文脈の上で論じているならまだしもわからんでもないけれど、
実態がむしろそうではないのはご存知の通りだろう。

だって、現在、こうした主張をけっこう無批判に流している大手メディア様たちって、
ちょっと前までは「ネットの闇」とか「フィギュア萌え族」とか
ネットやアニメに対して偏見バリバリで犯罪の温床みたいに取り扱ってきた張本人そのものではなかったか。

「ネットの情報は信頼できない。新聞を読もう」という社説とか、
「犯人の部屋から美少女ゲームが見つかり……」と因果関係不明の説明をするTVのレポーターの姿とか、
彼ら自身は忘れていても、それを言われた俺らは忘れちゃいないッスよ、ねえ? 
と、そのくらいの文句は言いたくもなる。

    


にもかかわらず、ネットの書き込みやアニメが、
中国報道やら、個々の「中国通」の記者や識者の主張の補強に役立つらしいとわかるや、
彼らは「ネットの闇」を「中国人の本音が垣間見える貴重な窓(笑)」だと説明するし、
「フィギュア萌え族」や「大人になりきれないネクラなオタク君(by 80年代価値観)」が
見るものだったはずのアニメは「日中の若者による相互理解と交流の舞台(笑)」になってしまう。
はなはだしくは、アダルトビデオまで「日中相互理解のかけはし(笑)」になってしまう。
で、「知ってたわー。俺ら前から、ネットとアニメ大事だと思ってたわー」という、
地獄のミサワみたいなドヤ顔で、それらが紹介されてしまうのである。

おいおい。どんだけ皮相上滑りなんだという話であり、
こりゃーなんぼなんでも変な事態だと言うしかないだろう。


……特にだな。「AVで日中友好」とかだな、
それをまともなメディアの人が取り上げるとか冗談キツイっしょオイ。

ぶっちゃけAVとは何かというと、
20歳そこらの女の子がカメラの前でアナルまで大公開して男優のものをバコバコはめる猥褻映像を
頭にヤがつく系のアンダーグランドな人たちが売りさばいて、
それを生活に疲れたカネの無いリーマンがビデオBOXで2時間6本1000円で見てスッキリするとか
ニートが父親のクレカでD●Mの動画をDLして「ゴミ箱を妊娠させる気?」状態で視聴するとか、
中学生が国道沿いのAV自販機に突撃したら免許証での成人チェック必須で玉砕して帰宅するとか、
要するにそういう構図がデフォの、限りなくどうしようもない残念系のダメ文化じゃねーかと。
(注、上記の描写が妙にリアルなのは気にしてはいけない)

もちろん、職業や業界に貴賎は無いし、
俺自身もむかし、ある事情で女優の晶エリーさんに会ったことがあるのだけれど、
プロの矜持を強く感じさせるキレイでかっこいい女性だった。
AVそのものにしても、カメラアングルその他でマジなエロさを表現し切っている作品については、
「この監督すげえ」とリモコン片手に惜しみない称賛を送りたくもなる(どの業界にも真のプロはいる)。
でも一方、AVがあまり表社会には出せない「残念系文化」であることも、やはり確かなことではないか。


こういう残念系文化が生み出す影響というのは、
うちみたいなB級ブログとか2chまとめブログとか、せいぜいSPA!とか週刊プレイボーイとかが
面白半分で「AVで日中友好かよwワロスww」と取り上げるくらいが本来しかるべきところだろう。

少なくとも、権威ある大メディアのエリート社員が上等なスーツ着ながらAV女優にインタビューして、
「彼女は意外と聡明であり」「その飾らない姿勢が両国の心の交流を生んだ(感動)」みたいなことを、
権威ある媒体で大真面目に書いておられるのは明らかに大迷走でしょと。
というか、誰かちゃんと突っ込んであげてよ! それはナンセンスすぎると!! 

      
  ※「日中友好の新たな旗手」の出演作は『バコバコ乱交』とか『Sola様のM調教』とか『逆ソープ天国』なんだからな? 
   リベラル系の文脈から彼女を持ち上げている真面目な人たちは、その事実に対して誠実にちゃんと向き合っているのかい?


……とまあ、要するにそういうことである。

ただし、今回の本では「だから“マスゴミ”たちは偉そうな振りしてるだけで実はアホなんだ」みたいな
そういう酸っぱいブドウみたいな話をするつもりはない。
話題として不景気だし、それを主張しても生産的じゃないと思うからだ。

今回の本の内容というのは、
なぜそんな立派な大メディアや、俺らなんぞより余程勉強ができて賢いはずの人たちが、
こと中国の問題になるとアホな薄っぺらい話題に対してネタにマジレスしてしまうのか?
大メディアをはじめ真面目な人たちはどうして、
従来の「ネット&アニメ=悪」という姿勢からあっさり掌を返してまで
「中国民主化のめざめ」や「日中相互理解」という理想論を追いかける習性を持つのか―――?
という問題について、日中関係史の背景含めて解明していくという内容になっている。

もちろん、その過程においては、
「ネットは中国を変える」、「微博は中国を変える」、「アニメで日中相互理解」といった、
昨今の皮相上滑り系キーワードの内実の空虚さをキチキチ検証していくという作業もおこなっている。

  ※上記の話をフォローしておくと、実のところ大手メディアの中の人には、しっかりしている人も頭のいい人も非常にたくさんいる。
   また、大手メディアが「権威」であることそれ自体も、あながち悪いことでは決してないと思う。
   例えば、メディアが全部、東スポとかゲンダイになっちゃったり、
   朝日新聞やNHKがハロワを通じてニートばっかりを記者職に採用したりする方がよっぽどヤバいはずである。

  ※そして、ここはブログだから挑発的に書いているが、実際の書籍の内容は落ち着いた文体でけっこう大人しい。
    AVの話とかはそんなに多くは出てこないw



次に「2.」について。
この前、『KINBRICKS NOW』の管理人との対談で、こんな話が出た。

 『中国人の本音』って、有名編集者の堀田純司さんが執筆段階で担当してくれたお蔭で、
 すごくきれいな内容にまとまったし、中国情報としても良い本だったと思うんだけど、
 「著者の意見」はあんまり無いんですよ。
 紙の媒体で書くのが初めてのブロガーが、何をどう書けばいいのかわからないまま、
 序論から結論まで堀田さんにおんぶされてゴールに連れて行ってもらった感がある。

 もちろん、当時の自分の実力では
 編集者に思い切り助けてもらわなきゃ1冊の本は書けなかった。
 でも、完成した本からは著者自身の姿はあまり見えてこないし、
 アクがなくてノッペラボーな印象もあったのも事実なんです。(略)

 ただ、それでも「自分は『中国人の本音』での役割を守らなきゃいけないんだ」とか思うわけです。
 100%自分の力で作ったわけでもない本に囚われすぎた。
 「借り物の力なんか全部捨てちまえ!」と思い切るのに1年かかりました。

  29歳の「中国ネットウォッチャー」がなぜ独裁王国に潜入したのか?安田峰俊『独裁者の教養』出版記念インタビュー(1)


要は、第一冊目の『中国人の本音』。
本のなかで出てくる個々の事例は正しいし、確かに俺が拾ってきて俺が書いているのだけれど、
「ネット(orアニメ)で民主化」とか「民間ベースでの日中相互理解」とか
「目覚めた中国人は徐々に増えていく」みたいな論そのものは、
ぶっちゃけた話、執筆の時点で自分自身が必ずしも明確にそういう主張を持っていたわけではないのだ。

  ※とはいえ、当時の自分がそれ以外に何か確固たる考えがあったわけでもない。
   いまだから言うけれど、あの当時の時点では、 バリバリの日中友好論を掲げろと言われても“シナ人”排斥論を掲げろと言われても
   おそらく「商売」として受け入れて、指示に従ってそういう本を作っていた可能性が非常に高い。
   ただ、幸い当時の編集者の方は自分にとって比較的受け入れやすい論を提示してくれたので、それに従って書いたということなのだ)


しかし、編集者の方に序論から結論まで作ってもらって書いた本は、
当然ながら一冊の書籍としての出来は非常によいものになったものの、
その編集者が身辺からいなくなれば次の本では何も書けなくなる。
自分の本当の内面から、モノを考えて書いていたわけではないからだ。

それでしばらく困ってたんだが、最近いろいろやっていて
何となく自分の主張を形にできるようになったし、難しいことを考えるようにもなった。

そこでできたのが今回の本で、
自分の見解にもとづいた「中国論」を書いてみたのだ。


  

≪目次≫
◆はじめに

◆第1章 「日中アニメ文化交流」の嘘
辺境の街の「昇龍拳」/「日中文化交流」は本当に可能か?/宇多田ヒカルを歌う「反日」青年/
事実の本当、願望の嘘/「民工」たちの見るアニメ/「消費対象」としての外国文化/
ゼロコンマ以下の変化/思い入れ日中文化交流論

<コラム>「蒼井そら」ブームを斜め読みする

◆第2章 「対日感情」の嘘
骨董商のピンチ/「対日世論」をつくるもの/「反日」の背景/
「政治(ヂェンヂー)」としての反日デモ―2005年―/「政治(ヂェンヂー)」としての反日デモ―2010年―
/大きくブレる「ネット世論」/「親日」ネット世論の背景/蛇口が握られる「対日感情」

<コラム>「信頼できる」中国ネット世論

◆第3章 「ネット世論」の嘘
高速鉄道衝突事故、現地報告/中国世論の「分裂」 /「いちびり精神」の体制批判/
中国「ネット世論」の限界/中国版“ウェブはバカと暇人のもの”/
「ネット右翼」と「新意見階層」/開き直る中国政府と踊る日本人

<コラム>パクリかインスパイアか? 中国国産系ウェブサービスの怪

◆第4章 「ツイッター革命論」の嘘
あるギークとの出会い/「紅い万里の長城」に囲まれて/中国ネットユーザーの「超」最先端/
中国ツイッター民の素顔(一) ネット大好きの「ITオタク」/
中国ツイッター民の素顔(二) 外資企業社員と共産党員、現代中国社会の「エリート」たち/
中国ツイッター民の素顔(三) 「反体制派」の女性/
「IT人」たちの限界/「洋秀才」と「皇帝」

<コラム>辛亥革命とは何だったのか? 一〇〇年前の大事件を考える

◆第5章 「変化する中国」の嘘
「中国人民の性質」とは何か/韓寒・劉暁波・魏京生・魯迅・孫文・陳独秀・鄒容/
「バカばかり」の国――孫文とジャッキー・チェンの共通点とは?/
一〇〇年間、変われない中国人/「中国蔑視論」の誘惑/カン違いした人々/
「無限回廊」から脱出する処方箋

<コラム>「保守」と「革新」から考える日本人の中国観

◆おわりに


……けっこうハードな「中国本」だけれど、ご興味がありましたらどうぞ。
読み終わった人の感想を聞いていると、そう評判が悪いわけではないみたい。



――――――――――――――――――――――――

次は告知。

安田の本に加えて、
年末に福島香織さんが石平さんと対談本を出されることもあって、
12月23日にひとまず『KINBRICKS NOW』主催で、
出版記念パーティー&みなさま感謝デーを企画しています。

日時:2011年12月23日
場所:未定(池袋か新宿あたり)
時間:午後7時頃

詳細こちら:https://plus.google.com/109836385916922365839/posts/RN9WDNKdo2Q

俺はともかく、キンブリの管理人氏とか福島香織さんを生で見られるチャンスです。
ご関心ある方は、ツイッターのDMかmeirojin@gmail.comまでどうぞ。
(コメ欄やツイッターで絡みがまったくない方でもOKです)
人数は多いに越したことは無いので、振るっていらしてください。



……宣伝と告知にエントリーを使ってしまって正直すまんかった。
では、また。

【北の国情勢】ヤンキー母国に帰る。金正男帰国(?)と中国ミニブログの反応

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いくらなんでも今回の件はブログでも取り上げなくてはなるまい。
とはいえ、金正日が死んだ話は真面目すぎてなんなので、
ここはやはり、俺たちのまさおに登場いただこう。


  


金正男がマカオの自宅から消え平壌へ向かった模様 自宅の外壁には指導者を意味する「太陽」のマーク (痛いニュース)

【香港時事】20日付の中国系日刊紙・香港商報は、17日に死去した北朝鮮の金正日労働党総書記の長男、
金正男氏が最近マカオを離れたとの情報があると伝えた。 金総書記の葬儀に出席するため平壌に戻った可能性がある。
同紙によると、マカオのコロアン地区にある正男氏の一戸建て住宅は19日、誰もいないようだった。
住宅の外壁には指導者を意味するとみられる太陽のマークが張られていたという。
正男氏はマカオや北京を拠点に、事実上の亡命生活を送っている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011122000539



いきなり新浪微博の反応から紹介してみる。




――――――――――――――――――――――
【金正日の長子、既にマカオを離れて北朝鮮へ】12月19日 12:21
「南方日報」公式アカウントのツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1682207150/xCIT7kESP

@南方日報
環球網(『環球日報ウェブページ』)の報道に寄れば、
メディアの大部分は(今回の件について)金正恩が後継者となると予測している。
ただ、韓国の某主流メディアの記者の証言によれば、
金正日の長子である金正男は既にマカオの自宅を離れたという。
当該記者は、彼がおそらく既にピョンヤンに戻ったと推測している。



@一天一盒飯:(12月19日 12:22)
金正日の息子って、なんでこう外見がキモいんだろう。



@喜羊羊強占灰太狼: (12月19日 12:23)
やーい、キモい子やー。



@M小貝兒: (12月19日 12:24)
北朝鮮ってのは、金一族だけが自由に出国できる国なのか?

  ※ただし、自由に帰国できません。



@LightingBowen: (12月19日 12:27)
玄武門の変フラグきたな

  ※玄武門の変…626年、唐王朝の高祖李淵の息子である李世民が、
         後継者に決まっていた長子の李建成、弟の李元吉を暗殺し、権力を奪取したクーデター。
         李世民はその後、唐の太宗として中国史上最大の名君として讃えられた……というが、
         ぶっちゃけた話、歴史の勝者は兄貴を殺していても名君設定を自分で作れてしまうのだともいえる。
         ヴィジュアル的に理解したい人は『西遊妖猿伝』を読もう。
          参考:Wikipedia 玄武門の変



@周建?Bax: (12月19日 12:44)
死者は安らかに眠るべきである。功罪は後世の評による。
生者は自ら強くあらねばならぬ。極権の苦しみを忍ぶこともなかろう。



@源源綿長: (12月19日 12:44)
太ってるなあ……。
朝鮮人民のメシはこの一家に全部食べつくされているのか。



@Fairy_1229:(12月19日 12:44)
彼の体型や服装と、貧乏で苦しんでいる朝鮮人民との対比が鮮やかだな。



@顧小邪1982: (12月19日 12:45)
ピョンヤンに行ったのはいいけど、帰って来られるの?



@?-高: (12月19日 12:46)
北朝鮮では毎年1万数千人が餓死しているのに、
金一家の王子様は毎日マカオで100万元も使っている……。
これが生活というものであり、これが世界というものなのだろうなあ……。

  ※数字のソース不明



@神奇的Lucy: (12月19日 12:51)
まさおかっけえ!
毛新宇閣下と同じくらいかっけえ!!

  ※参考:毛沢東主席ご嫡孫、毛新宇閣下↓

   


@?吧?啊: (12月19日 12:51)
帰国しても殺されるぞ。
先帝の崩御の後、新帝が葬送の名目で競争者を暗殺するのは
古来よくあった話じゃないか。



@litgeo:(12月19日 12:56)
29歳の金正恩が、彼をどうやってあしらうんだ?
かつて後継者の地位にあった兄にどうやって顔向けするんだ?
……何か起こりそうな気がしてならない。

  ※正恩は満28歳。ただし、中華圏では数えで年齢を数えることも多いため「29」としていると思われる。



@炸花: (12月19日 12:57)
歴史は俺たちに伝えている。
長子を廃して弟を後継者に立てるのは亡国の挙であると……。



@鬼手foreverlove: (12月19日 13:03)
操欲立後嗣,躊躇不定,乃問賈詡曰:“孤欲立後嗣,當立誰?”
賈詡不答,操問其故,詡曰:“正有所思,故不能即答耳。”
操曰:“何思”詡對曰:“思袁本初.劉景升父子也。”
操大笑,遂立長子曹丕為王世子。

  ※↑元ネタは『三国志演義』第六十八回。以下に翻訳↓。

曹操は後継者を定めたいと思ったが、迷ってなかなか決められなかった。
そこで賈クに「余の後継者は誰を立てるのがよいかのう?」と聞いたが、賈クは答えない。
曹操がその理由を尋ねると、賈クは「思うところありまして、即答致しかねまする」という。
曹操が「何を思うところがあるのかな」と尋ねると、
賈クは「(長子を立てなかった)袁紹や劉表と、その息子たちのことを思っていたのです」と答えた。
曹操は大笑いして、結局は長子の曹丕を後継者とした。


  
  


@笑對歴史的傷: (12月19日 13:12)
で、そもそもなんで「世襲」が前提なんだよ?






――――――――――――――――――――――






というわけで、本件については、中国の微博においても、
情報量の面では基本的には日本とあまり変わらないようだ。

もっとも、あえて日本側の反応との違いがあるとすれば、
「玄武門の変」とか「袁紹と劉表の例からすれば……」とか、
あちらのネット民たちが過去の王朝になぞらえてあれこれジョークを飛ばしていることだろう。

そもそも北朝鮮という国自体、
朝鮮半島の儒教の伝統がアレな感じに奇形化した「王朝国家」なのであり、
そこから連想されるのはやはり過去の王朝の事例しかありえない。ということか。




ツイッターにも冗談で書いてしまったが、金正日の後継者争い。

高句麗国内で権力闘争に敗れて流浪している才気煥発な嫡男が、
唐王朝の援軍を借りて豆満江を渡って王都・平壌に進撃。皇太子を撃破!

という、どこぞの韓流ドラマみたいな、熱くて素敵な貴種流離譚が
もしかしたらこの21世紀の東アジアでも見られるかもしれない。
歴史好きとしてはどうしても、少しワクワクしてしまうのだけれど……。


問題は、この壮大にして華麗な貴種流離譚の主人公が、
いい年齢してピョンヤン生まれのヒップホップ育ちなヤンキー親父であることだ。



  




……まさお、とりあえず死ぬんじゃないぞ。






      



河南省農民「オラの畑が完全に毟り取られてしまっただ……」

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元の事件はほぼ一か月前の話で悪いのだけれど、
あまりにも物凄い話なのでぜひ紹介しておきたい。

本件の舞台は、かつて夏や殷(商)の都が一時置かれたこともあったとされ、
たぶん往年には太公望が打神鞭を振り回したり
妲己が誘惑したり胡喜媚がロリロリしていたかもしれない、
中国有数の古都・河南省鄭州市郊外の農村である。

この「おまえら、紀元前から同じ場所で農業やってなくね?」的な村において、
ネットの情報が原因で多数の市民が一挙集結した大事件が起きたのだ。


……さて。
以下にじっくりご覧いただこうじゃないか。







――――――――――――――――――――――――
【農民がダイコン畑をタダで開放したところ……】支付宝論壇「愛心捐助」板
http://club.alipay.com/read-htm-tid-10386415.html

1:名無し人民@オラこんな村いやだ 2011/11/29

  ※ちょっと意訳&省略しています。

河南省鄭州市で農業を営む韓紅剛さんは
畑でダイコンを栽培したところ大豊作に。
しかし豊作貧乏となり、業者からは二束三文でしか買ってもらえず、
そんな安いものを収穫するのに人を雇うにもコストがかかる。
そこで家族との相談のうえ、市民の皆さんにタダであげようと考えた。
韓さんは語る。
「福祉団体なんかでうちのダイコンが必要なら、優先的にあげようと思ってただ」

  


こう考えた韓さんが11月25日にネット上に情報を流したところ、
26日の早朝から、ダイコン掘りにやってきた大群衆が韓さんの畑を埋め尽くすこととなる。
群衆は包丁を持ってダイコンを切り取り、
ダメなものはその場に放り出して、良いものだけ袋に詰めて持って帰った。

  


しかも韓さん一家が予想だにしなかったことに、
(今回の件とはまったく無関係な)韓さんの畑のサツマイモまで
掘り出して持って行く者も出たのである。
制止しようもないまま、韓さんのサツマイモは袋に詰めて持って行かれてしまった。

  


どうしようもない状況のなか、
韓さんは群衆に対してなんとか手加減してくれるよう頼み倒すしかなかった。
「おめえら、うちの息子を学校にやらなきゃいかんのだべ!
 ちょっとは残しておいてほしいべよ!」と。

  


11月26日。韓さんの畑の前には、
ダイコン掘りに来た人の自動車や三輪自転車が数キロにわたり長蛇の列をなした。

  

(以下略)

  ※中国広播の記者による韓さんへの取材によれば、述べ5000人以上の群衆が野菜を奪いにきて、
   ダイコン(総額5万元=約62万円相当)とサツマイモのほか、ホウレンソウも大部分盗まれたとのこと)





3:名無し人民@オラこんな村いやだ
さすがにこれはないだろ。



4:名無し人民@オラこんな村いやだ
ため息しか出ない……。



5:名無し人民@オラこんな村いやだ
ニュースでもやってた。
絶句。



6:名無し人民@オラこんな村いやだ(四川省♂)
なんで傷付くのはいつも俺たち農民なんだ。



7:名無し人民@オラこんな村いやだ
農民かわいそうすぎる。



8:名無し人民@オラこんな村いやだ
事前にちゃんと人を集めて準備して、
ダイコン掘りに来た人たちにちゃんと注意事項を徹底すればよかったのに。



10:名無し人民@オラこんな村いやだ
なぜ農民だけが傷付かなくてはならないのか。



13:名無し人民@オラこんな村いやだ
どうしてこうなった。





<↓以下、さらに新浪微博の反応も紹介>


――――――――――――――――――――――――
【農民がダイコンをタダであげると発表したところ群衆が殺到】11月29日 19:41
「中山網」公式アカウントのツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1767954360/xzJdLDJ45

@棺材上的星空:(11月29日 19:43)
善良なお百姓さんなのに、うちの国の人間の民度って……。
ああ、かわいそうすぎる。



@楚楚子:(11月29日 19:45)
ああ……。
いまの世の中、こんなに良い人って少ないのになあ……。



@hiLuobo: (11月29日 20:02)
ちょ、ドン引きしたんだけど……。



@個体戸CEO: (11月29日 20:08)
中国人にはこういうひどい人たちも多い。
わけがわからん。



@Dadda6: (11月29日 20:16)
善良な人間として善良な行いをすることは難しい。
だって、ここ(=中国)において「良き人」でいることは代償が大きすぎるんだ!



@華-風影:人啊!怎?能??的?巴不得菜有??,拉死他?。 (11月29日 23:09)
なんてこったい!
どうしてこうなるんだよ!?

野菜の残留農薬で、
ダイコン掘りに来た連中はみんなくたばっちまえ!




――――――――――――――――――――――――




どうしてこうなった。

ものすごくいい人なのに、善意が裏目に出てしまった河南省ダイコン農家の韓さん。
これが藤崎竜のマンガなら望ちゃんが何とかしてくれそうなのだが、
現実はなかなかそうもいかない。

来年こそ、豊作貧乏にならない程度に豊年万作となれと祈るしかない。
韓さんの畑に必要なのは、たぶん太公望や妲己じゃなくて神農である。

負けるな韓さん。


  
             ↑韓さんの息子。


  ※重要な追記とおわび
   ……本件、12月の初めごろにロケットニュースで流れていたらしいorz
      しかもその後、現地メディアや市民のボランティアが残ったイモの販売を手伝ってくれたりして、
      話を聞きつけた取引先から大口契約も取れるという、
      「人間万事塞翁が馬」を地で行くような後日談もあったそうだ。
      世の中、なかなか捨てたもんでもなかったのである(コメ欄で指摘してくれた人、ありがとう)。
       【中国】「大根無料であげます」1万人以上に畑を荒された農家に市民が同情、サツマイモがバカ売れ

      ちなみに俺はとてもいさぎよくないので、こうなった理由をぐじぐじ釈明しておくと、
      この話が出た時に自分は中国にいて、電車で新聞読んでたらこの件が出てきて爆笑したのだ。
      まさか日本でニュースになっていたとはつゆしらず……。 →記事にする前に日本語ソースの下調べをサボらないようにしようw






―――――――――――――――――――――――――――――


……ところで、以下思い切り蛇足。

今回、上のニュース部分でさらっと出てきた
「11月25日にネット上に情報を流したところ、26日の早朝から大群衆が」
という記述である。
これを見てどう思われるだろうか。


敢えてすごく意地悪な言い方をすると、
たしか今年の2月に「中国の民主化と一党独裁廃止のために立ちあがれ!」と
こんな呼びかけがネットで全国に流された時(=中国ジャスミン革命)には、
上海で4人と南京で50人しか人間が集まらなかった。

いっぽう、「オラの畑のダイコン(1本数十円)をタダであげる」と
河南省鄭州市のダイコン農家がちょこっとネットに流した時には、
たったひとつの都市の市民たちが5000人前後も現場に殺到した。



中国において、「ネットには情報拡散能力と動員力がある」ことはまぎれもなく事実だ。
でも、しかしだな……、ということなんである。

自由な民主主義国・ニッポンに住むわれわれの感覚では、
「タダで民主主義と言論の自由が欲しい」と「タダでダイコンが欲しい」の両者では、
当然ながら前者の方が圧倒的に心に響くし、非常に大事なものだよなあと思える。

そのため、われわれは中国を眺める際にも、
自分たちにとって「心に響く」要素を持つ人たち
(=例えば劉暁波とかジャスミン革命のシンパとか、「親日」の日本アニメヲタとか)について、
やはりその存在感を非常に大きなものとして捉えがちだったりする。

「中国においてネットが大衆行動に与える影響云々」という話になっても
われわれはやっぱり、自分たちの「心に響く」側面ばっかりを見てしまいがちだ。
(要するに「ネットや微博がにっくき中国共産党打倒の武器になるぜ!」という側面のこと)


だがしかし、現実の中国人民のより多くを占めているのは、
もしかしたら劉暁波とかジャスミン革命のシンパとか日本贔屓のアニメヲタみたいな人たちではなく
タダでダイコンを欲しがる側の人たちかもしれない。

……というか、もしかしたらじゃなくて、どう考えてもそうなんである。
しかも、対象母数を「ネットを使う人々」に限定してすら多分そうだ。

これは、ぶっちゃけ日本人の心にはまったく「響かない」論理を持つ人たちだとも言えるわけだが、
中国には人間が大勢いて、
現実としてそういう人たちも佃煮にするほどいっぱいいるんだから仕方ない。



で、ここらへんの事情を見て見ぬふりして自分の見たい中国だけを見て喜んでると
後でけっこう痛い目に遭ったりするからまったく困ったもんだ……。

などと、元ネタがあほニュースだったのに難しげなことを思ったりもする。




(広東省)屋台で美女をナンパしたら同行の男4人に殴られた → チンピラ50人を引き連れて薙ぎ払い決行

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2012年。
新年明けましておめでとうございます。


さて、本編に入るまでに余談をひとつ。

自分が2001〜2002年頃にいた、広東省の経済特区・深セン。
昨年11月末に10年ぶりに深セン大学に行ってみたところ、
周囲の様変わりが物凄くて驚いたのだ。
(→深センに行く機会はこれまでにもあったけれど、大学周辺は10年ぶり)

学校の西門を出た先にある学生街「学府路」。
このまえ久しぶりに歩いてみたら、過去と同じ建物が
マックとKFCとカルフールと味千ラーメンだけしかなく、
それ以外の街並みが過去の痕跡をほとんど残さず“すべて”変わっていた。

たった10年前に自分が生活していて、
友達と遊んだり当時の彼女とデートしていたりした思い出深い街が
個々の地名や道路地図の面では現在も何も変わらず残っているはずなのに、
外観的には、世界のどこにも存在しなくなっていたのである。
劇画・オバQ』を地で行くなかなかショックな出来事ではあった。

  



……もっとも、これぞすなわち「中国の経済発展」というやつなのだ。
30年間の改革開放政策を象徴する深センという街らしい現象であり、
もちろん、上海や北京や大連や青島でも、似たようなことは多々あるはずだろう。

現代の中国の都市部に住んでいる、若い人やちょっと前まで若かった人というのは、
おそらく先日の俺が感じたような
「そう遠くない過去に自分が青春時代を送っていた空間が、片っ端からこの世から消えていく」という
その人の感性によってはけっこうキツい経験を多数味わいながら、
ひとまず来た道を振り返る時間もなく現在を生きているんじゃないだろうか。
天災や戦争がないのに、普通に暮らしてるだけでそれが全国規模で起きているのだ。


ちなみに現在、自分は正月で地元に帰っているのだけれど、
周囲に広がるのは、小学生の頃から基本的にはほとんど変わっていない
田舎の見本みたいな滋賀県の街並みだ。

ここ20年ほど、開発がそれほど劇的に進んではいない日本と、開発だけやってきた中国とでは、
それぞれの社会内部で生きている人間の感覚はずいぶん異なってくるに違いあるまい、
と、餅を食いながらちょっと難しげなことを考えてみたりもする。







……だが、だ。
街並みが変わったって、ノリ的にあんまり変わっちゃいない物事だってある。
中国のポータルサイト・網易のニュースを見ていたら面白い話があったので、
以下に紹介した上でネットの反応を見てみることにしよう。





―――――――――――――――――――――――――――――
【女性のナンパをめぐって50人余りが武器を手に大乱闘】
2012-01-01 14:09:29 来源: 中国日報網(北京) 網易新聞中心
http://news.163.com/12/0101/14/7MMIIINJ00011229.html

  ※多少省略・意訳しています。
   ちなみに事件現場の「坪山新区」はバリバリの郊外で、おそらくはビルが林立する深セン市中心部とはまったく違った、
   ローカル色の強い地域ではないかと思われる。

2011年12月31日未明、
深セン市坪山新区竹坑社区金牛路にある某スーパーのフードコート屋台にて、
美女へのナンパ失敗を理由として50人余りが刃物や棍棒を手に乱闘する事件が発生した。

30日深夜23時ごろ、ある男Aが屋台で食事をしていたところ、
隣のテーブルで男4人女1人が非常ににぎやかに談笑しているのを発見。
女性があまりにも美人だったため、
男Aはヨダレをだらだら垂らさんばかりの状態(※原文「漂亮女孩令其垂涎三尺」)となり、
なんとか彼女をナンパできないかと策をこらしていたところ、
彼女と一緒にいた他の男4人が激怒、口論となりAを殴りつける事態となった。

Aは形成の不利を悟り「てめえらそこにいろ。人を呼んでやる」と捨て台詞を残して離脱、
殴った側の男女5人は彼を放っておいて引き続き食事を楽しんだ。

20分後、男Aは刃物や棍棒で武装した男たち50人を連れて鼻息荒く現場に再来。
双方が言葉を何度か応酬した後、大乱闘が開始された。

彼女と一緒にいた他の男4人は、
自前のスイカ切り包丁を取り出して敵側に斬りつけ、襲撃側1人の指を切断。
問題の女性は混乱にまぎれて現場を離れた。


このとき、ちょうど現地で「2012年深セン市警備強化キャンペーン」の任務に就いていた
軍と警察合わせて7支隊10中隊及び、現地派出所の警官が、
この大乱闘の混乱を目撃。付近の無辜の群衆が生命の危険にさらされているのを確認した。

公安及び武装警察及び軍隊は乱闘の制止を呼びかけ、
さらにパトカーを駆って乱闘中の暴徒を蹴散らし、
さらに任務中の軍と警察が人々の拘束行為を執行。
暴徒のうちスイカ切り包丁を持つ2人と棍棒を持つ5人を追いかけて鎮圧し、
警察の命令に従わなかった男性を逮捕した。
ほかの乱闘参加者も派出所に連れて行き、取り調べが行われた。

明らかになったところでは、
襲撃側の武装した50人余りのうち、一部は近所の工場のガードマンであり、
ほか一部はおそらくヤクザの構成員であったという。
警察は引き続き捜査を進めている。



*0084LOVE越南新娘網 (広西桂林市) 2012-01-01 14:16:52
元旦から殴り合いの大喧嘩とか、
何をやってんだこいつらは。

  ※中国では西暦の元旦はあまり意識されず、普通は春節(旧正月)が大々的に祝われる。
                 だが、1月1日が「元旦」であること自体は、やはり中国においても同様なのだ。



*百撕布得騎姐 (福建省厦門市) 2012-01-01 14:14:19
こいつら、きっと城管からスカウトが来るな。
彼ら(の仕事内容)からすれば、こういう人間は貴重な存在だろう。

  ※城管…城市管理委員会の略称。以下、『Kinbricks Now』の説明を引用しよう↓。

      “城管とは都市管理局の略称。百度百科によると、「我が国現在の法体制の下、
       従来の多頭法執行による重複を避けるため生み出された綜合法執行機関」 というなんだか難しい説明が。

       簡単に説明すると、無認可屋台の取り締まり(工商局の管轄)、ゴミのポイ捨て取り締まり(環境保護局)、
       駐車違反(警察)などなど政府各部局の汚れ仕事を一手に引き受けている部局です。
       暴力的な執行が多いこと、法的根拠がないことなど多くの問題を抱えています”
       参考:「泣く子と城管には勝たれぬ」=中国人が一番恐れている強面集団「城管」の新商売 

      それにしても、人民解放軍あり武装警察あり公安あり城管ありと、
      中国の統治機構には果たして暴力装置が何種類まであるんだろうなあ……。



*網易江蘇省手机網友 ip:112.4. 2012-01-01 14:54:16
やっぱり深センのガラの悪さって並みじゃないな。



*网易蒙古网友 ip:182.160. 2012-01-01 14:56:41
なんで屋台飯を食いに行くのに、
みんなしてスイカ切り包丁を標準装備してるんだよ。

こいつらの仕事はスイカ売りなのか!?



*no1tang (上海市)2012-01-01 14:59:37
ずいぶんと治安のよろしいことで……。



*網易広東省手机網友 ip:117.136.2012-01-01 15:18:17
(襲われた側の)男4人もスゲーよな。
絶対にそのスジの人だろ。

そうじゃなきゃ屋台に夜食食べに行くのに刃物なんか持ってないし、
最初のトラブルが起きてからも平然と(食事を継続)できるわけがない。



*網易?西省西安市手机網友 ip:222.90. 2012-01-01 18:35:33
男4人強すぎワロタ



*網易中国手机網友 ip:112.224. 2012-01-01 18:45:48
むしろ、女が本当にそこまで美人だったのかが気になる。



*網易広東省手机網友 ip:117.136.*.* 2012-01-01 19:13:57
リアル古惑仔か。

  ※古惑仔…広東語で「チンピラ」の意。同名タイトルの香港映画が有名。



*網易広東省深セン市手机網友 ip:113.108. 2012-01-01 19:20:42
4人で50人以上を相手にするとか、強い人たちもいたもんだなあ。
しかも滅茶苦茶落ち着いて対処したっぽいし。

こいつら、やっぱり城管の人間なんじゃね?

  ※世界最強の組織は城管、というのは中国のネット上でよく使われるジョーク。
    参考:尖閣問題:中国で“やけくそニュース”…「城管」派遣で奪還せよ(サーチナ)



*網易広東省手机網友 ip:117.136. 2012-01-01 19:31:15
戦闘能力が1ランク上だよね。




*網易広東省中山市網友 ip:113.73. 2012-01-01 17:08:56
おいおい。
ここまで物騒な世の中だと、
夜に屋台へメシを食いに行くにも刀は手放せないね。

ちょっと青龍偃月刀かついで屋台いってくる。



*網易江蘇省手机網友 ip:122.194. 2012-01-01 14:53:48
女の子の画像うp




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反応含めてカオスすぎるw

……だがしかし、
こういう何の意味もないのに人間が無駄にワラワラと集まって変な事件が起きたり、
あり得ないようなデザインのB級発明がドヤ顔で紹介されたり、
道行くおっさんとか畑のスイカが突然爆発したりする、
どうしようもないシュールさとナンセンスさこそが、
外国人として中国をウォッチする際の最大の楽しみじゃないかと思うのだ。

そして、こういうアホな話は、
ちょっとくらい街が発展しようと人民たちの生活水準がいささか向上しようと、
中国では今後もなーんにも変わらず起こり続けるに決まってるのであり、
またそれこそが、かの国の愛嬌でもあるんじゃないかと思う。


願わくば、今年もブログではそんなアホな話を追いかけていけますように。
2012年もみなさまよろしくお願い申し上げます。



  ※深センといえば、目下いちばん困った話題は鳥インフルエンザであるはずなのだが、
   正月1日から話すのは縁起でもないので、とりあえず今回は別ネタにて。





      





重慶市の党員研修所の看板がひどい件について

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なにもいうまい。
更新するのに頭を使って時間がかかるから、
めんどくさくなって記事を書きたくなくなるのである。

ここはひとつ、
政治がどうの日中関係がどうのネットの言論統制がどうのと
そういう俺らの日常とあんまり関係ない話は脇に置いてマイペースでいこう。

最近、言論統制が強まったとされる新浪微博だが、
こちらで、本日だけでレスが1500件、リツイートが8000件くらいついている画像とその反応を紹介したい。



……事前に多少の説明をしておく。
中国共産党の幹部(簡体字だと「干部」)のみなさんは、
幹部になったあとも、正しい政治認識だの党員としての道徳心だのと、
そういう中国共産党らしい特性(=党性)をより強く心身に刷り込むべく、
N●VAの講師のように常に自らを鍛え上げなくてはならない。
そんな、とても大変で立派な人たちである(という建前である)。

で、そんな党性を鍛錬するために、
管理職研修センター的な施設(=行政機関幹部の党性鍛錬実戦基地)が
中国の町にはあったりするのだ。

近頃は、党の有望幹部だった薄熙来が失脚するやら何やらで世界から注目を浴びている重慶市だが、
市内の南岸区にはこんなセンターの案内看板があるんだそうである。












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@済南网官方微博 2012/4/5 10:14
僕も「機関幹部党」に入党したいです><

  

     ※南岸区機関幹部党
          の
       性鍛錬実践基地




@杰人微? (今天 10:23)
俺も入党したい。入党したら絶対裏切らんわww



@冬雪巷 (北京♀ 今天 10:23)
なんでよりによってここで改行したのさ。



@枯竹老樹 (今天 10:23)
これはいい鍛錬と実践。



@数九寒霜 (今天 10:16)
当局に笑いの天才あらわる。



@葉皓MU (今天 10:22)
これは注目だけど……。
バカって本当に怖いよなあ。



@Amoysailer (今天 10:21)
このツイートは伸びる。



@今天想換个名字 (今天 10:24)
性鍛錬の実践基地とな?



@中科視野王標 (今天 10:24)
ひどすぎ。
設置する時に誰も声を出して読まなかったのか?



@大頭的困惑 (今天 10:23)
ちょっと先進的な性教育を堅持してくる。



@番茄蛋羹(今天 10:23)
党のために生涯をかけて奮闘しようと思うわぁ。



@没品的老黄 (今天 10:26)
幹部党の福利厚生ってずいぶん充実してるんだね。



@抓拍新聞社 (今天 10:26)
俺もここに入りてえよ!



@尹振涛 (今天 10:25)
公式アカがこんなのつぶやいていいのかww

  ※これをつぶやいた「@済南网官方微博」は山東省済南市のポータルサイト公式アカです。



@MOMAX (今天 10:28)
無党派の民主化シンパを自任する俺も、この党にだけは惹かれてならない。



@西南阿? (今天 10:29)
いや、入党まではしなくていいんだけどさ。
とりあえずこの基地の見学だけでもさせてもらえれば俺は満足するね。



@出行無憂 (今天 10:33)
どんなことがあってもこの党と一緒に歩んでいこうと思います><



@魔神殺恨 (今天 10:34)
重慶が再び燃えている。



@南北桃源(今天 10:35)
このツイート、絶対に削除されるよね。



@20-October(今天 10:35)
最近、進路に公務員を選ぶ大学生が増えているのはこういうわけだったのか……。



@歓喜看鬧猛 (今天 10:46)
天上人間の支店がこんな場所に。

  ※天上人間…このニュース参照。







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なるほど。

最近、国内外のメディアをにぎわせる薄熙来の失脚だが、
彼は嫁が美人の習近平とは違い、
きっと実践基地での鍛錬が足りんかったので北京の機関幹部党での出世に失敗したんだろうと思う。







              -ー=-‐ 、__
          , r '"        ヽ,
          l             ' ,
         /   三ニ=ー-'`=ニiiiiiiiiiiil
        /  ニ'"       `ヾiiiiiiii|
        /  ニ'           'liiiiii|
       ,l   |,r=-;.,_   _,、-=-、|iiiiil
       l  .il .,rェェ、_" :;"ェェ j  |iiiiiil
       | . i| ,,     :;   ,,  iiiiiiil
       ,|   il,    , :: ,    liiiiiill
       l   iil,    ` '      ,|iiiiiiii|
      /     l、  ー- -,ー   イiiiiiiiiill
      /      iゝ、  ̄  /|iiiiiiiiiiiil
     /      i| `ー- ' " ,liiiiiiiiiiii|
  
    クソスレータ・テルナー[Qtosleata Telnault]
         (1946〜1992 イタリア)





中国のグーグルトレンドのパクリっぽいサービス「百度指数」が結構おもしろい

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グーグルトレンドというサービスはご存知だろうか。
これはグーグルで一定数が検索されているワードについて、
その検索数の推移や、検索回数の多い都市などを表示するサービスだ。

これの類似サービスが、実は中国製検索エンジンの百度でもあるのである。
「百度指数」といって、なんと本家のグーグルトレンドよりも素晴らしい事に、
検索者の年齢や学歴・職業などまで(なんらかの予想をもとに)表示されてしまう。
(余談ながら、最近はアジアンITライターの山谷剛史さんが
 ツイッターでこのサービスについてよく話題にしている)。


で、実際にいろいろな単語を百度指数に放り込んでみるとすごく面白いのである。
まずはサービスの雰囲気をつかむべく、適当な単語を放り込んだ結果を3件ほど紹介しよう。






――――――――――――――――――――――――

◆「胡錦濤」の百度指数を検索





例えば「胡錦濤」の検索数はこうなる。
ここ一カ月では三月の半ばごろにネット上で最もたくさん注目され、95852ポイント検索されている。
通常時は大体2万ポイントくらいで推移しており、イベントがあると跳ね上がる模様。
で、検索数は北京がダントツに多く、あとは上海・鄭州・広州・深圳と続くらしい。
画像では紹介してないが、検索者の年齢層は20代と30代が多く、男性が78%を占める。

では、もうひとつ見てみよう。



◆「蒼井そら」の百度指数を検索



こちらが中国における「蒼井そら」の検索数で、
三月末に17万5190ポイントの指数を記録しており、平均でも4万ポイント弱で推移。
単純に言って、中国人民の間で蒼井そらは胡錦濤の2倍くらい人気があるということだ。

地方ではやはり北京がダントツで、上海・広州・鄭州・深圳と続く。
検索者の年齢層は20代>10代>30代の順で、なぜか男性は全体の67%しかいない。
中国において蒼井そらは、(少なくとも胡錦濤よりは)意外と女性に人気があるらしい。



◆「魔法少女まどか☆マギカ(魔法少女小圓)」の百度指数を検索



まどマギの検索数w
三月半ばに最大値6359ポイントで、結構変動があるが平均4000ポイントぐらい。
胡錦濤の5分の1、蒼井そらの10分の1だが、それでも意外と多くね?
(ネットとオタアニメの親和性が高いため、
 一般社会における知名度以上に高い数字が出るんだと思われる)

ちなみに地方は、上海>北京>広州>武漢>天津 の順。
年齢層は10代が圧倒的に多く、次いで20代。ただし30代以上はほぼゼロ。
男女比は半々である。




――――――――――――――――――――――――





……いかがだろうか?
この百度指数はいろいろと活用できそうで、
例えば「AKB48」とか「初音ミク(初音未来)」とか
「資生堂」「ソニー(索尼)」とかで調べれば、きっとマーケッター垂涎。

また、最近の中国ではつとに強まりつつあるネットの検索規制が
百度指数にはあんまり及んでいない(というか、管理者の間でまだその発想が生まれてない)らしく、
「薄熙来」とか「劉暁波」とか「ダライラマ」とかの現代中国的にヤバい人名はもちろん、
なんと「法輪功」や「大紀元」を検索窓に放り込んでも結果が出てしまうので、
中国ウォッチャーも垂涎なのである。

とはいえ、さっき調子こいてヤバい単語をばんばん放り込みまくって遊んでいたら、
「平反六四(=天安門事件の名誉回復)」まで入力したところで接続がぶった切られ、
その後はちょっとでも敏感な単語は何も検索できなくなったので、
ご利用は計画的かつ自己責任でやりましょう。

※ちなみに、中国国内から本来は見られない海外ニュースソースである
 「多維新聞」や法輪功のニュースサイトの「大紀元」の地方別・職業別百度指数を見ると、
 薄熙来事件の発生後に重慶からのアクセスがえらい多かったり、政府関連からのアクセスが多かったりと、
 ネットの検索ワードからも中国の国内政争の容易ならぬ動向が垣間見られたりする。



……で、だ。
ここでは、もっとヘンな単語や人名の百度指数を調べてみて、
中国のトホホな側面を観察して遊んでみようと思う。






――――――――――――――――――――――――

◆「自宅警備員(家裡蹲)」の百度指数を検索



平均300ポイントくらいで地味に安定。
地域は上海>北京>重慶>深圳>郴州>阜陽>武漢……という感じ。
湖南省郴州市とか安徽省阜陽市とか、えらい田舎が多いんだがどういうことか。
地方都市がつまらなすぎて家から出たくないのか。
大事なものを守っているのか。



◆「妹萌え(妹控)」の百度指数を検索

平均400ポイントぐらい。
地域は上海>北京>広州>武漢>天津で、男性比率66%。年齢は10〜20代に集中。
むしろ妹萌えを検索した人間の3割強が女子であることに新時代の中国の幕開けを感じる。

  



◆「ヤンデレ(病嬌)」の百度指数を検索

平均400ポイント強で、地域分布も「妹萌え」とほぼ同じ。
ただし10代が多く、男女比は半々。

一連の検索結果からもわかるように、
オタク系語彙はとにかく上海で検索されているようだ。
妹萌えは多いけど、妹はヤンデレ。



◆「抗日」の百度指数を検索

意外なことに平均800ポイントぐらいしか検索されてない。
日本への蔑称である「小日本」も同様の数字。
政治的に現在そういう時期じゃないのもあるのだろうが、
昨今の人民の皆さんは意外に反日とかどうでもよさげな感じである。

ちなみに検索件数が多い順に都市を並べると
北京>広州>深圳>上海>天津>武漢>鄭州>西安>石家荘>蘇州の順。
……栄えある中国反日都市ナンバーワンはめでたく北京に決定。



◆「波多野結衣」の百度指数を検索

波多野結衣とはAV女優の名前だ。
こう言ってはなんだが、そんなに魅力的なAV女優だとは思わないのだが、
なぜか中華圏での知名度が異常に高く、東日本大震災の際には死亡説まで流れた。

……で、そんな波多野嬢の百度指数は
驚きの最大7万8575ポイント、平均値約2万ポイント。
検索者は男性が84%で、大部分が20代。都市別では北京>上海>広州>天津という感じ。

日本の一般社会での知名度は皆無に近いと思われる微妙なAV女優が、中国のネット上では
ほぼ胡錦濤に匹敵する注目度を誇るという激しくカオスなことになっている。

  ※ちなみに他の有名AV女優の百度指数は、吉沢明歩が平均1万、原紗央莉 が平均3000強、
   小澤マリアが平均1000強、穂花が平均900弱、晶エリーが平均800ぐらい。やはり、波多野結衣の異常数値への謎は深まる。

   



◆「柏木由紀」の百度指数を検索

平均1000ポイント強。検索者は男性が67%、20代がメイン。
都市では上海での検索者が、
次点の北京・広州以下を大きく引き離す(逆に言うと上海でしか知名度なくね?)

他のAKB主要メンバーだと、前田が普段は平均3000ポイント(3月26日だけ5万ポイント越え)、
板野が(変動激しいけれど)平均1500、大島が平均1000、篠田・小嶋が平均800、指原が平均500くらい。
「AKB48」での百度指数は、3月26日に3万9千ポイント、平均1万ポイントぐらい。
例によって上海でだけ人気が高い。そして、グループ全体ですら波多野結衣に負けている。


……ところで、わが日本国の偉い人が
税金をバンバン使って日中友好40周年の親善大使にAKBを起用するらしい。

だが、ぶっちゃけ中国においては、AKBの知名度は上海の20代男性限定かもしれないし、
さらには恵比寿マスカッツの主要メンバーの方が、AKBの主要メンバーよりも
中国人の間ではずっと知名度か高いかもしれないのである。


     
◆「イカ娘(烏賊娘)」の百度指数を検索

平均600ポイント。
北京>上海>広州>深圳>天津>南京の順で侵略に成功したじゃなイカ!





◆「加藤嘉一」の百度指数を検索

細かい論評は避けるが、自称「中国で最も有名な日本人」。
百度指数は4月1日ごろに最大で1392ポイント、平均は800ポイントぐらいである。

2012年春時点で、中国で最も有名な日本人の同国ネット上での注目度は
蒼井そら老師の50分の1、波多野結衣の25分の1、まどか☆マギカの5分の1なのだった。

……でもイカ娘には勝ったでゲソ!



◆「ゲイ軍人(軍人同志)」の百度指数を検索

「ゲイの軍人」なんてゆがみねえキーワードを
ホイホイ検索する中国人はそれなりにおり、百度指数は平均500ポイント弱。
検索者の80%がいい男たち。残り20%が女子。

年齢層的には20代と30代が多いが、
10代から50代までまんべんなく検索行為をおこなった者たちの存在が確認されており、
男は度胸、何でも調べてみるものさ、という印象である。

検索がなされた地域は北京がダントツに多く、あとは
保定>上海>重慶>天津>武漢>広州>鄭州>石家荘>ウルムチといった順。

人民解放軍最強との呼び名も高い第38集団軍が駐屯する保定とか、
新疆建設兵団がおわすウルムチとか、
いかにも軍隊っぽい場所で調べられているのが無駄にリアルである。


……ところで余談ながら、
「ハッテン場(同志会所)」で検索したら百度指数が平均900ポイントぐらいあった。
「抗日」よりも「ハッテン場」を検索する中国人の方が多いとかどうなってんだアッー!

 





――――――――――――――――――――――――







……最後に、現在話題の薄熙来。
失脚が報じられた4月11日の百度指数は431万8278ポイント。
瞬間最大風速的にフリーザ様を凌駕するような物凄い数字が出ており、
中国のネットユーザーの間での注目が想像される。





よくわからない人のための薄熙来失脚事件の流れまとめ1

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去る4月10日、中共中央委員を解任されて名実ともに失脚した薄熙来。

彼の名前で検索すると、
週刊誌やネットニュースのやや不確かそうな記事から、新聞・通信社の報道、
果てはWSJやロイターの日本語記事まで、いまやいろいろ情報が引っ掛かる。

だが、結局のところ何がどうなっとるのやら、よくわからない人が多いのではないか。
(何を隠そう、この記事を書いてる俺自身がわかってないのだ)。



わからないなりに薄熙来についてまとめておこう。
この人物、もとは六四天安門事件当時に中共八代元老などと呼ばれた古参幹部のひとり・薄一波の息子。
80年代から遼寧省の地方幹部→2001年に遼寧省長と、
長年にわたり遼寧省(社会科で習うリヤオトン半島とかあのへん)に影響力を扶植してきた。

2004年に商務部長(日本でいう経産大臣)に就任。
大連時代にキヤノンやパナソニックなど日系企業の誘致に積極的だったことに加え、
2005年の反日デモ当時に、「反日やるより対日貿易を拡大させた方が」というスタンスを示したことで、
日本の財界関係には薄熙来ファンが多数生まれることとなる。

2007年、中共のトップ25人である中央政治局員に選出されるも、
なぜか内陸の直轄市・重慶市党委書記(日本でいう愛知県知事ぐらいの地位)に転出。

その後、重慶での政治ではマフィア壊滅を旗印に6000人近い人間を逮捕して、
重慶市元司法トップの文強を死刑にしたほか、市高官をぼこぼこと失脚させたり、
1960〜70年代の革命歌謡を市民に歌わせるキャンペーンをやたらに実施して人心を繋ぎとめたりと
昨年ごろまで、傍目には過激すぎると映る謎行動というかパフォーマンス政治を散々繰り返していた。

揚句に、今年になっていきなり失脚だ。
何がどうなっているのやら、



しかし、わからんはわからんなりに、
本件についてはプロアマ問わずいろんな人の話を伺う機会が多かったり、
ツイッターで香港だの謎の在外華人メディアだのの情報が流れてきたりで、
なんとなく(多少の予測は入っていても)ここまでは間違いないのかなあ、という
ものすごくベーシックな部分の理解はぼんやりと見えた気もせぬではない。


ひとまず、本件についての自分の役割は、何か画期的な新情報を飛ばすことではなく
わからんことをわかりやすく説明することだと割り切ることにした。

以下、うちの独自ソースの情報は何もないので、既に知っている人はスルーで大丈夫。
でも、知らない人はとりあえず読んでおくと便利かもしれない。

薄熙来事件がよくわからない人のためのまとめなのだ。





<1.登場人物>
―――――――――――――――――――――――

  

薄熙来
中共元老・薄一波の息子(ほか、経歴詳細は上にも書いた)。
2007年に、これまでの中華人民共和国本社営業本部長から重慶総支社長に左遷されている。

腐女子がカップリングを妄想しやすそうな垢抜けたルックスと、
中身はあんまりないけれど爽やかな弁舌、
ええとこのボンボンのくせに異常に旺盛な権力欲で知られる人物。




 

谷開来
薄熙来夫人。実は薄熙来はバツイチで2人目の結婚相手。
父親は谷景生といい、人民解放軍の少将で新疆ウイグル自治区政府の高官。
北京大学法律系を卒業した才女で、北京市内に法律事務所を構えていた。

谷開来は現在50代前半(写真はもうちょっと若い頃っぽい)だが、
80年代アイドルの勝ち組パターンのような結構きれいな年の取り方をしている、元.美人。
ただし後述するように、やってることは非常に汚い。
がっつり儲けてるとアンチエイジングにカネをかけられるのであろうか。




 

ニール・ヘイウッド
黄金時代のオリックスでホームランを25本くらい打ってそうな名前の、謎の英国人御用商人。
薄熙来・谷開来の経済面でのアドバイザーを務めていたとされるが、
昨年11月に重慶市内のホテルにて変死。
遺体発見直後は「飲み過ぎて死んだ」と発表されたが、実際は谷開来に毒殺されたとされる。




 

王立軍
薄熙来の遼寧省時代からの腹心。
モンゴル族(血筋的には蒙漢混血)であり、
人民解放軍→警官というハイパー脳筋キャリアを歩んできた肉食系男子。
薄熙来が重慶でマフィア退治をやる際に、わざわざ遼寧省から召喚されて、
重慶市の警察部門のトップに就任。薄熙来の手足として、汚い仕事を含めて働く。

今年2月、突如として四川省の米国大使館への謎の亡命未遂事件を起こし、
これが一連の薄熙来失脚劇の、対外的に確認可能な最初ののろしとなる。

ちなみに上記の写真は80年代に撮影されたものらしく、
現在の王はメガネをかけた非常にソフトな外見の人物だ(が、中身は人間凶器だと思う)。




 

薄瓜瓜
明らかなDQNネームをつけられている薄熙来と谷開来の息子。1987年生まれ。
薄の失脚までは英国にご留学なさっていた。

本ストーリーとは別に大して関係がないし言及しなくても構わない人物なのだが、
英国で月の家賃が24万円ぐらいのアパートに住んでいる上、
白人の姉ちゃんとの合コン写真が流出したり元カノが美人だったりして、
いろいろと人生舐めてる感があってむかつくので情報を晒すことにした。
現在は谷開来事件に関連し、中国当局により拘束中と伝えられる。ああ、めしがうまい。




::::::::::::::以下、脇役::::::::::::::::

 

胡錦濤
中華人民共和国国家主席。株式会社中華人民共和国社長。
とりあえず、なにはともあれ薄熙来が嫌い(だとされる)。
政治志向云々もあるが、それ以上に07年に死んだ薄の親父(薄一波)が、
恩人の胡耀邦を失脚させたり胡錦濤本人の出世を阻んだりとやりたい放題だったため、
胡錦濤が薄熙来に対して好意を持つ理由は、彼の表面的な経歴を見る限りではあまりないのだ。




 

江沢民
中華人民共和国前国家主席。株式会社中華人民共和国会長職(事実上)。
一時期は薄熙来の後ろ盾だったともいうが、実際はどうだろうか。
90年代初期、例によってDQNじいさんである薄一波が
江沢民の追い落としを図ったことがあり、その後に薄熙来本人が
「あの親父はアホです。江沢民さんすいません」と(本当にこう言って)詫びを入れたことで
江沢民はひとまず薄に目を掛けたものの、心の底から信用したわけでもない(だろうと思われる)。

事実、2007年に薄熙来が重慶に事実上左遷されているが、
江はこの異動にひとまず異論は唱えていない。
むしろ、キャラが濃すぎる薄熙来よりも無難な習近平を上にあげておく方がいいか、
という判断を下したらしく、江沢民にとっての薄熙来はあくまで二番手以下のカードだった模様。

そもそも、現在の江沢民は昨年夏に間違って死亡説が流れる(写真参照)くらいヨボヨボである。
限られた体力と精神力のリソース内でOB政治をやるにあたっては、
さして目を掛けてもいない薄熙来の面倒なぞ、あまり本気で見てはいられないのだ。




 

周永康
現.胡錦濤政権内部の守旧派の代表選手。
中国の警察や司法を握る、こちらも脳筋系の頑固なおっさん。党内序列9位なので結構エラい。
往年の社会主義イデオロギーにやや郷愁を抱くところもあり、
重慶赴任後の薄熙来の復古的政策にも一定の好意を抱いていたとされる。

政治的には江沢民や曽慶紅の世話になった経歴があって、中国の石油利権を握る。
顔がとても怖い。




 

汪洋
胡錦濤の子飼いの一人。
党内での地位的には薄熙来とほぼ同じくらいだが、けっこう苦労人であり頭も切れる人だという。

薄熙来の前任の重慶党委書記→現在は広東省党委書記。
重慶時代の部下が薄熙来に粛清されまくっており、胡錦濤以上に薄を嫌っているだろうと思われる。
今年秋からの習近平政権での常務委員(=中共のトップ9人)入りが有力視される。

ところでどうでもいいが、誰か中国共産党のフォトショップ職人に
頭髪部分の塗りの技術をちゃんと教えてあげるべきではなかろうか。





―――――――――――――――――――――――





さて、登場人物が整理できたところで、
失脚劇に至る以前の背景を説明したいが、文字数が長くなるので次の記事にて。






よくわからない人のための薄熙来失脚事件の流れまとめ2

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前記事では登場人物を紹介した。
それでは、彼らがいかにして薄熙来の失脚劇をつむいでいったのかを見ていくことにしよう。




  





<2.事態に至る以前のまとめ>
―――――――――――――――――――――――

2004年、薄熙来は商務部長に就任。
中国経済が上り調子だった時代でもあり、
とりあえず大過なく過ごすことに成功。次は副総理とのもっぱらの噂。



2007年、薄熙来は党のトップ25人である中央政治局委員に昇格。
ただし、もらったポストは念願の副総理ではなく、なぜかやや左遷気味の重慶党委書記。
重慶は田舎なので、総支社長待遇でも行きたくねえよというのが薄の本音。



というか、このままド田舎の重慶で燻ってしまっては、
中共高官の最終目標である政治局常務委員9人の枠に入れないのではないか?



薄熙来あせる。



イチかバチかで、重慶でド派手なパフォーマンス政治をおこない注目を集めることに。
過去の腹心だった王立軍を呼び寄せてマフィアを退治し、重慶市の貧富格差の調整に挑戦、
さらに1960年代の革命歌謡を歌おうキャンペーンで、懐メロ大好き党内保守派にアピール。
良くも悪くも話題をさらう(2009〜2011年前半)



薄熙来も無能ではないので、それなりに各政策の効果は出る。
特に重慶においては、薄熙来個人への個人崇拝的な動きが出るほど、
民心をつかむことに成功する。
懐メロ好きの周永康も、鬼瓦のような顔をニコニコさせて喜んだであろう(たぶん)。



しかし、薄熙来はマフィア退治の過程で前任者の汪洋の部下を大量粛清。
汪洋に恨まれ、これはもちろん汪洋のボスである胡錦濤からも恨まれたほか、
さらに「ヤーさんのシノギが明らかになったらワシらも困るやんけ」と、
既得権益の権化である江沢民一派からも嫌がられる。
温家宝にいたっては「文革みたいで引きます」的なことをメディアの前で発言するほど。



肝心の重慶での民心掌握にしても、
北京の党中央から見ると、これは薄熙来の地方諸侯化にしか見えず、
やはり非常に危険なものだった。
呉楚七国の乱なり安禄山の反乱なり三藩の乱なり、
中国における地方諸侯の割拠というのはいろいろと危ない前例があるのだ。



2011年末〜2012年初頭ごろから、
「あの子、調子乗りすぎなんだけど」という意見が
胡錦濤派や江沢民派などの別なくささやかれるようになった(と思われる)。
薄熙来外しのコンセンサスが、胡錦濤や温家宝はもちろんのこと、
江沢民や習近平らの間でも自然に形成される流れになっていったということだ。



英国人殺害事件発生。薄熙来失脚劇はじまる。…以下、詳細は<3>に譲る。




―――――――――――――――――――――――





まず、背景はこういうことだったのだ。

いうなれば、『部長・島耕作』の終盤で九州支社に飛ばされた島耕作が、
定年年齢までの本社取締役入りを狙うためになり振り構わぬ運動を開始。

九州圏内だけハツシバの流通を勝手に変えたり、大通りでハツシバ社歌を歌う運動をはじめたり、
九州支社だけで独自のリストラやら物件売却を進めたり、
いずれも、現在の体制を古き良き昭和時代の体制に回帰させて問題解決を図るような、
見る者にそういう連想をさせて仕方ないような動きをしている。
かつ、それなりに成果を出している。


しかし、いくらそういう方式で成果を出してはいても、
本社的には、中央のルールを無視したかのような行動は不気味だ。
しかもリストラや物件売却を勝手に進められたせいで、
本社の有力役員の利権が減ったり、部下が勝手にクビにされたりしている。

そこで、あいつはやりすぎだと話し合うような状況が、
2011年末頃までには初芝電産――もとい中国共産党内部で形成されつつあったと思われるのだ。
島耕作がエキセントリックすぎるため、
大泉会長も中沢も万亀も岡林もみんな揃って、島に距離を置きはじめたということである。



そんな状況の中、マンガばりに凄い事件が、薄熙来の側で勝手に発生する。
それが今回の失脚劇に繋がるのである。





<3.今年以降の薄熙来失脚の経緯、詳細まとめ>
―――――――――――――――――――――――

昨年11月某日。
謎の英国人商人ヘイウッド、薄一族の資産の海外送金に関係して谷開来夫人とトラブルに。
「奥さん、この件を公にしちゃっていいんですかい? 困るのは旦那さんと奥さんですぜヘッヘッヘッ」と、
明らかに死亡フラグっぽいセリフ(想像)で谷開来を脅したところ、
谷開来は夫には内緒で昼下がりの熟れた肉体を卑劣な脅迫者の前に投げ出し(ry ……という
日活ロマンポルノみたいな素敵な展開にはならず、問答無用でヘイウッドを毒殺してしまう。

ヘイウッドが谷開来夫人の弱みに付け込んだ小悪党だったのか、
谷夫人が無茶な要求を出しまくってヘイウッドがぶち切れたのかは不明だが、
ともかく、こういう火曜サスペンスや探偵マンガみたいなことがリアルであったのだ。



バーローのかわりに、脳筋系男子・王立軍の部下の、重慶警察の皆さんが殺人現場にやってくる。
前回記事の通り、王立軍は遼寧省時代以来、薄熙来の十数年来の部下であり、
このとき重慶市の警察部門のトップの地位にあった。



重慶市警察当局「ヘイウッドさんはアル中で死なはりました」と発表。
本物のヘイウッドは下戸なのだが、そんなことはどうでもよかった。

事前にヘイウッドを殺すことを申し含められていたかは不明だが、
王立軍は薄夫妻の殺人への関与を知った上で、事件のもみ消し工作を担当した可能性はある。
少なくとも、部下から上がってきた捜査情報を通じて事件の真相(谷開来の関与)に気付き、
見て見ぬふりくらいはしたはずだろう。



今年1月28日に入り、王立軍が薄熙来を相手に、例の事件について蒸し返す。
しかも、事件の真相解明についての追加捜査まで匂わせる。
王の意図は不明だが、とにかくそういうことはあったようだ。
Report on Ousted China Official Shows Effort at Damage Control



これに対して薄熙来激怒。
2月2日、王立軍は公安局長の職を解かれ、教育・科学技術・環境保護担当部署という
彼のキャリアからすれば明らかに場違いの部署に左遷される。



王立軍は薄熙来に対して
「これまで十数年間にわたりお仕えしてきた私をお見捨てになるのですか!?」と、
そのくらいのことは考えたのは想像に難くない。
もしくは、薄熙来の恐ろしさを重々承知していた彼としては、
「俺もヘイウッドのように消される。薄熙来はそういう男だ」くらいまで思ったかもしれない。



2月6日、王立軍は四川省成都市内のアメリカ領事館に亡命。
薄熙来の家族スキャンダルを全世界に公開して仕返ししてやろうとしたのか、
もしくはヘイウッド事件よりもっと強烈な薄熙来の秘密をアメリカにバラして共倒れ自爆を狙ったのか、
アメリカ領事館に逃げれば自分は死なずに済むと考えたのか、
そのへんの正確な動機はは王立軍に聞かないとわからないが、
とにかく領事館に亡命。



約1日のすったもんだの末、王立軍は中国側に身柄を引き渡され、北京に護送。
わざわざ国家安全部(中国版KGB)が北京からやってきたことからわかるように、
中共中央の関心の焦点は王立軍がどんな情報をアメリカにリークしたかにあった。



王立軍から国家安全部を通じて、薄熙来の秘密がすべて残らず党中央にバレる。



加えてそもそも、こうした水面下の事態を一切脇に措いても、
重慶市のトップ(=薄熙来)が、副市長(=王立軍)にアメリカ領事館への亡命未遂をされたのは
辞表ものの大失態。



3月14日。
温家宝が全人代閉幕後の記者会見で「薄熙来は反省してもらわなあきませんなあ」的なことを言い出す。



3月15日。
薄熙来、重慶市共産党委員会書記を解任され、事実上の失脚。



3月20日ごろ。
新浪微博など中国のネット上で、
「薄熙来を支持する軍関係者により北京でクーデター発生」
「薄熙来解任に反発した周永康が拘束された」
などのデマ流れる。事実関係はないとされる。



おそらく、3月下旬から4月上旬にかけて
ヘイウッド事件の証拠固めや薄熙来の地盤の壊滅作業が水面下で進む。



4月10日。
中共中央「重大な党規違反」を理由に薄熙来の中央政治局委員の職務停止。薄熙来完全失脚。
同時に谷開来の逮捕も発表。ついでに薄瓜瓜が拘束されたとも。





―――――――――――――――――――――――






……長かったが、とりあえずわかりやすく解説してみた。






中国の喪男「ネットの通販でラブドールを買ったら全力で騙されたでござる」

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さて、久しぶりに更新して久しぶりに百度のスレを訳す。

本題に入る前に軽くだけ近況報告をしておくと、
先月よりサイゾーの中国語版サイト 『晒藏』 の編集顧問を兼任しており、
日本の芸能ニュースの中国向け配信とかもやっていたりする。

 【参考】目的は打倒クール・ジャパン?!あのサイゾーが中国進出、その理由とは (kinbricksnow)


それはさておき……。

日本人の一般的な認識に照らせば、
なんだかんだでインチキ商品やあやしげな商売がまだまだ多い中国。
先日、仕事で中国の知財関係の事情に詳しい方(日本人)にお話をうかがったら、
パクリ商品については、一昔前と比べれば劇的にマシになったとも言う。
けれども、それでも日本と比べれば、やはり中国における怪しげな商売は非常に多いわけなのである。

で、そういう胡散臭い商売だの、社会で見聞した看過できない事態だのを、
告発することを目的にした板というのが、百度貼吧にはあったりする。
その名も「報警」板。
日本語で言えば通報板だ。


そんな通報板をなんとなく眺めていたら、
被害者に対して心の底から同情したくなる、極めて悪辣な商法への告発があった。
世間にここまで悲惨な話があるであろうか。いやない。

私はジャーナリストとしての良心を痛く刺激され、
この深刻な詐欺事件を記録し、日本国民に対しても広くお伝えすべきであると考えたのである。

以下をお読みになる際のBGMは、爆風スランプの「リゾ・ラバ」あたりをお勧めしたい。



……では、ご覧くださいwww






――――――――――――――――――
【日本「オリエント実業」のラブドールがとんでもねえ詐欺だった件について】
原題「日本東方實業充氣娃娃超級大騙局」
http://tieba.baidu.com/p/1202918737

1: 名無し人民@夏の恋はまぼろし 2011-09-07 13:12
俺は9月4日に注文して、6日に現物が届いたわけだ。
買う際のカスタマー登録はまあスムーズだったし、包装も問題ない。
そこらへんのサービスは良かったよ。

で、俺は999元(約1万2300円)のプレミア版を買ったんだよ。
サイト上にはそういう価格帯の商品はなかったんだけど、
業者の側が「プレミア版」あります。とか言うからさ。

今日、あいつらのサイトチェックしたら俺が騙された商品が860元で売ってて、
プレミア版は重量20キロあって性能が高くて、人工知能で声を出して、
ブルートゥースのイヤホン付けたらより興奮できますとか言っててさ……。

  


で、俺は9月6日に予約して、現物が届いたらだな……。
ただの空気注入式のダッチワイフだったんだよ!
重さ8キロくらいので、オプション全部込みでだ!!

もうほんとマジでクソなんだよ! 
処女膜ついてねえよ! 手の指が5本分かれてねえよ!
人工知能で声を出すとか、ただプシューって空気の音がするだけだよ!
普通の風船との違いは、俺が999元もボッタくられたことだよ!!


いや、もうブチ切れて、返品したいって電話番号xxxxx番に掛けたね。
そしたら、いわゆるカスタマーセンターとかいうのがマジでDQNでさ、
なんか俺の方が悪いみたいに騒ぐわけよ。
で、何回も掛けまくったら「しばらくお待ちください」だよ。

サイトでのカスタマーサービスは、予約する時はやけに親切で、
保証があるだの心配いりませんだの言ってたんだぜ?
なのに俺がカネ振り込んで半時間後には俺との連絡ブチ切りやがった!


……ボケが。買う前は皇帝に仕える召使みたいにバカ丁寧で、
買ったとたんにイヌでも扱うような態度になりやがる。
こういう悪徳商人はネットで晒すべきだ!!

特にあの電話番号xxxxx番、百度で検索したら、
こいつらからラブドール販売詐欺に遭ったって情報が表示されるぞ!
俺も最初からこの話を知ってれば騙されなかったのに!

  
  

↑この糞サイトだよ!!
載ってるのは全部ウソ写真、
買って実際に届くのは100元くらいの風船人形だッ! 
なのに俺は999元も払っちまったッ!! どうしてくれるんだ!!!
毎日汗水たらして稼いだお金がなんという……、ああ詐欺師どもが憎らしい!!
(以下、重複するので略)

とにかく、

日本「オリエント実業」ラブドール代理輸入センター
http://www.orient-ind●stry.com/  

↑こいつらは大詐欺師だ!
全部ウソさ!! そんなもんさ!!!!!

みんな騙されるなよ!!!
俺がみずからの血を流して得た教訓だッッ!!!!!

  ※注.日本の本物のラブドール販売大手「オリエント工業」さんのHPはhttp://www.orient-doll.com/ ですw
   同社は現時点では中国進出してないはずなのだが……。



3: 名無し人民@夏の恋はまぼろし(=1)
俺とあいつらとのチャットの会話記録貼っとくわ。
(あいつらの返答ひどすぎ)

こういう詐欺業者は本当にどうしようもないと思う。
詐欺サイトが規制もされずに堂々と出てるとか、
マジで法律はどうなってんだよ。正義はどこにあるんだ……。

  ※以下、両者のバトルを翻訳するも、内容があまりにもひどすぎるので、原文から4割引きぐらいマイルドに翻訳&抄訳した。
   中国語の罵り言葉のお勉強をしたい方は、ぜひ下記の本文画像↓から確認しよう。

  


<>>1とラブドール業者とのチャットのやりとり>
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

【>>1 12:37:40】
詐欺師! 徹頭徹尾の詐欺師ども!
何が「7日以内なら返品可で15日以内にお取り換えします」だよ。
ドールのクオリティも性能も、お前らが書いてるスペック全部ウソじゃねーか!

あんなゴミみたいな数十元の人形を数百元だの数千元だので売りつけやがって、
まともな商売人なら絶対やらねーじゃん。
お前らみたいな悪徳業者は、良心をイヌに食われちまったケダモノだ。
どんだけ騙してきたんだよ? 騙しまくってきたんだろ??
販売契約とか全部ウソ、しかもクレームも受け付けない、
で、最後には(※おそらくサイトからの問い合わせで)俺をアク禁にしやがる。
このケダモノどもめ!!!!

イヌ以下のお前らがだな、ここまでひどいことばっかりやってりゃ、今にバチが当たるぜ。
いつか天罰が下るから首を洗って待っとけやオラアア!!!


【業者 12:38:01】
はwwwww???? バカじゃねえのwwwww
家に帰っててめえのオカンにでもやらせてもらえや屑がwww
垂れまくったオカンのおっぱい吸って包●のチ●●でも突っ込んどけよバーカwwww

氏ねwww オカンとやってろカスがwww 
バカのイボ痔の貧乏人の屑がwww
やりたきゃ街に行って女でも買ってりゃいいんじゃねえかwwww

このイ●ポ野郎の腐れチ●●野郎ww 
心配すんな、お前が末代だよwww 来世は宦官にでもなっとけやゴミがwww
あーーwww 臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭いww
てめえのキモ顔が臭すぎて吐くわボケが氏ねwww


【>>1】
ファックユアマザァァァァァ!! サノバビッッッチ!! ※原文「草你媽個比,你媽是只雞」w
ビッチの腐れ●●●から生まれたダボハゼが!!!
おお、上等じゃねえか、てめえの母親も父親もまとめてファックしてやるわこの屑が!!

お前の一族は女は全員ビッチで男は全員ウリセンだろうが恥知らずども。
ビッチ家族の息子さんパネえよマジ!!
死ねよ!! 一族全員で路地裏に立って客でも引いてろやゴミクズが!!!
ファァァァァァッァァァァック!!!!!!!!


【業者】
は?www 腐れ●●●はてめえの母親の方だよボケ。一族全員病気で滅びろやwww
てめえはビッチも子どもも産めねえ本物の屑だよwww 
てめえはビッチ以下wwwっていうか人間以下のゴミwwww

まったく謎だよねwwwwお前の母親ってなんでおまえみたいなゴミを製造してんのwww
っていうか、お前の親父の精子の命中率クソすぎじゃね?wwwww
死ねよバーカwwww
お前自身が不良品のくせに、
ネットで不良品買わされて怒ってるとかマジウケルwwwうぇうぇwwwwww
(以下略)


【>>1】
さっさと田舎帰っててめえの腐れ●●●の母親のとこにでも行っとけダボが!!
ウシ以下、イヌ以下のクズ野郎め!!!
マジで死ね!!!  死んじまえ!!! 
てめえなんか日本にでも行っちまえばいいんだ!! 
小日本野郎!! ジャァァァァァップ!!!!


【業者】
出て行くのはお前だよボケwwwwwww
氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ねバーカwwwwwwwwwwwwwwww


【>>1】
マジでおまえクズだわ。
本気で終わってる。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



4: 名無し人民@夏の恋はまぼろし(湖南省長沙♂)
信頼とかあるわけないよな。
もうちょっとなんとかならんもんかね。



5: 名無し人民@夏の恋はまぼろし
マジひどいよな。
俺も騙された。
俺が買ったのは450元のスタンダード版。もっと早くこのスレ見ればよかったと思うわ。

この悪徳業者、十数個のサイト持って、百度で検索したら出てくる。しかも上位に。
百度はこいつらから黒いカネをたくさんもらってるからだよ、
百度の企業体質ってみんなよく知ってるだろ? ※この部分、原文を訳したのみ。本当のところは知りませんw

ネットで物を買うときは正規のサイトで買う方が比較的保証がしっかりしてる。
俺も前はそうやって買ってたんだけど、慣れて油断しちゃって、
今回は非正規のああいうサイトで買って騙されてしまった。
痛い授業料だったな……。



23: 名無し人民@夏の恋はまぼろし
こういうゴミはCCTV(※中国の国営放送)で晒されるべき。



27: 名無し人民@夏の恋はまぼろし 2012-07-22 12:01
俺も騙されたわ。マジで詐欺。
こいつら、いまは電話番号△△△△と◆◆◆◆に変えてるぜ。
もう騙されるやつが出ないといいんだが。

マジでこいつら全員死んでほしい。
男は全員、●●●切り取って宦官にしてやりてえ。



28: 名無し人民@夏の恋はまぼろし
こいつら、山東省の青島にいる詐欺グループだぜ。



29: 28
……マジですっげー詐欺。

  



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ちなみに参考までに調べたのだが、
写真に出てくる通りの“本物”のラブドールを真面目に買おうとすれば、
オリエント工業製で60万円ぐらいはするっぽい

写真に出てくるような造形のものが
日本円で1万円ちょっと(安いやつは450元=約5500円)で買えると考える方がアホじゃね?
というツッコミもできる気はするのだが、
男とはそれに尽きせぬロマンを求める生き物だから仕方ないのである。







                        ※想像図。



……それにしても、悪口の対象が相手の一族まとめてだったり、
罵倒のなかで宦官が出てきたりと、
どうしようもない口ゲンカからもかすかに漂う中華文明っぽさがとてもすてき。


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